「中国・ロシア」も「税収還元セール」も「金でつながり金で切れる」
今日も自宅で静養。
寝室と仕事部屋を往ったり来たり。
確実に快方に向かっていると思う。
咳がひどく出るので、
集中力がない。
だから原稿を書くのが苦痛だ。
本来の予定ならば、
単行本の執筆にかかっている。
少し遅れてしまったが、
いつものように取り戻すことは可能だ。
ただし読むことはできるし、
観ることも、聴くこともできる。
ブログだけは何とか書ける。
2020年には何度も引用した。
イタリアの人気作家パオロ・ジョルダーノ。
今となっては懐かしい本だ。
「感染者の数、
発生地からの距離、
マスクの販売枚数、
株価暴落で失う金額、
検査結果が出るまでの日数と、
数えてばかり」
あのころ私たちは、
数えてばかりだった。
「コロナは今、“僕らの文明を
レントゲンにかけている”」
そう、私たちの文明は、
レントゲンにかけられた。
私たち自身も。
「恐怖にも浸され、
頭がいっぱいだけど、
それでも
“今までとは違った
思考をしてみるための空間”
を確保しておこう」
今、3年半ほどを経て、
感染してみると、
今までと違った思考をしてみるための
空間と時間を得た気がする。
それが私にとっては、
貴重なことなのかもしれない。
中国の習近平国家主席が、
「一帯一路」の世界首脳会議を開催。
提唱してから10年の節目の会議だ。
一帯一路は習が2013年に提唱し始めた。
中国と欧州・アジアを結ぶ広域経済圏構想。
「シルクロード」の現代版である。
中央アジアを経由して欧州へつながる、
陸路の経済ベルトを「一帯」と言い、
南シナ海やインド洋を通って欧州に向かう、
海路を「一路」とする。
現在はアフリカや南米などにも、
そのエリアは広がっている。
中国が投資して、
インフラ設備をつくり、
域内の経済を発展させる。
同時に親中国圏を拡大する。
「金」のつながりをもとに、
イデオロギー抜きに親中国の国を増やす狙いだ。
約130カ国の首脳や代表が集まった。
ロシア大統領のウラジーミル・プーチンも、
北京入りして一帯一路を称賛した。
中国の政治体制はいまだに共産主義だ。
ロシアはその共産主義を排して、
民主主義の政治体制に変わろうとした。
だからかつてのイデオロギーで判断すると、
中国とロシアは互いに相反する考え方だ。
しかし中国が「国家資本主義」を考え出して、
それを実行して世界第二の経済大国になった。
政治の「共産主義」+経済の「資本主義」だ。
共産主義は本来、
財産を共同体による共有とすることで、
貧富の差をなくすことをめざす。
しかし共有した国家資本で、
商売を始めてしまった。
一方、アメリカや英仏独などは、
フランス革命以来、
「自由主義+民主主義+資本主義」のセットで、
発展してきた。
ロシアは今の状況を見れば、
反「自由主義+民主主義」+資本主義。
プーチンの独裁は、
限りなく「国家資本主義」に近い。
中国の国家資本主義は、
毛沢東が生き返ったら驚くほどの、
「反共産主義」だ。
中国もロシアも「金」だけが、
共通する絆ということになる。
「軍事」は「金」とつながっている。
だからプーチンは、
習の「一帯一路」を褒めちぎる。
金でつながる者は、
金で切れる。
経済が重要事項であることは確かだが、
それだけではない。
一方の日本。
日経新聞10月18日の「Deep Insight」
「不思議の国 税収還元セール」
「洞穴症候群」を紹介する。
「ケイブ・シンドローム」
新型コロナウイルスへの感染を恐れるあまり、
自宅から外に出られなくなる症状。
日本政府は取り巻く物価・金利情勢が
大きく変わったにもかかわらず、
デフレモードの経済政策運営を
容易に修正できない。
「洞穴症候群」に似た危うさだ。
岸田文雄首相が「税収増の還元」を唱える。
賃上げや設備投資を促す法人減税にとどまらず、
所得減税にまで広がるかもしれない。
ガソリン・電気・ガス代の負担増を
和らげる補助金の延長、
低所得世帯への給付も柱に据える。
世界情勢は混迷を深める。
ロシアとウクライナの戦争に、
イスラエルとイスラム組織ハマスの衝突。
地政学上の危険は格段に増した。
「それでも今回の経済対策は、
大盤振る舞いが過ぎる」
日本に税収増を還元する余裕はまったくない。
異例の低金利に安住し、
政府は安易なバラマキを繰り返してきた、
インフレモードの世界に足を踏み出せず、
洞穴に閉じこもるケイブ・シンドローム。
「選挙対策の”税収還元セール”を
競っている場合ではあるまい」
国民がそれに乗ってしまったら、
我々も「金」でつながる中国・ロシアと同じだ。
これも「レントゲン」にかけられている。
金でつながる者は、
金で切れる。
商売にも仕事にも、
金は必要だが、
それを超えるものが必須だ。
〈結城義晴〉