大事な局面の大胆な転換が画竜点睛を欠く。
今冬一番の寒波襲来。
十年に一度の寒さだとか。
少し時間を早めて新幹線で、
大阪へ向かう。
新横浜から乗り込むとすぐに丹沢が見える。
思いのほか穏やかな静岡。
富士の頂には雲がかかっている。
裾野が大きく広がっていて、
かえってその大きさが感じられる。
富士はいつも悠然としている。
日本の国もこうありたい。
名古屋を過ぎて伊吹山の辺りに来ると、
一転にわかに掻き曇る。
京都に近づくと、
黒い雲が湧いてきた。
新大阪に着いて外に出ると、
ひどく寒い。
定宿のシェラトン都ホテル大阪。
その中華料理「四川」。
㈱万代の幹部の皆さんと、
情報交換を兼ねた夕食会。
紹興酒とおいしい四川料理に大満足。
阿部秀行社長とは昨年の大晦日、
万代の店舗を一緒に見て回った。
そして決まりました。
最後は阿部さんの車を背景にして。
この車で大晦日の店舗視察をした。
実に快適で、成果の大きなクリニックだった。
月刊商人舎2月号では、
あの年末大晦日の「凄い売り」を再現する。
ありがとうございました。
さて、
通常国会が召集され、
岸田文雄首相が、
施政方針演説をした。
あまり評判は良くない。
私はがっかりした。
安全保障やエネルギーに関する政策で、
大きな転換が表明された。
昨年12月に「防衛3文書」が発表されている。
防衛力の着実な整備や、
反撃能力の保有などが盛り込まれた。
この3文書自体は多くの評価を得たと思う。
従来の議論を覆すほどの内容だった。
しかしその財源や時期に関しては、
所信表明演説は実に甘い。
歳出改革などで財源を捻出したうえで、
なお不足する1兆円強を増税で賄う。
しかし評判がよろしくないのは、
国民への説明が足りない点である。
防衛政策は先の大戦の敗戦以来、
抜本的な転換である。
ロシアによるウクライナ侵攻が、
この抜本転換を促した。
しかしその議論や調整は政府と与党の間で、
非公開で進められてきた。
丁寧な説明と国会での真摯な議論こそが、
今回、求められている。
防衛政策だけでなく、
原発を含めた多様なエネルギー問題に関しても、
安全性への不安は解消されていない。
さらに「次元の異なる少子化対策」は、
単なる決意表明に過ぎなかった。
実現させようとの意欲が、
聞く者に伝わってこない。
それは不思議なくらいだ。
話し方にも問題はあろう。
プレゼンテーション力も足りないのだろう。
しかしそんなテクニカルな問題ではない。
やり遂げようという意志が感じられない。
自分たちの国の首相として、
情けない気分になる。
菅義偉前首相にもそれは欠けていたが、
岸田首相にはさらに足りない。
岸田首相の演説を聞いていて、
会社の経営や部署の運営に関しても、
同じだと強く思った。
いいことを言っていても、
それをやり遂げようとの意欲が感じられないと、
「画竜点睛を欠く」ことになる。
私の知る経営者たちには、
個性は異なるけれど、
例外なく説得力がある。
だから首相の「説得力不足」は、
驚くほかない。
これ自体が政治の劣化を示すのだろう。
日本の政治はとくにトップのレベルで、
どんどん劣化していっている。
これは国として大きな無駄である。
極めて大事な局面で、
大胆な転換の方針が出ているにもかかわらず、
それを実現させるような表明になっていない。
国民をその気にさせる演説になっていない。
それが余計にがっかりさせられる理由だ。
大事な局面の大胆な転換が、
画竜点睛を欠く。
会社や店は、
そうあってはならない。
〈結城義晴〉