「知」の産業革命のあとに「知」の流通革命が起こる。
3月5日。March 5。
Super Tuesday。
大統領選挙の党公認候補を決める、
州の予備選・党員集会が集中する日。
今年は民主党が16州・地域、
共和党は15州。
どちらも総代議員のほぼ3分の1が決まる。
今、81歳のジョセフ・ロビネット・バイデンと、
77歳のドナルド。
アメリカの将来は明るくない。
朝日新聞「折々のことば」
毎朝、必ず見る。
第3018回。
私は私なりに生きていきたい。
(小山さん)
「何の保障もない餓死寸前の日々。
理不尽な暴力に晒(さら)され、
身の竦(すく)む毎日」
「東京で長く野宿生活をする女性は、
恵み施しあっても、つるまないし、
干渉も深入りもせずに生きてきた」
「瞼(まぶた)が腫れるほど泣き叫ぼうとも、
誰にも頼らず手なずけられもせずに、
対等でいたいと言い切る」
「小山(こやま)さん」と呼ばれた、
ホームレスの女性。
2013年に亡くなるまで公園で暮らし、
約80冊のノートを遺した。
膨大な文章が書き綴られていた。
「働きに行きたくない。仕事がかみあわない。もう誰にも言えない。私は私なりに精いっぱい生きた。(…)私にとって、大事なものは皆、無価値になって押し流されていく。」
(1991年11月7日)
「雨がやんでいたのに、またふってくる。もどろうか。もどるまい。黄色のカサが一本、公園のごみ捨て場に置いてあった。ぬれずにすんだ。ありがとう。今日の光のようだ。」
(2001年3月18日)
「駅近くに、百円ちょうど落ちていた。うれしい。内面で叫ぶ。八十円のコーヒーで二、三時間の夜の時間を保つことができる。ありがとう。イスにすわっていると、痛みがない。ノート、音楽と共にやりきれない淋しさを忘れている。」
(2001年5月7〜8日)
私なりに生きていく。
それがいちばん、いい。
二十四節気の「啓蟄」
冬籠りの虫が這い出るころ。
外は冷たい雨だが1日中、
横浜商人舎オフィスで原稿執筆。
お昼はセブン-イレブンで、
サンドイッチを買ってきてもらって、
パソコンに向かいながら頬張る。
小山さんには申し訳ない気もする。
誰かの役に立てばいい。
そんな気持ちで原稿を書いている。
私は私なりに生きていく。
日経新聞「大機小機」
タイトルは、
「知の産業革命と日本」
「日経平均株価が連日で最高値を更新し、
4万円台に乗せた。
明るいニュースだが、
手放しには喜べない」
同感だ。
コラムニスト癸亥さんは、
「世界経済を観察する」
「バブルが崩壊した1990年代は、
インターネットが産業に革命をもたらした」
「現在はAIが、
新たな革命をもたらそうとしている」
産業に革命をもたらした本質とは何か。
英国に始まった産業革命。
「コアは“力”だった。
機械力が人力に置き換わっていった。
蒸気機関や内燃機関がその象徴」
「これに対し、
現代の産業革命のコアは、
“知”にある」
「デバイスが人知を補完するようになり、
情報通信の高度化が
知の伝達と統合を爆発的に加速させている」
「資本主義ならぬ『知本主義』である」
これもドラッカーが見抜いていた。
「さらに知力が機械力を支配しつつある。
ロボットがその象徴となろう」
他方、知力が暴発しかねないため、
その制御が重要課題となっている。
この産業革命に対し、
日本はどう向き合ってきたのか。
「多分、現代版産業革命の本質を
看過している」
拙著『チェーンストア』は、
産業革命と流通革命を描いた。
流通革命は必ず、
産業革命のあとに起こった。
今、「知」の産業革命が起こっている。
ならば「知」の流通革命も起こってくる。
いや、起こっている。
現代版産業革命を看過した日本政府は、
既存企業の保護政策を維持する。
「輸出企業が円高を嫌うため、
政府には円安バイアスが強い」
これは重大な問題だ。
円安が今、日本をだめにしているのに。
「さらにバブル崩壊以降、
企業の経営破綻を防ぐため、
極端な金融緩和政策を打ち出してきた」
これもまだ継続されている。
「これらに安住した多くの企業は
事業部門の整理と新規集中投資を怠った」
「既得権益にすがる動きも根強い」
これが深刻だ。
「大企業の従業員は
年功序列と終身雇用に張り付いている」
「医師、弁護士、会計士などの
知力を主とする職業こそ、
現代版の産業革命を活用して
新たなステージに進めるはずなのに、
既存の資格に拘泥している」
「国民や企業は、
革命のただ中に放り込まれている事実を
十分に認識し、行動すべきである」
知の産業革命のあとに、
知の流通革命が起こる。
私の確信である。
〈結城義晴〉