ツルハ・ウエルシアの経営統合と「水と太陽でつくるもの」
きぶし蕾(つぼ)み老猫逝きぬ皆泣きぬ
俳人の金子兜太さんの句。
23年連れ添った愛猫を見送って詠んだ。
その金子さんも、
2018年2月20日に亡くなった。
きぶしは春の季語。
きぶしが蕾をつけるころ、
老描が逝った。
皆が泣いた。
日経新聞巻頭コラム「春秋」が取り上げて、
猫との共生を考える。
その日経新聞の日曜版一面の記事。
「ツルハ・ウエルシア統合検討」
三連休の最後の日曜日に、
日経のスクープ。
ドラッグストア1位はウエルシアホールディングス、
2位はツルハホールディングス。
両者が経営統合の検討に入った。
すでにこのブログでも書いた。
ウエルシアHDの親会社はイオンだ。
そのイオンがツルハHDの株式を、
投資ファンドから買い取って、
ウエルシアとツルハを経営統合する。
ウエルシアHDの売上高は1兆1442億円。
ツルハHDは9700億円。
合算すると2兆1142億円。
5000店を超える店舗数となる。
日本のドラッグストア市場は8兆3449億円。
4分の1を占有するチェーンストアとなる。
東京都府中市の十字薬局と、
埼玉県春日部市の一の割薬局、
埼玉県坂戸市の池野ドラッグが、
2002年に合併して、
店名をウエルシアに統一した。
それから吸収合併を繰り返して、
1兆円を超えるウエルシアホールディングスとなった。
ツルハホールディングスは、
北海道旭川市の鶴羽薬師堂が祖業。
こちらも合併を繰り返して、
日本第2位のドラッグストアチェーンとなった。
イオンは現在、ツルハHD株の約13%強を保有。
香港のオアシス・マネジメントから、
ツルハHD株を約13%株式交換で手に入れ、
持ち分法適用会社にする。
現在3位のマツキヨココカラ&カンパニーは
年商9512億円。
その2倍の規模になる。
日本の小売業ランキングでは、
1位セブン&アイ・ホールディングス、
2位イオン、
3位アマゾン・ジャパン、
4位ファーストリテイリングだが、
その次の5位に入る。
2021年までツルハHDの社外取締役だった。
経営内容はよく知っている。
ツルハの本拠地北海道で、
同社は約430店のネットワークを敷く。
一方、ウエルシアHDは7店舗。
補完関係が成り立つ。
すでに、青森県内で共同配送に取り組んでいる。
アメリカのドラッグストア産業は、
すでに「複占」に向けて動いている。
3226億ドル(1ドル150円換算で48兆円)。
2位のウォルグリーンブーツアライアンスは、
1327億ドル(20兆円)。
日本のドラッグストア産業も、
この複占に向かうのか。
その前に数社による寡占状態が生まれ、
3社による鼎占となる。
日本のコンビニは今、鼎占である。
しかしこのイオンによるツルハの買収は、
その潮流を示している。
ドラッグストアは、
薬品と化粧品を核とする。
そこに日用雑貨や食品を品ぞろえする。
エコス会長の平富郎さんは、
商品を象徴的に二つに分けた。
「機械でつくるもの」と、
「水と太陽でつくるもの」
工業型商品と農業型商品である。
ドラッグストアは、
機械でつくるものを核とする商売で、
スーパーマーケットは、
水と太陽でつくるものを中心とする事業だ。
機械でつくるものの商売は、
経営統合が進んで巨大化する。
水と太陽でつくるものの事業は、
それが進みにくい。
しかしアメリカでは、
スーパーマーケット1位のクローガーが、
2位のアルバートソンを買収して、
2200億ドル(33兆円)のチェーンとなる。
「水と太陽」が機械化している。
生鮮食品のグロサリー化、
冷凍食品化である。
一方、商人舎流通SuperNews。
ウォルマートnews|
’23年度年商6426億円ドル6.1%増・純利益32.8%増
2024年1月期決算は今回もまた、
過去最高収益を記録。
もちろん世界第一の企業だ。
営業収益は6481億ドル、97兆円。
6.0%の増加。
6%といっても6兆円の伸びだ。
営業利益は270億ドル(4兆億円)で32.2%増、
純利益は155億(2兆3267億円)で32.8%増。
eコマースの世界総売上高は、
1000億ドル、15兆円を超えた。
ダグ・マクミロンCEOのコメント。
「私たちはチームを誇りに思っています」
マクミロンはいつもこの「誇り」を口にする。
「今後も顧客と会員のため、
価格引き下げをさらに進めていくことに
ワクワクしています」
寡占、鼎占、複占は、
それぞれマーケットのほとんどを、
数社、三社、二社が占める現象だ。
「ほとんど」は「すべて」ではない。
だから数えきれないくらいの、
マーケットニッチャーが、
光り輝く時代がくる。
食品小売業で言えば、
ニューヨークのゼイバーズ、
サンフランシスコのバークレーボウル。
サクラメントのナゲットマーケット。
いかに機械化が進もうとも、
「水と太陽」の価値がなくなるわけではない。
〈結城義晴〉