「西向く侍」最後の日の黒田東彦「私の履歴書」評
2023年11月最後の日。
西向く侍。
にしむくさむらい。
「さむらい」は「士」と書いて、
形は「十と一」である。
だから「二四六九、十一」
「小の月」の覚え方。
物心ついたころ、
母から教わったと思う。
侍の11月は30日しかない。
大の月は31日ある。
明日から大の月の師走。
今日はずっと横浜商人舎オフィス。
今日は来客を迎えつつ、
月刊商人舎11月号の入稿の日。
午前中に田中食品㈱のお二人。
社長の田中孝幸さん(中)と、
営業部顧問の加藤盛芳さん。
広島に本社を置く、
伝統の「ふりかけ」メーカー。
商人舎15周年セミナーにも参加してくれた。
次から次から手品のように、
様々なふりかけのアイテムを披露してくれた。
私はウレコンを紹介した。
つまり常時、情報を得ることが大事だ。
それから様々なアドバイスをした。
デュアルブランド戦略も簡単に説明したし、
営業拡大の方向性も教授した。
あまりこういったことはやらないのだが、
いい人をご紹介します。
田中さん、38歳。
いい青年社長です。
期待しましょう。
午後一番でお二人が登場。
まず前田仁さん。
㈱万代の総務部付け部長で、
万代ドライデイリー会事務局長。
今年もお世話になりました。
それから小阪裕介さん。
㈱JTB大阪第三事業部営業第四課長。
商人舎担当責任者。
小阪さんにもお世話になりました。
今年もありがとうございました。
来年も頑張ろう。
さて日経新聞最終面、
「私の履歴書」
今月は黒田東彦氏。
前日本銀行総裁。
今年の4月8日に退任して、
まだ7カ月しか経過していない。
11月1日から書き始めて、
今日最終話。
政財界や金融関係でかなり話題になった。
「1年早かった」などとコメントが出ている。
日経新聞は大いに話題をとって、
多くの人に読まれただろう。
しかし後任の植田和男現総裁は、
四苦八苦している。
黒田時代のツケが回ってきている。
それは明らかだ。
ありきたりな言い方だが、
ドル高円安はさらに進み、
物価高は国民生活をひどく圧迫している。
1年くらいは沈黙を守ってほしかった。
それが後任者に対する礼節だと思う。
この「私の履歴書」は、
著者が自分で書く場合と、
日経の記者が代筆する場合がある。
どちらかは、たいていわかる。
黒田さんの場合は、
自分で書いていた。
そして驚くほど、
客観的な表現に徹していた。
自分の手で、これだけ冷静に書くのだから、
今、出ても差し支えはないだろう。
そんなやや尊大な印象があった。
ただし冷静さに徹したから、
面白味は全然、なかった。
ずっと読んでいたが、
つまらなかった。
この連載は基本的に自慢話である。
しかしその自慢話が、
盛大に展開されるから面白いし、
勉強になることも多い。
黒田東彦編はそれが抑制されていたから、
つまらない自慢話になった。
もっと時間をおいてから、
思う存分、自慢話に徹すればよかったのに。
しかし1カ月の一番最後の箇所だけ紹介しよう。
「最後に、若者や後世代の人に
伝えたいことがある」
「経済は生き物であり、絶え間なく変化する。
さらに、数年に1回ほどは
予想しなかったショックにも見舞われる」
「その際にはどうするか」
「極力早く事態を把握するとともに、
内外の過去の事例に学び、
思い切った対応策を素早く決断して
実行する必要がある」
ねっ。
面白味のない文章でしょう?
「リスクを恐れて優柔不断であることは、
事態を悪化させるばかりである」
これも、どこかで聞いたことがあるフレーズだ。
――しかし思い切った対応策を実行しても、
結果は最悪になることがある。
優柔不断でなくとも、
劣悪な状況が生まれてしまうことがある。
だから人生、面白い――。
こんな一言でもあれば、
違っていたのに。
――しかし今、
日本はそんな状況だ。
〈結城義晴〉