結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2024年09月14日(土曜日)

久喜のイトーヨーカドーとヤオコーの「つらい思い」

東横線で渋谷に行き、
そこから湘南ラインに乗り換えて、
埼玉県の久喜まで。

長い旅をした。

そしてJR久喜駅に到着。

9月6日にヤオコーがオープンして、
山本恭広編集長が取材に来た。

私も自分の目で確認するためにやってきた。

まずは、
イトーヨーカドー久喜店。
5層の総合スーパー。
IMG_6333 (002)

1974年の開業だから、
50年を経過する。
伊藤雅俊社長時代の物件である。

店というのは凄いものだ。
半世紀もこの地域に貢献し続けてきた。

1階が食品と催事売場。
セルフレジを導入し、
その横でハロウィンプロモーションを展開。
全品セブンプレミアム。
IMG_6322 (002)

フードマルシェは1000坪くらいで広い。
IMG_6323 (002)

改装してヤオコー出店に備えた。
鮮魚売場と精肉売場には、
対面方式を導入している。

惣菜売場も広大で、
品揃えは豊富だ。

それでもどうしても、
「古い」印象がぬぐえない。

アメリカでは「コンベンショナル型」と呼ばれ、
古い店々が残っている。

そんな店が最新フォーマットに、
圧倒されていることが多い。

しかし古い店でも、
その年月の経過をより良く生かして、
新しい店にない「魅力」にすることができる。

たとえばニューヨーク・マンハッタンでは、
ゼイバーズがそんな店だ。

サンフランシスコではバークレーボウル。
たった2店舗だが凄い人気だ。

私は古いほうの創業店が好きだ。
店も什器も古いけれど、
顧客から「私の店」と評価されている。

イトーヨーカドーも、
そんな店にできないか。

「古さ」もポジショニングにすることができる。
私はそれを確信している。

2階と3階が本来、アパレルの売場。
2階には自前のドラッグストアを入れた。

3階にはアダストリアの「ファウンドグッド」。
最新のキッズコーナーを導入したが、
あまり目立たない。IMG_6331 (002)

4階にはキャンドゥが入っているし、
3階にはノジマが誘致される。

それも悪くはないが、
館全体をイトーヨーカ堂らしさで、
おおいつくすことはできないか。

たとえばドン・キホーテのように。

しかしそれはもう無理な注文だ。
首脳陣はそれをあきらめている。

古い店を効率の尺度だけでリニューアルしても、
それは新しい店にはかなわない。

店は都市と同じだ。
京都や奈良の街は、
魅力を失わない。

ロンドンもパリも。
アメリカではボストンも。

そんな店ができないか。

一方、
ヤオコー久喜吉羽店。
市街の一番外側に、
近隣型ショッピングセンターとして、
開発された。

農地の転用である。
それでも久喜駅から徒歩で15分。IMG_6338 (002)

ヤオコーとダイソーが核店舗。IMG_6334 (002)

店舗面積は891坪でヤオコー最大規模。
初年度年商は27億円。

左サイドの入り口に設けられたのが、
青果と惣菜のダブルコンコース。

IMG_6336 (002)

この店は月刊商人舎10月号で詳解する。

店舗入り口の左サイドに、
「ヤオコー・デリ&カフェ」が設けられた。
yaoko_cafe

イートインコーナー。
バイオーダーのメニューが提供される。

モーニングセットは、
厚切りのロイヤルブレッドのトーストと、
卵とベーコン。

ランチセットは、
惣菜売場の手仕込み豚かつを使った、
かつ重、あるいはとんかつ定食。

私は出来立てのかつ重定食をいただいた。
おいしかったが、
もう少しメニューがあったほうがうれしい。IMG_6339 (002)

他は抜かりのないヤオコー最新型。
床のカラーにオレンジ色を使わなかったのは、
私としては残念だ。

イニシャルコストもオペレーションコストも、
予算を大幅に上回るのだろう。

その判断を否定するつもりはない。

いい店で好調なスタートに満足した。IMG_6340 (002)

さて、朝日新聞「折々のことば」
第3204回。
なんだかうまくいったな
と思うことは、
全部、
つらい思いをしたあとだった

(小田和正)

オフコースの小田和正さん。

だから、
「つらいことは信用できる」

「でも無理はしていない、
「無理しないというのは楽をすることではない」

「これまでずっと自分に負荷をかけてきた」

「70歳を迎える今もステージでは
キーを下げずに歌い、走る。
そのつど駆け抜け、後で繕ったりしない」

「楽したものは信用できないから」
『時は待ってくれない』から。
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小田さんは私の中学高校の5年先輩。
尊敬もしている。

「つらい思いをしたことは、
信用できる」

イトーヨーカドーも、
ヤオコーも、
つらい思いをしなければ、
古い店も、新しい店も、
信頼されない。

イトーヨーカ堂はもっともっと、
つらい思いをして、
古さの良さを出してもらいたい。

ヤオコーも無理をする必要はないけれど、
楽をしてはいけない。

楽をしないとは、
70歳を超えても、
基準を変えず高みを望むということだ。

私も小田さんに倣っている。

〈結城義晴〉


16 件のコメント

  • 伝統のあるブランドが、古臭いと思われるようになった時、下手にいじり回すとろくなことになりません。かと言って何もしないでいるわけにもいきません。リブランディング、リポジショニングは、マーケティングの中でも、最も難度の高い部類だと思います。私のつとめる会社も本当に苦しみ抜いて、何とか正解を出しつつあります。

    • 難しいテーマですね。
      しかし必ず正解があるはずです。
      楽をしていては解は見つかりません。

  • 久喜市住人です。かつて流通系コンサルにいたので、このヨーカドーとヤオコーのありようを、固唾を呑んで見守っています。ヨーカドーは本当に本当に苦しんでいる。でも食品の細やかさと地元銘店を探し出し、まとめる細やかさは流通業界随一。二階以上の迷走に心配はしているけれど、なにか方法があるはず、と頼まれもしないのに勝手にプラン組み立ててます 笑。それほどヨーカドーは地域に貢献してきたのです。それが痛い程わかる。ヨーカドー頑張れ! 
     
    一方ヤオコー。時の勢いにのって賑いあり。日配品の細やかなコンセプトに感心しながらも、生鮮はどうも流石とは言い難い。ヤオコーの生鮮はいつも思うけど、体裁を真似たうわべだけのように感じるのです。惣菜は頑張ってますが。 
     
    両店、年々派手になる惣菜種類をみるにつけ、本当に買い手はそこまで求めてるのか、買い手がバカになってしまう売り場を作ってるのではないかと悶々としたりもするのですが、そんな視点から組み直せないかと思ったり。 
     
    とにかく、大商圏とって潰し合う昭和の流通合戦だけはやめてほしいと心から願っています。 
    自然と共生の姿勢で、得意を打ち出してほしい。 
     
    長文駄文失礼しました。  

    • 鈴木美穂さん、
      ご投稿ありがとうございます。

      鋭いご指摘もありますね。
      おっしゃる通り惣菜は年々、
      派手になっていきます。

      それでいいのかどうか。
      カテゴリーごとにこの一品を自信をもってお勧めするのも、
      惣菜の在り方だと思います。

      ありがとうございます。

  • ヤオコー久喜吉羽店には、埼玉県民なら誰しも知っている営業時間が長い【ドラッグストア・セキ】も入居しています。
    ドラッグストアとは名ばかりで、扱うアイテムが半端ないです

    • 藤本さん、ドラッグストア・セキは、
      ヤオコーのオープンよりも少し遅れて開業しました。

      ありがとうございます。

  • イトーヨーカ堂久喜店はかつては日本一の売り上げを出していたが、ロジャースやアリオ等の競合店が増え今はアリオがあるのでヨーカ堂久喜店は無くなってしまうのではと心配している。

    そこへヤオコーも増え益々頑張って貰わないと本当に無くなってしまいそう。

    • めだかさん、ありがとうございます。
      その通りですね。

      立地も売場面積や売場構成も、
      中途半端になってしまいました。

      何か生き残る道はあると思います。
      それを考えなくてはいけません。

      効率の尺度だけで見ていると、
      どんどん縮小していって、
      最後にはなくなってしまいます。

  • 久喜市民です。
    野菜の質が悪いことは昔から言われていましたが、
    近頃は他店では見切り品のような品物が売り場に平然と並んでいることがあります。
    中心が緑葉の白菜、小指の太さの長ネギ、ヘタの取れたアボカド。
    まともな主婦ならかごを置いて他店に行きます。

    何かを削るよりも、当たり前にこだわってくれたら良いのにと思いますね。

    • 久喜市民の佐藤さん、ありがとうございます。
      厳しいご指摘、痛み入ります。
      「当たり前にこだわってくれたらいいのに」
      その通りです。

      当たり前にこだわるために、
      楽をしてはいけません。
      効率を優先させてはなりません。

  • 小売業関係者です。
    日常使い、身の回り品としての総合スーパーは絶対に必要です。例えば、肌着などはPBもNBも選べるのは総合スーパーしかありません。子供の文房具はどこに買いに行くのでしょうか?鍋や包丁もみんなニトリや無印良品になってしまいます。
    ワンストップで買い物ができる総合スーパーは買物弱者にも便利だし、労働力も集約できるしこれからの時代に本当は必要な業態で、
    面積や従業員の質も含めた売り方の見直しでなんとでもやりようはあると思います。

    • 小売業関係者のヨシさま、ありがとうございます。

      全面的に同感します。
      「ワンストップで買い物ができる総合スーパー」とは、
      アメリカのウォルマートであり、ターゲットです。
      彼らがそれを実証しています。

      日本でできないはずはありません。
      不断のイノベーションが求められます。

      「イノベーション」と簡単に言ってしまいますが、
      それは大変なことです。
      しかしウォルマートとターゲットを見ていると、
      さらにクローガーのマーケットプレイスや、
      HEBプラスを勉強していると、
      可能であることがわかります。

  • 自分もかつてスーパーに関わる業種で働いていて、ヨーカドーにもイオンにも伺ってたのですが、コレは完全に個人的な感覚ですが、20年以上前の頃はイオンが色々なスーパーをM&Aしていてヨーカドーは当時唯一そこに対抗できる会社でした。鈴木社長や岡田社長とも良く面談させていただきましたが自分としては鈴木社長のスーパーマーケットと言う商売に対する考え方がすごく好きでした。当時のイオンのスーパーと言う商売にとことんこだわるのではなく、デベロッパー的な魅力を求める姿勢には?と思っていました。が結局そのイオンが大勢を占めヨーカドーは閉店ラッシュ。自分も先見の明がなかったんだな。と思います。
    時代なんですね。

    • 史朗さん、ありがとうございます。
      私はいつも書いています。
      伊藤雅俊から離れると弱くなり、
      鈴木敏文を否定するとだめになる。

      イオンは岡田卓也のDNAを意図的に、
      堅持しようとしています。
      岡田さんは「考えに考えて、考え抜け」と言い続けました。
      「建物は多いけれど、店は少ない」と鼓舞し続けました。

      はじめは未熟だったかもしれませんが、
      それを堅持していると少しずつ完成に近づいていきます。

  • 千葉の場合ですが少し離れた近隣にヤオコーは有りますが行ったことがありません。最近千葉では「せんどう」がヤオコーの傘下に入りました。また、『ガッツ』がクスリの青木の傘下に入りました。ヨーカドーも閉店が決まりました。Costcoは会員制にも関わらず、毎週末は混んでいます。業界再編成の嵐が吹き荒れていますね。

    イオンは出店しすぎて近隣店舗で客の食い合いで空洞化したゾンビ店舗が増えてきています。
    巨大イオンだけが生き残り、逆に買い物難民が増えてきている実態があります。売り場を縮小してでもまいばすけっとや食料品だけのヨーカドー等、その地区に必要な食料品店舗は残すべきでしょう。
    それでなくてもスーパーの台頭で昔ながらの商店街はシャッター通りになってしまっているのですから。

    • ややさん、ありがとうございます。

      企業の吸収や合併は世界中の趨勢です。
      小売業に限らず製造業でもM&Aが盛んです。

      従業員の皆さんの賃金や待遇を上げながら、
      厳しい競争に勝ち残っていくのはとても難しいことです。

      それができる企業が、
      それができない企業を包含していきます。

      不思議なことにヨーロッパなど、
      小さな国ほど上位寡占が激しくなっています。
      しかもその上位企業が、
      先進国の先進チェーンストアだったりします。

      千葉はイオンがうまくドミナントができていない県です。
      他の都道府県では、
      大型のイオンモールというショッピングセンターと、
      その核店舗のイオンスタイル、
      そして中型の食品スーパーマーケットのマックスバリュ、
      東京・神奈川では小型スーパーマーケットのまいばすけっと、
      さらにドラッグストアのウエルシアなど、
      マルチフォーマットで展開しています。

      これは流通先進国のチェーンストアの定石です。

      イオンには1店ずつのさらなる充実を求めたいと思います。

      シャッター商店街に関しては、
      後継者難が一番の原因でしょう。
      後を継ぐ人がいないことです。

      しかし新興のチェーンストアも、
      もともとは商店街の商店でした。

      ダイエーは薬屋でした。
      イトーヨーカ堂は普段着屋でした。
      ヤオコーは八百屋でした。

      みんな最初は小さな店でした。

      私は商業は大きな森のようなものだと考えています。
      巨大な大木もあれば雑草もある。

      それらがそれぞれに自分の顧客のほうを向きながら、
      生命力をもって、必死で生き残る。

      生命力のない者は枯れていく。

      それが商業の競争です。
      そして競争が存在するほうが、
      消費者にとっては幸せです。

      いい店でいい買い物ができるからです。

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