ミドルマネジメント研修会最終日のスタンディングオベーション
「今日は仕事を休んで謹慎しますので、
どうぞわたしどもをお守りください」
(萱野茂の父)
朝日新聞「折々のことば」
第3209回。
萱野茂さんはアイヌの歴史・文化の語り部。
父上のことを語る。
「小屋にしまっておいた鋸(のこぎり)などの道具が
夜に狐(きつね)に散らかされたりする」
父上はこれに対して、
「何か変わりごとの前兆を
こっそりアイヌにだけ知らせてくれた」、
いわば「神の耳うち」と受けとめて、
祈りをささげた。
自分らもまた生計のために
山の懐深くに入り込み、
神々の住まいや庭を荒らしていると、
懺悔(ざんげ)しつつ。
祈りとは自分を謙虚にすることだ。
商人舎ミドルマネジメント研修会。
いよいよ最終日。
答え合わせをする受講生たち。
3日目の第1・第2講義は高野保男講師。
作業システムとレイバースケジューリング。
チェーンストアの基本は、
そのチェーンオペレーションにある。
高野さんは豊富な現場指導の成果をもとに、
極めて実践的な講義をしてくださる。
高野先生の講義を聞いているといつも、
ドラッカーの言葉を思い出す。
「いい工場は静かだ」
いいバックヤードもいい売場も、
静かでなければならない。
「店長は何が何でも、
お客様の名前と顔を200人覚えよ」
その通り。
清掃に関しては、
「汚れていようが汚れていまいが、
毎日、清掃すること。
汚れていなくても清掃すること。
そうすれば日々の清掃は、
楽になり、簡単になる」
「汚れてから清掃するから、
時間と手間がかかる」
この後は結城義晴の講義。
より理解を深めてもらうために、
30分ほどを費やす。
設問の部分のテキストを開いてもらって、
計数の問題も丁寧に解説する。
それから本番の講義は、
まずチームマネジメント。
ウェグマンズとホールフーズ、
そしてウォルマートの歴史的転換。
それをスライドで紹介する。
さらにチームリーダーとチームメンバーの役割
マネジメントとリーダーシップ、
集団思考の弊害などを解説。
ミドルマネジメントには、
是非とも一度、革新的なプロジェクトを企画し、
そのチームリーダーになってほしい。
テキストはその際のチェックリストになる。
ケン・ブランチャードのリーダーシップの方法論。
『1分間マネジャー』シリーズは世界中で、
マネジメントの手本となった。
リーダーシップの4つのスタイルと、
部下の4つの発展段階。
発達段階に応じたリーダーシップスタイルを、
4つに分けて解説する。
S1は指示型リーダーシップ、
S2はコーチ型リーダーシップ、
S3は援助型リーダーシップ、
そしてS4が委任型リーダーシップ。
受講生たちに自分がどのタイプかを、
手を挙げて答えてもらう。
さらにミドルが知っておかねばならない、
チェーンストア理論と戦略論。
はじめはゴドフリー・M・レブハー。
そのチェーンストア経営論が原点中の原点だ。
「チェーンストアは小売業者であり、
卸売業者である」
凄い見識だ。
さらに古典的チェーンストア論の評価。
それから私の持論。
業種・業態・フォーマットとポジショニング戦略。
ここでは田村正紀先生の『業態の盛衰』を紹介する。
そして最後はサービスマネジメントと、
イノベーションのエッセンス。
「ホッケースティックの関係」は、
みんな、ぜひ頭に刻んでおいてほしい。
自分が変わらねば、
仲間を変えることはできない。
自分が変わらねば、
職場を変えることはできない。
自分が変わらねば、
店を変えることはできない。
そして自分が変わらねば、
会社を変えることはできない。
それができれば、
社会を変えることもできる。
健闘を祈る。
するとスタンディングオベーションで、
感謝の意を表明してくれた。
すべての講義が終了すると、
受講生たちは専用バスで、
熱海駅と湯河原駅へ。
ラインホールド・ニーバーの「祈り」。
私が立教大学大学院の特任教授に就任したとき、
学内の教会でミサを開いてくれた。
ミサの最後に、
この祈りをした。
私は深く感動した。
そして自分のセミナーや海外研修、講演の最後に、
ニーバーの祈りを捧げることにした。
「変わるものを変えられる勇気を、
変わらぬものを受け入れる心の静けさを、
それらを見分ける英知を、
お与えください」
変わるものは変えよう。
変わらぬものは受け入れよう。
それらを見分ける英知を身につけたい。
自ら、変われ。
健闘を祈る。
〈結城義晴〉
2 件のコメント
結城義晴先生、「業態の盛衰」。立教での修論指導がよみがえります。
山本さん、ありがとう。
懐かしいですね。