商人舎9月号「’24アメリカの歩き方」とプラネットトップセミナー
[特集]’24アメリカの歩き方
US-Retail視察研究ガイドブック
[Cover Message]
第47代合衆国大統領を決める選挙が展開されている。民主党の青い州、共和党の赤い州。そして激戦区の紫の州。青い州はリベラル、赤い州はコンサバティブ。紫はその中間。しかしそれぞれの州のチェーンストアは青と赤に分けられるわけではない。世界のウォルマートはどちらかと言えば赤い州で強い。青い州からは排除される傾向がある。ターゲットは青い州で人気だ。だが小売業やサービス業は、青と赤を包含して人気を博すのが常道だ。
その青と赤の議論がかまびすしいアメリカ合衆国の17の都市圏を行く。2024年の「アメリカの歩き方」を特集しよう。
冷戦時代の1962年、ジョン・F・ケネディ大統領は言った。「アメリカとソ連の差は、スーパーマーケットがあるか否かである」。「スーパーマーケットを通して、豊かさが実現されていく社会こそ、全国民が願い求めている社会である」。アメリカのリテールはこの言葉を励みにしている。「1時間で買えるバスケットの中身の違いこそ、米ソの違いである」。私たちはそれを確認するためにアメリカを視察研究する。いざ。
5年ぶりに「アメリカの歩き方」をお届けします。
今回は17都市圏。
編集部総出で原稿を書いた。
書いているだけで行った気になる。
楽しい執筆だった。
アメリカに行かなくても、
読むだけで十分、楽しめる。
紙の雑誌だけではページが足りなくなって、
網(ウェブ)のページにコラムを書いた。
IDとパスワードをもっている方は必ず、
webページも見てください。
[特別寄稿]は小島健輔さん。
米国カジュアルチェーンに学ぶもの
「アスレジャー」がUSアパレルを変貌させた!
[Message of September]
来た、見た、勝った。
その場を訪れる。
観察し、分析する。
そして行動し、成果を上げる。
来た、見た、勝った。
Veni, vidi, vici!
I came, I saw, I conquered.
ローマの将軍ユリウス・カエサルは、
ガリアを制圧しローマに凱旋すると、
すぐにオリエントに向かう。
そしてこの遠征の最後にトルコのゼラで、
ポントス王ファルナケスを破る。
早馬を飛ばして元老院に勝利の手紙を送る。
カエサルは文章の達人だった。
来た、見た、勝った、と書いた。
シンプルで的確な表現だ。
アメリカを訪れる。
ヨーロッパに足を伸ばす。
アジアを訪問する。
そんなときにいつも、
私は合言葉を唱える。
来た、見た、勝った。
まずは自ら行ってみる。
現地で現物を観察し、分析する。
そして行動し、学びつつ成果を上げる。
来た、見た、勝った。
「来た」と「見た」が前提となって、
「勝った」がもたらされる。
アメリカを訪れても、
見る、聞く、買う、食べるでは足りない。
勝ったがなければ意味がない。
知っただけでは、
本当に学んだことにはならない。
実行しなければ成長はない。〈結城義晴〉
「プラネット・トップセミナー2024」
毎年恒例。
日用品・化粧品・薬品の、
製造業・卸売業のトップが集う。
社長、会長がずらりと揃う凄いセミナーだ。
プラネットを説明するには、
このイラストがいい。
168社の資材サプライヤーと、
884社の製造業を、
「資材EDI」でつなぐ。
さらにその884社のメーカーと、
490社の卸売業とを、
「基幹EDI」で結ぶ。
EDIはElectronic Data Interchange、
電子データ交換のこと。
日用品・化粧品・薬品の流通に関して、
プラネットは産業インフラとなっている。
取引先データベースは約49万件、
商品データベースは769社18万9972アイテム。
凄い会社です。
それから今村佳嗣さん。
執行役員マーケティング&イノベーション推進ユニット長。
タイトルは、
「これからのプラネットが目指す業界への貢献」
資料をもとに理路整然と説明した。
休憩の後は基調講演。
落語家・林家たい平師匠。
写真撮影はできないので、
一般社団法人落語協会のプロフィールから。
テーマは、
「笑顔のもとに笑顔が集まる」
90分の講演は長編落語3本分。
たい平師匠はメモもレジュメも見ずに、
淀みなく1時間半を語り切った。
しかし目は真剣そのものだった。
落語とは違うのだろう。
笑点メンバーの話題、
落語家になるための修業時代の話、
泣かせる話もあった。
最後は小噺と『星雲のうた』
そして鶯の声色。
そのあとで、
玉生弘昌さんの挨拶。
㈱プラネット代表取締役会長。
「プラネットの創業から40年」
9月8日(日曜日)に満80歳を迎えた玉生さん。
10月24日の株主総会で、
代表取締役会長を退任する。
その最後の挨拶を兼ねた講演。
実に淡々としていた。
玉生さんには3つの「出会い」があった。
第1はヒューレットパッカードの、
卓上コンピュータとの出会い。
第2はインテック創業者の金岡幸二社長との出会い。
第3は綿貫民輔元衆議院議長との出会い。
これらの出会いをもとに、
VAN事業を構築し、成功させた。
VANはValue-Added Network、付加価値通信網。
玉生さんは二つの会社を創業した。
もちろんプラネットと、
それからTrue Data。
そして自ら両者を位置づける。
プラネットは定型業務のDX、守りのDX。
True Dataは非定形業務のDX、攻めのDX。
最後に、玉生さんは10月に単行本を上梓する。
ダイヤモンド社刊、
『経営者のための経済学史』
以前から教えていただいていたので、
私は知っていた。
それにしても凄いテーマだ。
あのヨーゼフ・シュンペーターも書いている。
『経済学史――学説ならびに方法の諸段階』
玉生さんらしい切り口と、
わかりやすい経済学史になると思う。
大いに楽しみだ。
乾杯のスピーチと音頭は、
掬川正純ライオン㈱代表取締役会長。
㈱True Dataのお二人。
米倉裕之代表取締役社長と、
島崎尚子取締役。
玉生さんはこれからも変わらず、
True Dataの取締役として指導してくださる。
中締めは、
須崎裕明㈱あらた代表取締役社長。
「全体最適や最大公約数は、
通用しなくなった」
同感。
帰り際に、
プラネットの松本さん(中)と滝山重治さん。
これからも頑張ってください。
それにしても『経済学史』への挑戦。
凄いことだ、脱帽。
〈結城義晴〉
2 件のコメント
「全体最適や最大公約数は、通用しなくなった」とはどういう意味でしょう。とても気になります。
功利主義の限界とも、民主主義の難しさともとれます。或いは、ターゲットを決めること、ポジショニングの重要性のことでしょうか。
想像をふくらませます。
あらたの須崎裕明さんも詳しくは語りませんでした。
中締めなので結構、お酒を飲んでいて、
日ごろ感じていることを簡素に言ったのでしょう。
これまで全体最適は正義でした。
最大公約数はセオリーでした。
しかしあらゆることにおいて、
マイノリティの存在が大事であることが、
明白になってきました。
もちろん民主主義でも、
産業の在り方においても、
会社の経営においても。
マジョリティとマイノリティ、
あちらも立てて、こちらも立てる。
トレードオンでしょうか。
そういう意味で私は同感しました。