「世界食料デー」のガルブレイスとヴァンフォーレ甲府の「下剋上」
10月16日、第3日曜日。
World Food Day。
世界食料デー。
国連食糧農業機関(FAO)が、
1981(昭和56)年に制定。
Food and Agriculture Organization of the United Nations。
FAOは国際連合の専門機関の一つ。
目的は飢餓の撲滅を達成すること。
そのために、
世界の食糧生産と分配の改善を図り、
開発途上国の栄養失調や飢餓をなくし、
生活向上を目指す。
World Food Dayは、
開発途上国などでの飢餓を考える日だ。
ジョン・ケネス・ガルブレイス。
「ゆたかな社会における貧困の除去を
社会的・政治的な日程に
強力に載せようではないか」
「さらに進んで、
その中心に据えようではないか」
「そしてまた、
地球を守るという名目で、
地球に灰しか残さないようにする
懼(おそ)れのある人たちから、
われわれのゆたかさを守ろうではないか」
〈『ゆたかな社会』鈴木哲太郎訳より〉
大学時代に、
『経済学と公共目的』がテキストとされて、
原書で学んだが、
私は翻訳本を手に入れて単位をとった。
無頼派を気取って、
あまりいい学生とは言えなかった。
ガルブレイスは1906年生まれ、2006年没。
カナダ生まれの経済学の巨人。
ルーズベルトから、
トルーマン、ケネディ、ジョンソンの、
それぞれの政権で重用された。
とくにジョン・F・ケネディとは親しくて、
その公共投資政策に貢献した。
それが上の言葉だ。
「貧困との戦い」と称された。
著書も50作以上。
表現者としても超一流だった。
「地球を守るという名目で、
地球に灰しか残さないようにする
懼(おそ)れのある人たちから、
われわれのゆたかさを守ろうではないか」
プーチンの戦争を予言していた。
「ゆたかさ」を守り、
その豊かさを向上させるのが、
小売業の役割だ。
さて日曜日のスポーツ。
サッカー天皇杯。
ヴァンフォーレ甲府。
劇的な優勝を果たした。
J2と呼ばれる2部リーグのチームだ。
決勝戦はJ1のサンフレッチェ広島戦。
広島のベースとなっているのは、
東洋工業という実業団チームだった。
天皇杯を3度制している。
しかしJリーグのサンフレッチェとなってから、
このタイトルをとってはいない。
だからサンフレッチェにとっても、
念願の天皇杯だった。
ゲームは、
1対1のタイで延長戦でも決着がつかず、
ペナルティキック戦の末、
ヴァンフォーレが勝利した。
ヴァンフォーレは、
3回戦でコンサドーレ札幌、
4回戦でサガン鳥栖、
準々決勝でアビスパ福岡、
準決勝で鹿島アントラーズを破って、
決勝に進出した。
いずれもJ1チームだった。
初の完全下剋上の快挙だ。
日本のサッカー界には3つのタイトルがある。
第1がJリーグのリーグ戦。
現在、J1リーグ18チーム、
J2リーグ22チームで行われる、
ホーム&アウェー総当たり戦。
第2がナビスコカップ。
J1リーグ所属のチームだけで、
争われるカップ戦。
そして第3が天皇杯。
1921年から始まって、
今回、102回を数える伝統のタイトル。
このゲームに途中出場したのが、
42歳の山本英臣。
ディフェンダー、ミッドフィルダー、
両方のポジションをこなす。
ジェフユナイテッド市原出身で、
ヴァンフォーレには在籍20年。
山本は出場するとすぐに、
ペナルティエリア内でハンドの反則を犯した。
ペナルティキックを献上してしまう。
1対1のタイだった。
そこでゴールキーパーの河田晃兵が、
ファインセーブ。
河田も35歳。
PK戦となって、
再び河田が1つのファインセーブ。
最後のシューターがなぜか山本となった。
ここで山本がゴール左上隅に、
見事に決めて勝利を呼び込んだ。
山本のハンドの反則と見事なシュート。
河田の2つの機敏なセービング。
劇的な優勝だった。
天皇杯はすべてのJリーグチームと、
都道府県代表チームが出場する。
大学生も高校生も試合に出ることができる。
その大舞台での42歳の活躍。
私も感動した。
「貧困との戦い」のうえに、
感動が加わることによって、
本当の豊かさは実現される。
地球に灰しか残さないような人間から、
われわれの「ゆたかさ」を守りたい。
〈結城義晴〉