訃報/女優・中山美穂の「神々しい感じでした」
昨日から二十四節気の「大雪」
雪が激しく降り始めるころ。
しかし関東は暖かい。
中山美穂さん。
一昨日の12月6日、
自宅の浴槽で遺体となって発見された。
歌手・女優。
54歳。
死因が判明した。
入浴中に起きた不慮の事故、
いわゆるヒートショックらしい。
検死の結果、事件性はないと確認された。
それにしてもヒートショック。
日本では1年間に1万人以上が、
このために死亡している。
高齢者が室内で亡くなる理由の4分の1が、
ヒートショックだそうだ。
その死亡者数は交通事故を上回る。
中山美穂の14歳のデビューは鮮烈だった。
1985年のテレビドラマ。
『毎度おさわがせします』
今年で言えば、
「不適切にもほどがある!」のごとき、
インパクトがあった。
反抗する少女・のどか役。
思春期の性をテーマにしたホームコメディー。
刺激的なシーン、挑戦的なセリフを、
躊躇なく体当たりで演じた。
ドラマが始まった時点では、
無名の若い女優だった。
だがそれまでの型どおりの清純派とは、
まったく異なるキャラクターで、
一躍、日本中の注目の的となった。
私もこのドラマは、
ときどき見ていた。
最初の役柄の「のどか」のイメージが、
中山美穂とダブって、
それが特異な存在感をつくった。
しかし歌手としてもヒット曲を出して、
デビューの年には日本レコード大賞最優秀新人賞受賞。
1988年(昭和63年)には、
「アイドル四天王」と呼ばれるようになった。
南野陽子、浅香唯、工藤静香、
そして中山美穂。
1985年の映画『ビー・バップ・ハイスクール』で、
「毎度おさわがせ」の延長上のヒロイン。
1987年、テレビドラマ「ママはアイドル!」では、
後藤久美子と共演。
1989年、「君の瞳に恋してる!」
このころ私は編集長になって多忙。
ほとんど中山美穂を見ることもなくなった。
ただし女優はつくられたイメージを超えて、
自我が表に出てくると、
妙な魅力を発揮する。
そんな期待を抱いていた。
1992年のドラマ「誰かが彼女を愛してる」では、
主題歌「世界中の誰よりきっと」を歌って大ヒット。
しかし普通の美人女優になっていくか否かの、
瀬戸際に立っていた。
1994年、映画『Love Letter』では、
ブルーリボン賞など数々の映画賞を受賞。
1998年には『東京日和』で、
日本アカデミー賞優秀主演女優賞受賞。
2002年、小説家の辻仁成と結婚してパリで生活し、
長男をもうけるも、2014年、離婚。
その後、女優と歌手に復帰して、
いい年のとり方をしていた。
映画『『Love Letter』の岩井俊二監督。
25歳の中山美穂を評した。
「神々しい感じでした」
女優は美しさそのものに価値が宿る。
不思議な職業だ。
けれど、中山美穂。
価値ある才能だった。
まだまだ50代後半から、
60代、70代の中山美穂を、
見せてほしかった。
とりわけてファンというわけではなかったが、
才能ある女優の早世は惜しい。
ご冥福を祈りたい。
〈結城義晴〉