岡潔の「渋柿の台木の甘柿の芽」と万代渋川店の「松竹梅」
岡潔。
日本の数学界の最高峰。
1901年(明治34年)生まれ、
1978年(昭和53年)没。
人類学者の中沢新一が、
岡潔さんを評している。
「日本人はこれまでにたくさんの
優れた数学者を輩出してきたが、
そのなかでも岡潔の偉さはずば抜けている」
「岡潔の活躍していた時代に、
もしもフィールズ賞のような
国際的な数学賞があったとしたら、
彼はまちがいなくフランスの
アンリ・カルタンといっしょに、
それを受賞していただろうと思う。
それほどに岡潔の研究は
突出していたのである」
その岡先生。
随筆でも傑出している。
「人は動物だが、単なる動物ではなく、
渋柿の台木に甘柿の芽をついだようなもの、
つまり動物性の台木に
人間性の芽をつぎ木したものといえる」
「それを、芽なら何でもよい、
早く育ちさえすればよい
と思って育てているのが
いまの教育ではあるまいか」
「いま」と言っても、
ずいぶん前の「いま」だが、
私たちの「いま」にも当てはまる。
学校教育も社会人教育も。
「ただ育てるだけなら
渋柿の芽になってしまって
甘柿の芽の発育はおさえられてしまう。
渋柿の芽は甘柿の芽より
ずっと早く成育するから、
成熟が早くなるということに対して
もっと警戒せねばいけない」
「すべて成熟は早すぎるよりも
遅すぎる方がよい」
「これが教育というものの
根本原則だと思う」
万代知識商人大学でも、
ほかでの講義や講演でも、
「芽なら何でもよい、
早く育ちさえすればよい」とは、
絶対に考えない。
入口は農産部門。
レタスとカボチャ、ナス、夏の野菜。
緑と黄と紫のカラーコントロール
トウモロコシ、オクラ、ゴーヤ、キャベツ。
万代の松竹梅。
松は竹の値段で売る。
竹は梅の値段で売る。
梅は扱わない。
いろいろな雑誌で、
生鮮食品の価格調査をする。
しかし売価だけでは、
まったく評価はできない。
商品のグレードと鮮度、おいしさ。
万代は図抜けている。
店舗奥主通路の真ん中に惣菜部門。
万代大学のランチ。
私はこれを買いました。
ハンバーグ&カニクリームコロッケ弁当。
満足です。
チョコリングと宇治抹茶つぶあんリング。
美味しいものを安く。
だから万代は安売り屋ではない。
雑誌記事によくある、
「評価のない生鮮の価格調査」。
本当にくだらない。
まあ、普通の雑誌には、
「教育」や「人を育てる」という意識はない。
商人舎はその名の通り、
知識商人を育てたい。
渋柿の台木に、
甘柿の芽をついで。
岡潔が育てた人は、
数限りないが、
湯川秀樹、朝永振一郎ら、
そして広中平祐にも、
優れたアドバイスをした。
そこまでいくかどうかは別として、
渋柿の台木に甘柿の芽をつぐ。
幸せなことだと思っている。
ありがとう。
〈結城義晴〉