将棋名人戦の「不思議な風」とセブン&アイに芽吹いた「二つの風」
第82期将棋名人戦。
最も歴史の古いタイトル。
1612年から家元制として始まり、
1935年から実力制となった。
名人藤井聡太が、
挑戦者豊島将之を破って、
タイトルを防衛。
その第5局。
「ひふみん」こと加藤一二三九段。
「藤井名人がひとりで
将棋を指しているような感じ」
ん~、これ以上ない的確な言い回し。
私もこの対局をずっと見ていて、
まったくその通りの将棋だと思った。
つまり藤井の静かな圧勝。
全八冠を手中にする21歳。
藤井がデビューしたころ、
一番の強敵だった豊島九段、
今、34歳。
豊島も16歳でプロになった天才だ。
タイトルは竜王2期をはじめ、
名人、王位、棋聖、叡王各1期。
居飛車党の豊島が、
珍しく飛車を振った。
奇手を狙った。
それを想定したかのように、
藤井は穴熊に組んだ。
その際、序盤の29手目に、
6五歩のタダ捨ての妙手を放った。
プロが全員驚いた、新手だった。
その後、豊島は、
一つもいいところなく、
静かに敗れた。
これで藤井は名人位を2期、
保持することになる。
タイトル戦は負けなしの22連勝で、
将棋界の記録を更新している。
これだけ図抜けたトップ棋士同士の対局で、
まるで歯が立たない。
不思議な将棋だった。
将棋界の新しい風であることは、
それは、もう間違いない。
その風の吹き方に、
さらに不思議なものを感じたものだ。
さて連日、
株主総会が開催されている。
今日は、
セブン&アイ・ホールディングス。
明日はイオン。
セブン&アイの株主総会は、
いつも東京・四ツ谷の本社で開かれる。
昨年は物言う株主から、
取締役選任案が出され、
井阪隆一社長らに退任が求められた。
総会は3時間10分に及んだ。
月刊商人舎では、
4月号特集で、
「総合小売業態」の終焉!?
イトーヨーカ堂の在り方を斬る
その4月号では、
「追悼 伊藤雅俊」
僭越ながら私は、
伊藤さんに成り代わって、
叱咤激励した。
5月号特別企画で、
セブンとイオン「それぞれの道」
’23年2月期決算/日本小売産業両雄の戦略分岐点
毎号のように取り上げた。
それから1年。
今年の株主総会は1時間50分だった。
日経新聞は「無風総会」と書いたが、
根本的な経営問題は、
まだ何も解決していないと思う。
ただしセブン&アイにも、
新しい人事の風が吹き始めている。
一つは2023年3月1日に就任した、
和瀬田純子㈱ピースデリ社長。
セブン&アイ商品戦略本部副本部長を兼務。
商人舎流通SuperNews。
セブン&アイnews|
初の共通インフラ「Peace Deli千葉キッチン」稼働
セブン&アイの共通インフラを担う。
その視点は実に現場主義だ。
1993年、セブンーイレブン・ジャパン入社。
2000年には商品本部で、
おにぎり、サラダ、麺類など惣菜を担当した。
1年が経過して、実力を発揮し始めた。
もう一つは、
セブン-イレブン・ジャパンで、
6月3日に商品本部長に就任する、
羽石奈緒執行役員。
昨2023年に執行役員で、
商品本部地区MD統括部長に就任したから、
とんとん拍子で商品本部長となった。
仕事ができるだけでなく、
研究者としても注目されている。
日本プロモーショナル・マーケティング学会で、
2019年度研究助成論文「学会賞」を受賞。
受賞論文は、
「プライベート・ブランド階層の中の
サブブランドがストアロイヤリティに
与える影響について」
中央大学大学院戦略経営研究科に属して、
旧知の中村博教授が指導した。
ゴルフ仲間でもある。
論文を読んでみたが、
セブン&アイとイオンの、
両者のプライベートブランドを研究して、
実によくできている。
賞を獲得するだけの内容だ。
1点だけ注文をつけたいところがあったが、
それは論文の価値を貶めるものではない。
一度、議論してみたい。
和瀬田純子さんも2017年に、
中央大学大学院で論文を書いている。
こちらも中村教授の指導で、
研究助成をもらっている。
つまり論理的な考察ができる幹部が、
表舞台に出てきているということである。
ドラッカー曰く。
“As a rule, theory does not precede practice.”
「原則として、理論が実践に先行することはない」
しかし実践も理論も、
両方できるに越したことはない。
セブン&アイに、
新しい芽が出て、
新しい風が吹き始めた。
伊藤雅俊さんも、
きっと喜んでいらっしゃるだろう。
合掌。
〈結城義晴〉
2 件のコメント
ブランド論の論文は無数にありますが、プライベートブランドの研究論文は矢作敏行さんくらいしか読んだことがなく興味深いです。読んでみたいと思います。
吉本さん、リンクを貼っておいたので読んでみてください。
ちゃんとした論文です。
立教大学大学院では私のゼミで田村正純さんが、
やはりプライベートブランドの修士論文を仕上げました。
これも労作でした。