結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2022年12月21日(水曜日)

「量的・質的異次元金融緩和」の転換と「重荷」の量的・質的な「重さ」

日銀が「異次元緩和」を転換する。

日経新聞は一面トップで取り上げた。
「10年目で実質利上げ
長期金利上限0.5%に」

朝日新聞は社説で書いた。
「金融緩和修正 日銀はもっと機敏に」

異次元緩和は、
アベノミクスの三本の矢の第一の矢として、
象徴的な政策だった。

それが10年目で転換する。

アベノミクスの三本の矢は、
⑴大胆な金融政策
⑵機動的な財政政策
⑶民間投資を喚起する成長戦略

⑴に連なる⑵まではやったが、
⑶が実現しなかった。

そのアベノミクスの実質的な終焉である。

主役を演じた黒田東彦総裁は、
2013年3月に就任した。
nitiginkurada

当時はデフレの真っただ中で、
それからの脱却を目指して、
大規模な金融緩和を打ち出した。

インフレターゲット論も盛んで、
政府と日銀は「2%の物価目標」を掲げた。

そのための異次元緩和だった。

基本的には好景気によって、
場合によっては現在のような戦争などで、
物価が上昇する。
それがインフレーションである。

その場合に中央銀行は、
市場に流通する資金の量を減らす。
そして消費や設備投資の抑制を図る。
「金融引き締め」である。

逆に景気が悪化すると、物価が下落する。
デフレーションである。

このとき中央銀行は、
市場に流通する資金を意図的に増やすべく供給して、
金利の低下を誘導する。

そうすると企業が資金調達を行いやすくなって、
それが景気を刺激し、消費を促して、
物価上昇が実現する。
これが金融緩和である。

しかしこの従来の金融政策では、
コントロールできなくなった。

そこで2013年以降、
従来にはない非伝統的な金融政策が導入された。

量的・質的金融緩和である。
それが異次元金融緩和だ。

「量的」とは金融市場操作目標を、
「金利」という「率」から、
「資金供給量」という「量」へと変更し、
市場に大量に資金を供給すること。

「質的」とは、
長期国債や上場投資信託(ETF)などの、
保有額を増大させて、
金利の上昇を抑えること。

現実は国債市場での売買で金利が決まる。
だから日銀が長期国債などを大量に保有して、
市場金利を下げる政策をとった。

具体的には資金供給量を2年間で2倍
長期国債の保有額も2年間で2倍のペースで、
拡大させる目標を立てた。

そしてそれを、
物価上昇率2%達成まで継続するとした。

2016年には短期金利をマイナス0.1%にして、
マイナス金利付き量的・質的緩和を実施した。

さらに2016年9月には、
長短金利操作付き量的・質的緩和を施した。

長短金利操作は、
イールドカーブ・コントロールとも呼ばれる。
「イールド(yield)」は「利回り」のこと。
「イールドカーブ」は「利回り曲線」のこと。

10年物国債金利がゼロ%程度で推移するよう、
長期国債を買い入れて保有し、
利回り曲線をコントロールする政策だ。

異次元緩和は三段階で進められた。

しかし、今年に入って、
米連邦準備理事会が利上げに踏み切って、
円安・ドル高が加速した。

ウクライナ危機で資源高も起こった。

消費者物価指数は3%台半ばまで上昇した。

そこでやっと黒田総裁は、
量的・質的異次元金融緩和政策を転換する。

しかし普通国債の残高は、
1000兆円に膨張している。
これは税収で返済しなければならないものだ。

金利が1%上昇すれば、
元利払いに充てる国債費は、
3.7兆円上振れることになる。

この長期の異次金融緩和によって、
日本の産業の新陳代謝は停滞してしまっている。

アベノミクスも、
これで一定の歴史的評価が下されるだろう。

しかし黒田総裁が去っても、
異次元緩和が転換されても、
国が難局にあることは、
変わらない。

私は午前中、
㈱True Dataのオンライン取締役会。

午後、出社して、
原稿の手直しと入稿。IMG_80022

1日、疲れた。

夜の新田間川。
IMG_80052

クリスマスに向けて、
イルミネーションが施されている。IMG_80072

最寄りの駅は妙蓮寺。 IMG_79392

その門前に掲げられた住職の書。IMG_79382
進んで負えば、
重荷も重からず

重荷は、
その重さを自覚することで、
重荷たりうるものである。

重荷に慣れて神経が弛緩し、
重荷の重さが自覚できなくなると、
取り返しのつかないことになる。

量的にも質的にも、
重荷の重さ、重荷の価値や意義こそ、
冷静に自覚されねばならない。

会社の経営も店の運営も、
産業の舵取りも、
その重みを認識したうえで、
進んで負うべきものである。

〈結城義晴〉


コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>

post date*

日本語が含まれない投稿は無視されますのでご注意ください。(スパム対策)

「月刊商人舎」購読者専用サイト
月刊商人舎 今月号
商人舎 流通スーパーニュース
月刊商人舎magazine Facebook

ウレコン

今月の標語
商人舎インフォメーション
商人舎スペシャルメンバー
商人舎発起人

東北関東大震災へのメッセージ

ミドルマネジメント研修会
商人舎ミドルマネジメント研修会
海外視察研修会
商人舎の新刊
チェーンストア産業ビジョン

結城義晴・著


コロナは時間を早める

結城義晴・著


流通RE戦略―EC時代の店舗と売場を科学する

鈴木哲男・著

結城義晴の著書の紹介

新装版 出来‼︎

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》
(イーストプレス刊)

新着ブログ
毎日更新宣言カレンダー
指定月の記事を読む
毎日更新宣言カテゴリー
毎日更新宣言最新記事
毎日更新宣言最新コメント
知識商人のためのリンク集

掲載の記事・写真・動画等の無断転載を禁じます。商人舎サイトについて
Copyright © 2008- Shoninsha Co., Ltd. All rights reserved.