令和大相撲の新星「尊富士」の「じょっぱり」と「ケハレ」
大相撲に新星が登場した。
尊富士。
新入幕で幕内のどん尻。
東前頭17枚目。
身長184cm、体重143kg。
青森県五所川原生まれの24歳。
新入幕場所で13勝2敗の初優勝。
新入幕で11連勝。
これは大鵬の記録と並んだ。
しかも初土俵から10場所で、
史上最速幕内総合優勝。
14日の取り組みで右足首を痛めた。
休場も危ぶまれたが、それでも出場。
右の足首をテーピングで固めて、
10勝4敗と好調の平の幕豪ノ山と対戦。
張り手から左四つに組み止め、
土俵際に追い込んで、押し倒し。
見事な正統相撲だった。
初土俵から序の口優勝、
序二段優勝。
三段目と幕下も優勝こそなかったが、
順調に出世して、
十両優勝。
10場所での初優勝は、
貴花田(横綱貴乃花)と横綱朝青龍の24場所を、
半分以下に短縮した大記録。
大相撲史上110年ぶりの新入幕優勝。
その110年前は元関脇両国。
細身ながら足腰、腕力は強く、
稽古場では横綱大錦も勝てなかった。
尊富士は伊勢ケ浜部屋所属。
親方は元旭富士。
青森県五所川原市出身、
鳥取城北高から日本大学相撲部と経て、
2022年秋場所で初土俵を踏んだ。
優勝インタビューでは、
「記録よりも記憶に残る力士になりたい」
「これからが大事。
しっかりと怪我をしない体をつくりたい」
110年前の両国は、
最高位関脇で終わった。
優勝はその新入幕の1回だけだった。
このところモンゴル勢に、
上位を独占された観のあった大相撲。
上位に上がってくる、
これはという強い力士を見ると、
モンゴル出身者ばかりだった。
だから青森人の「じょっぱり」は、
久しぶりに日本人として、
胸のすく活躍だ。
尊富士は大鵬や貴乃花を超える、
令和の大横綱になる資質がある。
突き、押し、スピード。
それほど体が大きいわけではない。
だがこのスピードが現代相撲を象徴する。
敵は怪我だけだと思う。
日経新聞夕刊「あすへの話題」
料理研究家の土井善晴さん。
「ケハレ」
文章の専門家ではないけれど、
この人のエッセイが好きだ。
「ケ(日常)とハレ(非日常)に、
けじめをつければいいと思う」
同感だ。
「現代のケは仕事や学業に励む日、
ハレは休日(楽しむ日)と考える」
「前者は心身を健やかにたもつ古来の食事。
後者は一週間がんばった後の
ご褒美で楽しみを享受する食事」
料理家らしい分析だ。
「何をハレとするかは、
それぞれの考えでよい」
これにも同感。
「ケにも小さなハレと言うべき喜びが
数々潜んでいる」
「淡々と時すぎるとき、
自然の移ろいや親切に、
気づき、心栄えする」
「美、喜び、哀れ、悲しみを、受け止めた心を、
日本では『もののあはれ』と言う」
「時計時間の横軸に、
もののあはれという縦軸の
楔(くさび)を打っていく」
「ケとは大自然の営みで、
ハレとは人間が意図した人工的行為」
「ハレ化した料理は、
食材を混ぜ、味付けて美味を作る
『それ以上』の努力による」
「それ以上は、喜びにもなり、
苦しみにもなる」
「ケの一汁一菜とは汁飯香」
「有るものを、気ままにいただくところに
喜びが生まれる」
「ケの人は、案外、積極的に食べている」
「ハレの食事は食べるだけでは
受け身になりがち、
より積極的な努力が要求されている」
「ケハレは日本の専有ではない。
西洋の一汁一菜は、スープ、パン、チーズ」
「ケの慎(つつ)ましい食事は
あたりまえの普通のこと」
相撲で言えば、
ハレは華やかな本場所の取り組み。
ケは稽古場の汗にまみれた稽古。
店づくりにも、
ハレの売場とケの売場が必須だ。
料理も相撲も、
商売も人生も。
ハレとケに、
けじめをつけるのがいい。
〈結城義晴〉
2 件のコメント
まずは、ケをよく噛んで味わうことが基本だと教えられます。
ケが基本。その通りです。