結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
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2025年03月09日(日曜日)

藤井聡太の王将4連覇と羽生善治のB級2組陥落

日本の将棋界も年度末に差し掛かった。

先週は「将棋界の一番長い日」だった。
A級順位戦の10人のトップ棋士が、
一斉に対局をした。

名人挑戦者を決める、
棋界最高のリーグの最終戦だ。

ちょっと小粒になった観は否めないが。
その分、最高棋士は図抜けている。

藤井聡太名人である。
14歳でプロ入りして22歳。

現在、7冠。
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佐藤天彦九段と永瀬拓也九段が、
同率首位となって、
挑戦者決定戦になった。

その藤井聡太王将に、
永瀬九段が挑戦する74期王将戦。
永瀬も17歳でプロになって、
いま32歳。

その7番勝負第5局。

ここまで藤井3勝、永瀬1勝。

2日制の王将戦。
1950年に毎日新聞が始めた歴史ある棋戦だ。

埼玉県深谷市で土日に行われた。

この第5局。

珍しいことが起こった。

藤井はプロ入り以来、
先手番でも後手番でも、
不動の手を指してきた。

飛車先の歩をつく手だ。
先手ならば2六歩、
後手ならば8四歩。

その前に「初手お茶」と呼ばれて、
まずお茶を飲む。

これは戦況には関係ない、
余興のようなもの。

今回は後手番で、
角道を開ける3四歩を指した。

「おおっ」と控室がどよめいた。
アベマテレビで見ていたファンも、
全国から歓声を上げた。

同姓の藤井猛九段は述懐した。
「いいものを見せてもらいました」

藤井猛は振り飛車戦法の専門家で、
「藤井システム」を考案した天才だ。
54歳の羽生世代。

藤井は雁木という戦型に持ち込んだ。
アマチュアの私など、
中々、指しこなせない難しい戦術だ。

藤井は研究を重ねて、
この第5局に臨んだ。

意気込みが感じられた。

初日の土曜日は、
淡々と駒組が進んだ。

そして2日目。
少しずつ優勢を確保して、
あとは藤井曲線。

まったく波乱のない戦況のまま、
午後7時49分、藤井が120手目を指すと、
しばらく考えて永瀬が投了した。

藤井聡太の快勝譜となった。IMG_0974 (002)

対戦成績4勝1敗。
王将位を防衛、4連覇を果たした。

次年度に防衛すれば、
「永世王将」となる。

これで通算タイトル獲得数は28期。
谷川浩司十七世名人を抜いて、
単独5位となった。

前にいるのは、
羽生善治(99期)、大山康晴(80期)、
中原誠(64期)、そして渡辺明(31期)。

終局後の藤井王将のコメント。
「今シリーズは指していて充実感がありましたし、
その中で結果を残せたのはうれしく思います。
2日制の長い持ち時間で指すことができて、
いろいろと勉強になりました」

いつも謙虚だ。

昨2024年6月に叡王位を失った。
同年の伊藤匠に敗れた。

全八冠から七冠に後退したものの、
その後はすべて防衛を続けている。

この王将戦で24年度のタイトル戦は終了した。

名人戦は再び永瀬と対局する。

2024年度は3月で終わる。
その今期、象徴的な事件が起こった。

羽生善治九段のB級1組陥落である。

将棋界では毎年、棋士の順位が決められている。
すべての棋士は「順位戦」に参加している。

その順位戦は5つのクラスに分かれている。
A級からB級1組、B級2組、
C級1組、C級2組。

プロになりたての棋士は、
C級2組の最後に入る。

その下に「フリークラス」があって、
順位戦に参加しないベテラン棋士が属している。

羽生善治九段は、
将棋の歴史で最高の実績を誇る。
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現在は日本将棋連盟会長。
永世七冠資格保持者。

その羽生善治九段が、
B級1組の最終戦に敗れて、
4勝7敗となって、
陥落が決定した。

B級1組は「鬼の棲み家」と呼ばれて、
兵揃いのクラスだ。

全棋士が虎視眈々とA級を狙って、
日々研鑽するクラスだ。

レジェンドの中のレジェンドの羽生善治。
B級1組にいるのならば、
まあ納得がいくが、
全クラスの真ん中のB級2組となった。

あの羽生善治が、
「平均的な棋士」になってしまった。

寂しい限りだが、
それが現実だ。

羽生善治にはAIという、
もうひとつの敵がいる。

若手も中堅も、
AIを活用しない者はいない。

羽生世代も必死で、
それを取り入れているが、
ネイティブにはかなわない。

15歳でプロになって、
いま54歳。

一方、大先輩棋士には、
故大山康晴十五世名人がいた。
将棋界の巨人と称された。

大山はA級連続在位44期。
名人18期。

そして69歳で亡くなるまで、
生涯A級棋士だった。

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50歳を超えてから、
タイトルを11期獲得した。

羽生もこの大山は意識しただろう。
そしてそれは十分可能だったと思う。

大山は68歳で癌に病んだ。
即決で手術を受けた。

そのあとでA級順位戦に復帰した。
そして残る3戦をすべて勝って、
名人挑戦のプレーオフ戦に進出した。

同率首位だったのが
米長邦雄、高橋道雄、谷川浩司。

脂の乗り切った達人ばかりだった。

残念ながらこのプレーオフには負けた。
すると対局後に癌が再発して、
半年後に逝った。

羽生善治に大山康晴を真似ろとは言わない。
先に書いたようにAIの存在があり、
そのネイティブたちがいる。

藤井聡太の七冠、
羽生善治のB級2組。

どちらもずっと見ていたい。

〈結城義晴〉


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