WBCの「エリート」たちと美しい商人の「人並み以上」
春が近づく。
今、球春。
ワールドベースボールクラシック。
略して、WBC。
第5回が開催される。
野球の世界一決定戦。
日本は第1回と第2階に優勝している。
その日本代表の壮行試合が、
宮崎県で行われている。
オールスターゲームは年に一度、
パリーグとセリーグの、
それぞれのオールスターが闘う。
このWBCの日本代表は、
さらにそこから厳選された選手が集まる。
アメリカ大リーグからも、
ダルビッシュ有や大谷翔平が参加する。
今年、メジャーに移籍した吉田正尚も参加する。
ボストンレッドソックスでは、
オープン戦で四番を打った。
野球ファンにとって、
まさに夢のようなチームが編成される。
佐々木朗希が162キロの直球を投げた。
村上宗隆が凄いスイングを見せた。
壮行試合はのんびりとしたものだが、
一人ひとりの一挙手一投足は、
最高のレベルにある。
3月9日に中国との対戦が決まっている。
さらに10日には韓国戦。
サッカーやラグビーのワールドカップ同様に、
日本中が盛り上がるだろう。
楽しみだ。
さて、朝日新聞「折々のことば」
2月22日の第2653回。
ときどき商売に役立つことばがある。
売上げを伸ばすという意味で
会社を大きくするよりも、
会社が
よりよくなっていくことのほうが
何倍もいい。
(佐藤友則)
「”よりよく”とだけ考えていれば、
仕事ができる/できないという
社会一般の基準はどうでもよくなり、
昨日と、一週前と比べてどうかしか
気にならなくなる」
佐藤は広島県の書店経営者。
「町のよろず屋」のような店だ。
「店員が気持ちよく働け、
地域の”とまり木”みたいな
店になればいい」
これも商売のあり方だ。
一方、大きく鳴る小売業もある。
上野光平著『美しい商人 醜い商人』
。
「成功した小売業には共通点がある」
①創業者のもつ欲望が人並以上に大きい。
上野さんにしか書けないことだ。
中内功さんも、堤清二さんも、
伊藤雅俊さんも岡田卓也さんも。
「人並み以上」が大事だ。
②そのような過重な欲望の重みをささえる
優れた能力と人並以上の努力がある。
ここでも「人並み以上」
③商売が好きで、
商売を伸ばすために工夫をこらし、
新しいことを試み、また良い意味で
やり手であり商売上手である。
「やり手であり商売上手」
④勉強家であり、
同業や異業の優れた仲間を友として持ち、
情報収集に熱心である。
勉強家、優れた仲間、情報収集。
⑤創業者の指導力と家族の団結を基礎に、
独立経営としての体質を固め、
自助努力と自主性を大切にする。
独立経営、自助努力、自主性。
⑤多くの他人を雇用する
企業化の段階に入ってからは、
優れた人づかいをする。
人間的な働きがいのある場づくりが
巧みである。
「人間的な働きがいのある場づくり」
⑥常に人間としての
心のよりどころを求める。
宗教か、商人の社会的機能の確信かが、
それを満たしている。
上野光平の観察力とリアリズム。
宗教か、商人の社会的機能の確信か。
私は後者であってほしいと願う。
「成功した美しい商人の共通点は、
ある程度まで洋の東西を問わない
普遍性がある」
そのなかで日本の美しい商人の特性。
「優れた仲間を友として学びあい、
独立経営の自主性をかけがえなく大切にし、
人間的な従業員との関係を好み、
そして心のよりどころを
損得を超えたところに求めようとする」
「人並み以上」は、
WBCの選手たちにも当てはまる。
「人並み以上」を追い求めることに、
真摯であってほしい。
それをはじめから諦めたり、
敬遠したり、恥ずかしがったり、
あるいは揶揄したり、皮肉ったり、
批判したりする態度は、
避けたい。
「人並み以上」は美しいのだ。
〈結城義晴〉