結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2024年11月27日(水曜日)

玉生弘昌著「経営者のための経済学史」を紹介する。

大阪出張から帰ってきたら、
二人が38度の熱を出した。

亀谷しづえGMと、
山本恭広編集長。

私もなんだか熱が出てきた気がするが、
計ってみると36.8℃。

それでも心配だ。

そのうえ奥歯が虫歯になって、
浅間町歯科医院で治療してもらった。

奥歯は親知らずで、
歯磨きがしにくい。

だから虫歯菌が歯をう蝕させる。
ストレプトコッカス・ミュータンスと呼ぶ。
1時間近くもかけて、
虫歯を取り除いてもらった。

そのうえ左膝がまた、
痛み出した。

12月を目前にして、
体のあちこちにガタがきている。

すぐに葛根湯を服用して、
水を大量に飲んで、
布団をかぶって寝た。

さて玉生弘昌さんの最新単行本。
ダイヤモンド社刊。
『経営者のための経済学史』
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一昨日の大阪出張で、
行きの新幹線とそのあとの時間で、
読み終えてしまった。

巻措く能わず。
「かんおくあたわず」と読む。

面白くてやめられない。
「巻」(本)を読むのを「措く」(止める)ことが、
「能わず」(できない)。

経済学の歴史が簡潔に記してあって、
そのうえ玉生さんの見解がちりばめられている。
玉生さんは本質を見抜く目をもっている。
だから短く表現できる。

第一章は「自由主義経済の流れ」
これは欧米経済学の解説。

フランスのフランソワ・ケネーから、
スコットランドのアダム・スミスへ。

経済学が始まった。

小見出しがつけられた「節」が短い。
つまり読みやすい。

産業革命からジョン・メイナード・ケインズへ。
そのケインズの「乗数理論」。

アメリカのシカゴ学派の反発。
そして米国民主党と共和党の、
経済理論的対立。

わかりやすい。

最後は新自由主義。

一気に近代経済学の概要を理解できる。

第二章は「共産主義経済の流れ」

ご存知、カール・マルクスの理論。
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それを実践したウラジーミル・レーニン、
そのソビエト連邦。

バーナード・ショー。
イギリスの劇作家。
「間違った知識には注意せよ。
それは無知よりも危険である」

第三章は「日本の経済学」
明治維新と太平洋戦争の敗戦。
その後の「マル経」と「近経」。

バブル経済とデフレスパイラル。

ここで「安売り哲学」と「流通革命」が登場する。
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林周二に対する見方は、
私とはちょっと異なるが、
玉生さんは「問屋有用論」を主張する。

玉生さんはマーガレット・ホールの、
「取引回数最小化の原理」をもって、
問屋無用論に反論する。

林周二は、
卸売業」は社会に必須な機能で、
その役割を果たし巨大になるだろうと書いている。
「トンネル口銭」に頼る卸売業とその集団は、
消え去るだろう、との指摘だ。

この章の最後は、
日本の財政赤字とMMT理論。
「現代貨幣理論」は、
「円」という通貨が国際的に通用するから、
日本に当てはまるという見解。

第四章と第五章は、
「格差の問題」

第四章が国家間の格差、
第五章が国内の格差。

この章の最後はトマ・ピケティ。
『21世紀の資本』から「r>g」の方程式。
rは投資利益率、gは経済成長率。
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資本家はr%の利益を得るが、
労働者はg%の賃金の増加しか得られない。

これは金融経済世界が、
実体経済世界の上位にある状態を示唆している。

つまり格差は広がるばかりだ。

第六章は「貨幣の流れ」
経済は流れるプール。

この、プールのイラストが実にいい。

本を買って、読んでください。

第七章は「金融の肥大化」

結論は、金融世界にかかわらないと、
富裕層にはなれない。

第八章は「資本主義批判」
伊那食品の塚越寛会長の話と、
ジョンソン&ジョンソンのクレド。

「今後の日本の経営者の方々には、
従業員重視の経営をしていただき、
分配の改善を少しでも進めていただきたい」

同感だ。

第九章は「経済学とは何か」
この章の最後に表が提示される。
左に経済学理論を並べて、
右にその信頼度をパーセンテージで示す。

この本の一番価値がある部分だ。

アダム・スミスの”見えざる手”。
セイの法則。
ピグー効果。
マーシャル・クロス。
マルクスの計画経済。
ケインズの乗数理論。
フィッシャーの法則。
マネタリズム。
クズネッツ曲線。
ラッファー曲線。
トマ・ピケティの「r>g」。
MMT。

第十章は「新しい経済学」

インフラは国家なり。
そのインフラを論じる経済学がない。

玉生さんの主張。

そして最終章は「日本の時代」
「日本人こそ、日本の文化・芸術を
理解しなければならない」

最後に経済学史・参考文献。

ヨーゼフ・シュンペーターは、
1914年に『経済学史』を発表している。
「学説並びに方法の諸段階」
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この本は社会経済学が科学に発展したとき、
アダム・スミスが大きな貢献をした、と始まる。

第二章はそのアダム・スミスの「経済循環の発見」

第三章が古典学派の体系。

第四章が歴史学派と限界効用理論。

玉生さんの経済学史では、
第一章のはじめのところだ。

玉生さんはその後の大展開を簡潔に示した。
ピケティやMMTまで解き明かした。
いい本です。

生物学者の福岡伸一さん。
「科学のかわりに
科学史を勉強すればよいのだ」

その通り、経済学のかわりに、
経済学史を学べばいいのだ。

巻措く能わず、です。

読んでみてください。

〈結城義晴〉


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