商人舎研修会の「白部和孝最後の講義」
英国エリザベス女王の棺が、
スコットランドからイングランドを巡って、
国民の感動を呼んでいる。
96年の人生を、
イギリス連邦のために使い切った。
私たちも、そうありたい。
商人舎ミドルマネジメント研修会2日目。
朝8時のカンファレンスホテル。
中庭に面した1階大ホールが、
われわれの研修会場。
8時15分から、
1回目の理解度テストを実施。
理解度判定テストは、
自身が学んで理解したこと、
その理解が不足していることなどを、
認識するために行う。
だから会社へ報告するのは、
結果のSABCDのランクだけで、
実際の点数は本人にだけ伝える。
決してパワハラの道具にはさせない。
それが商人舎の方針だ。
冒頭で、
終わったばかりのテストの解答を確認し、
補足の解説をする。
必ず丁寧に説明する。
理解を深めてもらうためだ。
鈴木先生の講義からの設問に対しても、
私なりの補足解説をする。
今日の私の講義テーマは、
日本商業基幹産業化と現代化。
まず日本標準産業分類、
それから戸籍のないスーパーマーケット、
産業構造の変化とサービス業の伸長、
卸売業と小売業のWR比率、
最新の日本小売業ランキングと、
その意味合いなどを、
一気に語る。
第2・第3・第4講義は、
白部和孝講師。
シラベ・リテイル・システム研究所代表。
白部さんには、
計数の基礎と実務における応用を、
第1回ミドルマネジメント研修会から
欠かさず講義していただいた。
中心のテーマは、
商品在庫と労働生産性の計数。
しかしこの数年、
耳の持病が深刻になって、
生活には差し支えないが、
講演や講義はとても続けられないという。
この数年は商人舎のこの研修会だけ、
出講してくださっている。
いつものように受講生には、
電卓を使って設問を解いてもらう。
昼食をはさんだ3時間の講義。
コロナ感染は続いているけれど、
しっかり握手して、感謝の意を伝えた。
長い間、ありがとうございました。
白部和孝最後の講義だった。
故上田惇生先生も、
商人舎ミドルマネジメント研修会が、
最後の講義となった。
白部先生から指導してもらった、
貴重な計数管理の理論と実務は、
継続性を大事にしながら、
この研修会で引き継いでいく。
その決意を新たにした。
午後は結城義晴4時間講義。
ナレッジ・マネージャーのための、
ドラッカー・マネジメント、
そしてリーダーシップの方法。
夜8時までの長丁場。
初めにミドルマネジメントの経営数値。
PLとBSの根本原理から始めて、
トップ企業の決算データをもとに、
ROAやROEのポイントを解説する。
次に「悪い組織の兆候」を問いながら、
マネジメント理論の変遷を辿る。
アダム・スミスの分業の概念から、
アンリ・ファヨールの古典的な管理過程論、
その後の人間関係論と行動科学論、
そしてピーター・ドラッカー、
ヘンリー・ミンツバーグまで。
大企業病が起こるのは、
マネジメント理論が大きく転換したことへの、
認識がないことが原因だ。
私はそう考えている。
商人舎のミドルマネジメント研修会は、
だからドラッカーのマネジメント理論を、
大きな背骨にしている。
2日目の講義のクライマックスは、
ドラッカーの「責任の組織化」、
そして「自己管理による目標管理」。
さらにドラッカーの「コミュニケーション論」。
ケン・ブランチャードによる、
リーダーシップの手法。
時間が足りないほど、
伝えたいことがある。
外はすっかり日が落ちた。
講義は夜8時を少し超えてしまったが、
2日目の長い長い一日はなんとか終了。
食事のあとは、私の部屋で情報交換。
イオントップバリュの赤ワインを、
1本半くらい空けて、止めた。
最近は長時間の講義が増えている。
身体の疲労はひどく堪(こた)えるが、
語りたい内容は、
十分に伝えることができる。
だから精神的には、
満足感できる。
朝日新聞「折々のことば」
第2496回。
つらいことがあったら
芸だと思いなよ
(八代目桂文楽)
「昔、つらい、さぶい(寒い)、
くやしいなどと上に訴えると、
こう返された」
「今はこっちがそう言う番になっている」
五代目古今亭志ん生と並んで、
「昭和の名人」と呼ばれた噺家(はなしか)。
八代目桂文楽の言葉。
編著者の鷲田清一さん。
「萎(しお)れた姿も人を唸(うな)らせ、
涙ぐませもするからか」
文楽の落語は、
笑わせるだけでなく、
人を唸らせ、涙ぐませた。
辛いことがあったら、
芸のためだと思って続けたからだ。
「そういえば
“長生きするのも芸のうち”
という言葉も耳にする」
人はそれぞれの人生のなかで、
精一杯生きて、
精一杯語り、訴える。
白部和孝最後の講義。
感動した。
ありがとうございました。
〈結城義晴〉