将棋名人戦/藤井聡太の「落ちつき」と渡辺明の「格下の闘い方」
明日からゴールデンウィーク。
新茶をお送りいただいた。
毎年のことで、心から感謝している。
そしてすごく楽しみにもしている。
「夏も近づく八十八夜」
八十八夜は、
立春から数えて88日目。
今年は5月2日。
春から夏に変わる。
いい季節です。
伊藤園には、
「ティーテイスター制度」がある。
1994年に始まった社内資格制度。
年に1回、希望者が勉強して受験する。
そして厳正な審査によって合格者が決定。
試験科目は学科、検茶、口述で、
茶文化からおいしいお茶のいれ方などまで、
幅広い知識と技能が求められる。
2017年には厚生労働省から、
社内検定の認定を受けた。
資格保有者は昨年5月段階で、
1級が17名、
2級が390名、
3級が1914名。
新茶は二番茶に比べると、
栄養にも優れているし、
おいしさも格別だ。
ありがたいことだ。
さて第81期将棋名人戦。
将棋界で最も重要な棋戦。
名人位は江戸時代から続く。
その2023年度は、
渡辺明名人対藤井聡太挑戦者。
第1局は藤井が勝利して第2局。
27日の朝9時に開始。
後手の渡辺名人が、
「雁木」という戦型に持ち込んで、
初日が終わった。
封じたのは藤井竜王。
青野は私と同年の70歳だが、
まだ現役の棋士だ。
藤井の朝の「初手(しょて)」、
つまり第一手は「お茶」。
ここで江島さんからお送りいただいた新茶を、
私は思い出した。
静岡だけに藤井の初手は新茶だったのだろう。
そう私は「読んだ」。
互いに持ち時間は9時間。
その半分ほどを初日に使って、
42手まで進んでいた。
藤井はいつも手が進むと羽織を脱いで、
書生のような姿で手を読み、
駒を動かす。
誰かに習ったのか、
自分で考えたのか。
私はとても好ましく思っている。
私も講演のときには、
マクラの話が終わると上着を脱ぐ。
肩が凝るからだ。
藤井はまだ20歳で、
そんなことはないのだろうが、
リラックスして考えるために、
羽織を脱ぐのだろう。
その姿がいい。
朝10時のおやつ、
12時の昼食休憩、
3時のおやつ、
そして夕方6時の軽食をとって、
手はどんどん進んだ。
中盤で藤井の読み違いがあった。
しかし軌道修正して終盤に突入。
その終盤は藤井の読みが冴えに冴えた。
渡辺の夫人は漫画家の伊奈めぐみさん。
その作品が「将棋の渡辺くん」
このなかのエピソード。
渡辺棋聖に藤井が挑戦した棋聖戦。
渡辺はあっさりと2連敗した。
しかし第3戦は序盤を研究し尽くして、
「格下の闘い方」をした。
それで勝った。
しかし渡辺は正直に、
伊奈めぐみのインタビューに答えている。
「藤井くんは 難しい局面で
ひとりごとを言うんだけど」
(「いやぁー」)
「勝ちになってくると
ぴたっと落ち着くんだよね」
伊奈めぐみ、
「怖いね」^^
このシーンと同じように、
藤井は87手目で、
「3四歩」と相手の玉頭に打ち付けた。
そして「すーん」と落ち着いた。
これをしばらく見ていて、
渡辺明が深々と頭を下げた。
藤井聡太もそれに合わせて頭を下げた。
午後7時51分、渡辺の投了である。
これで藤井の2連勝。
名人戦は七番勝負で7局を戦う。
先に4勝すれば勝利して、
タイトルを獲る。
藤井はあと2勝。
渡辺が不利になった。
渡辺は無念そうだったが、
こちらも淡々としていた。
将棋界には現在、
8つのタイトルがある。
そのうちの6つを藤井が持っている。
竜王、王将、王位、棋王、棋聖、叡王。
渡辺は2019年度と2020年度は、
3冠を保持して実力ナンバー1だった。
それらは次々にすべて藤井に奪われて、
現在は名人位のみという状況になった。
そして最強の挑戦者を迎えて、
2連敗を喫してしまった。
39歳。
人間は変人だが、
人柄はすこぶるよろしい。
第3戦は渡辺の「格下」の狂気の指し手が見てみたい。
それもまた渡辺明には良く似合う。
私は将棋名人戦をちらちら見ながら、
一日中原稿執筆に勤しんだ。
小売業の店舗競争でも、
「格下の闘い方」に徹すると、
活路が見えてくる。
渡辺明は凄い。
〈結城義晴〉
2 件のコメント
格下は偉大ですね。
そういえば徳川幕府にとどめを刺したのは、
関ヶ原の負け組で、
江戸から遠い、
薩摩と長州でしたね。
徳川幕府とIYが似てるように見えるのは、
気のせいでしょうか。
何でもできる力を持っているのに。
小売りラブ♪さま
ご投稿、感謝。
格下は謙虚です。
私はイトーヨーカ堂も、
その闘いをすべきだと思います。
月刊商人舎4月号でそのことを書きました。