結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2024年04月30日(火曜日)

横尾忠則「’70大阪万博・未完パビリオン」のぼやけた輪郭線

Everyone, Good Tuesday!
[2024vol⑱]

2024年第18週。
4月最終週、最終日。
明日から5月。

ゴールデンウィークの合間。
火曜・水曜・木曜と合間の平日があって、
金曜の憲法記念日から、
土曜のみどりの日、
日曜のこどもの日、
月曜の振り替え休日へと続く。

私は前半の3日間は、
自宅で完全休養。

もちろんパソコンに向かって、
原稿を書くことはできるので、
それはやった。

けれど一歩も外へは出なかった。

それでも夏風邪はしつこい。
咳はずっと残った。
熱も36.6℃を下回らない。

平熱まであと0.3℃か。

咳が出るので今日も自宅で原稿。
そして夕方、マスクをして出社。

会社のみんなにうつしてはいけない。

6700字と1万700字の2本の原稿を、
換骨奪胎して書き直した。

頭はシャープだし、
気力は充実している。

商人舎5月号、
ご期待ください。

この3日間で雑誌を仕上げて、
そのあとの4日間で、
風邪を完璧に打ちのめす。

そして1日開けて、
5月8日の水曜日から、
ラスベガスに向けて出発する。

商人舎US研修ベーシック編。
円安がここまで進んで、
派遣企業には負担をかけるが、
それでも大人気の研修だ。

今年は最後にお申し込みの3社には、
お断りしなければならなくなった。

すみません。

かつてはバス2台だとか、
バス3台の編成で実施したことがある。

しかし、ベーシック編は、
バス1台でギリギリ46名。
事務局と私できっちり50名。

マンツーマンで指導する場面もあるから、
これが限界です。

秋にベーシック編を、
もう一度やろうかとも思うが、
スペシャル編は実施したいし、
喜ばしい悩みだ。

アメリカに学ぶものはもうない。
そんな発言をする人もいる。
いや、どんな時代にも、
そんなことを言う人はいた。

しかしそれはおかしい。
ほんの一部の例外の人を除いて、
何しろアメリカの小売業やサービス業は、
楽しい、面白い。

面白い映画を見たり、本を読んだり、
楽しい音楽を聴いたりするのと同じだ。

学ぶなどと考えなくとも、
その楽しい小売サービス業に接することは、
間違いなく人間としてプラスになる。

そして商人舎の研修のように、
目的を明確にして米国と接することは、
極めて有益である。

もちろん米国に限らず、
欧州やアジアも有益であるし、
日本国内も有益である。

ストアウォッチングは楽しい。
45年前に販売革新誌で、
新入社員特集を組んだ時から、
これは私の信念である。

特集は、
「Store Watchingのススメ」
まだ駆け出しの編集者だったが、
大好評を博した。

さて日経新聞巻頭コラム「天声人語」

横尾忠則の大阪万博の話。
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知らなかった。
面白い。

横尾忠則は1970年の大阪万博に反対だった。
なぜか。

戦時中、多くの画家や作家が、
国威発揚に利用された。

そこでいかなる国家の事業にも加担しない。
そう考える芸術家は多かった。

横尾は万博への参加は承諾したが、
「人類の進歩と調和」というテーマは、
受け入れられなかった。

「なんとか裏切ることはできないか。
任された『せんい館』の構想を練るうち、
建物を未完のまま『完成させる』アイデアを思いつく」

面白い。

「周囲に工事用の足場を残し、
建築のプロセスをそのまま作品として披露する」
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当時33歳の若さ。
前衛のグラフィックデザイナー。

そのパビリオンは、
「いま写真で見ても抜群にクールでかっこいい」
同感だ。

「スキーのジャンプ台に似たスロープ状の屋根から、
真っ赤なドームが顔を出す。
同色のパイプで組んだ足場の上には
ヘルメットを被った人形が何体か立っている。
遠くから眺めると、作業中に見えた」

「予算がなくなって放置されたなどと
散々にいわれた」

来年4月に開幕する大阪・関西万博。
意図的ではないが、準備は進まない。

だが、横尾忠則は言う。

「人間は未完で生まれて未完で生きて、
未完で死ぬ。これでいいのではないか」

それでいい。

今日の朝日新聞「折々のことば」
第3072回。

自身の思考の輪郭線は
常にぼやけていたほうが
より良い社会を創ることができる
〈永井陽右(ようすけ)『共感という病』から〉
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永井は1991年、神奈川生まれ。
テロ・紛争解決プロフェッショナル。
特定NPOアクセプト・インターナショナル創業者。

「物事はつねに多元的かつ多岐的なもので、
白か黒か、右か左か、
はっきりさせるというのは
賢い選択ではない」

「”共感”がもし、共通項を見つけ、
一体になろうとすることであれば、
それこそが自分たちとは違う人らとの
対立や分断を生む」

「わかりあえないと思い定めておくほうが、
理解の余地は少しは広がる」

これは現在の世界外交の基本だろう。

同時に横尾の「未完のパビリオン」に通じる。
完成させないから、
白か黒か、右か左かは、
はっきりしない。

輪郭線はぼやけている。
そこに活路を求める。

するとより良いものをつくることができる。
面白い。

店も売場も、
すべてがきっちりとしていなくても、
面白いものができる。

ウォルマートは、
わざと一点、外した売場をつくる。

では、みなさん、今週も、
未完でもいい、面白ければ。

Good Tuesday!

〈結城義晴〉

2024年04月29日(月曜日)

危機の中の日常の「昭和」と失われた30年の「平成」

昭和の日。

祝日法で定めるのは、
「激動の日々を経て、
復興を遂げた昭和の時代を顧み、
国の将来に思いをいたす」

世界的な戦争を起こし、
最後には原爆を落とされて敗戦し、
そのあと劇的な復興を遂げた昭和である。
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戦争の中では平和を希求し、
その平和の中で繁栄を享受した。

昭和は平和の裏と表を知っている。

2025年は昭和100年。
別の意味でコンピュータ問題もあるけれど、
しっかりその意義を考えたい。

政治や議員主導で特別の祭典をやる必要はない。
国民が全体に昭和の意味を知り、
問い直す必要がある。

世界は昭和の時代から、
あまり進んではいない。

悲しいことだ。

私はその昭和を37年間生きた。
しかし昭和の劇的復興には、
それほどお役立ちできなかった。

私は昭和64年1月1日付で、
食品商業編集長の辞令をもらった。

そして7日後に平成となった。

しかし平成時代は、
ほとんどが「失われた30年」を含んでいる。

「失われた30年」はいい言葉ではない。
けれど、バブル経済崩壊後の1990年代初頭から、
コロナ禍の2020年代初頭までを示す。

私に様々なことを教えてくれた人たちは、
例外なく昭和の復活を担った。

尊敬し、感謝しなければならない。

私が本格的に社会貢献できるようになったら、
「失われた30年」に入ってしまった。

それはいつも思っている。

ただしこの時期、
かつての重厚長大と金融は、
「失われた」ときだったかもしれないが、
軽薄短小と小売業は、
発展と成長を果たした。

そのことに少しだけ貢献したか。

昭和の日にそんなことを思う。
「平成の日」の祝日がないのは、
失われたからなのか。

朝日新聞「折々のことば」
第3071回。
「平凡な日常」とは、
フィクションでしかないのだ。
(松村圭一郎)

「コロナ禍のような非常時には、
ケアや運送、ごみ処理といった
“エッセンシャルワーク”が、
労働条件が劣悪なまま社会全体を
支えてきたことが露(あら)わになる」

「社会的支援が不十分な人たちが
まっ先に苦境に立たされる」

「危機の中で顕在化する
構造のほうが”ふつう”で、
“何事もない日常”こそ
例外的であることが判明する」

『人類学者のレンズ』から。
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松村は1975年(昭和50年)生まれの、
文化人類学者。
熊本出身、京都大学大学院博士、
岡山大学准教授。

エチオピア西南部のコーヒー栽培農村を調べて、
博士号をとった。
フィールドワークを主体に研究をする。

「危機の中で顕在化する構造」が、
日常そのもので、
「何事もない日常」は、
例外的である。

昭和は危機の中の「日常」だった。
平成は何もない「日常」だった。

何もない日常が、
失われた30年をつくった。

かといって、
危機の中の日常に戻ればいい、
というわけではない。

そこが悩ましい。

しかし何もない日常だからこそ、
小売サービス業が貢献した。
その意味でエッセンシャルな産業なのだろう。

だからこそ、
凡事徹底、有事活躍なのだ。

〈結城義晴〉

2024年04月28日(日曜日)

衆院3補選の「すべてが負けた選挙」と政治家の「less is more」

衆議院補欠選挙の投開票。
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東京15区、島根1区、長崎3区。

いずれも立憲民主党が制した。

自民党は東京と長崎で不戦敗。
はじめから候補者を擁立できなかった。

自民王国の島根1区は、
小選挙区制導入の1996年以降、
自民党が負けたことのない選挙区だ。
しかも細田博之前衆院議長の選挙区で、
その死去を受けた選挙だった。

自民新人の錦織功政候補と、
立件民主元職の亀井亜紀子候補との、
一対一の与野党対決。
大差をつけて亀井候補が勝った。

日本維新の会は東京と長崎で候補を立てた。
長崎では立憲民主との対決となった。
いずれも敗れた。

自民党による「一強多弱」の時代は、
完全に幕を下ろした。

その一強の時代を振り返ってみると、
旧統一教会による選挙支援態勢や、
派閥パーティー券キックバックの裏金などによって、
選挙に勝つ体制が生み出したものだ。

亡くなった人のことを悪くは言いたくないが、
この二つの出来事を主導していたのが、
安倍晋三元首相であり、
細田前衆議院議長である。

そのうえ現在の円安による生活の圧迫。
国際的な地位の低下。

これらに対して国民が、
ノーと言った。

しかし立憲民主党の完全勝利とは言えない。

国民は日本のすべての政党に、
襟を正せと言っている。
一からの出直しを求めている。

立憲民主を含めて、
すべてが負けた選挙だ。

投票率は2021年の衆院選を大きく下回った。
長崎3区は35.45%の低レベルで、
前回の60.93%から25.48ポイント下がった。

東京15区は40.70%で、
58.73%から18.03ポイント減。

島根1区は54.62%で、
61.23%から6.61ポイント減。

いずれも過去最低。

すべてが負けた理由はここにある。
国民が政治から離れている。

一番大きかった自民党が、
一番大きく負けた。

もちろん自民党内では、
岸田文雄首相の責任問題も出るだろう。
9月には自民党総裁の任期満了が待っている。
岸田総裁の次はないだろう。

今の立憲民主党では、
政権を担うことはできない。

昨日の日経新聞「あすへの話題」
料理研究家の土井善晴さんのエッセイ。
「つつましい食事」
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「世界中の民族には、
毎日食べても大丈夫で、
飽きることのない最低限の
食事のスタイルがあると思う」

同感だ。

「なにを作ろうか、どんな味つけしようか、
といった現代人の迷いや苦しみはない」

「暮らしのリズムを壊さず、
手なりに料理して、
食事を整えればいい」

「飯を炊き、汁を整え、備えの漬物を添える」

「お膳に、箸を揃え、ご飯と汁を装い、
漬物をおく」

「一汁一菜の汁飯香という自然物に、
人間が作ったと言えるものはない」

病気をしているときなど、
一汁一菜の汁飯香が一番いい。

「毎日、『あーおいしい』と言える喜びは、
汁飯香という自然の凄さ。
日常の食事は大自然に向き合う時間だ
と考えてみてはどうか」

汁飯香で大自然と向き合うから、
病との戦いでも力がわく。

建築家ミースの言葉。
「less is more」
(より少ないものはより豊かなことである)

「贅沢もよいが、つつましさは大事への備えだ」

「お金が使いにくくなった今。
それ以上を望んで、喜んで、苦しんで、
喜怒哀楽という情緒が
生まれては消えていく」

政治を行う政治家も、
「less is more」である。

〈結城義晴〉

2024年04月27日(土曜日)

コンビニは客のためにあり「加盟店」とともに栄える。

2024年のゴールデンウィークが始まった。

当方は風邪をひいて、熱が下がらない。
38.0℃くらい。

私の経験では最初の段階で熱が出る。
37℃後半から38℃くらいにはなる。

その熱を下げると今度は、
喉が痛くなる。

喉の痛さに耐えていると、
それが治って今度は、
咳が出てくる。
止まらないほどの咳だ。

さらに咳が少しずつ出なくなって、
鼻水がでるようになる。
そうなると風邪は退散する。

ところが今回は、
熱を下げ、喉の痛みが過ぎ、
止まらない咳をしのいで、
そろそろいいかなという時に、
また高熱が出た。

心配になって、
家から一番近い町医者に行った。

「コロナではありません」
ジーパンをはいた若い医師がそう言った。

そして薬を処方してくれた。

「ひどい状態が続いたら、
総合病院に行ってください」

了解。

あとから考えると今回は、
風邪の引きはじめに、
大阪へ出張した。

最初の晩に高熱が出た。
その熱を一晩で下げて、
5時間の講義をした。
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最後の講義では声が嗄れて、
喉が痛くなった。

これもきちんと体調管理して、
講義に臨めなかった自分の責任ではあるけれど。

その晩ものどの痛みに耐えつつ、
養生した。

翌朝早くからハードワークをした。

それが風邪のプロセスの後半、
高熱が出る原因になったのだと思う。

だから静養して寝ていれば必ず治る。

さて、
KDDIによるローソンのTOBが成立した。
Take-Over Bid、株式公開買い付け。
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今年の2月、
KDDIが4900億円を投じて、
TOBの手続きを行った。

TOBは3月28日から4月25日までの期間に、
1株1万360円で実施された。
買い付け予定数の下限は、
全体の約3割にあたる約1445万株だったが、
約3903万株の応募があった。

KDDIはローソン株を2.1%保有していた。

残りの株式を買い取る手続きを進める。
そのうえで今年の夏ごろに、
ローソンを非上場化する。

もともと三菱商事が、
ローソンの50.0%を保有している。

KDDIが50%を取得することで、
三菱商事と半々の持ち分法適用会社にする。

au(エーユー)ブランドのKDDIは、
これによって全国チェーンを傘下に持つ、
日本唯一の電気通信事業者となる。

ローソンは「Ponta(ポンタ)ポイント」をもつ。
コンビニでは唯一、ポイントシステムを導入している。

かつて㈱True Dataが、
その開発と運営を担っていたが、
最終的にKDDIがグループに入れて、
携帯電話や金融サービスなどの事業を、
コンビニと組み合わせる。

「デジタル技術を活用した店舗運営の効率化」など、
ローソンのオペレーションに対する施策も、
発表されている。
それは時間がかかるだろう。

これでコンビニ3社は、
すべて非上場となる。

セブン-イレブン・ジャパンは、
セブン&アイ・ホールディングス傘下で非上場。
ファミリーマートは伊藤忠商事の完全子会社、
ローソンが三菱商事とKDDIの持ち分法適用会社。

コンビニエンスストア業態が、
チェーンストアとして、
成長性や収益性を競う段階から、
次の段階に移ったのか。

三社による鼎占となって、
なおかつ全体に店舗数が増えることはない。
日販の売上げが飛躍的に伸びることもない。

ならばその店舗ネットワークを活用する。
それは当然の思考回路かもしれない。

しかしコンビニが小売業であることは、
厳然とした事実である。

しかもフランチャイズビジネスである。

顧客と加盟店オーナーとそこで働く人が、
メリットのある施策でなければ、
思った通りの成果は上げられないだろう。

携帯電話や金融サービスとのコラボで、
オーナーに見返りがくるのか。
従業員が喜ぶ店舗運営になるのか。

これが基本中の基本だ。

店は客のためにあり、
店員とともに栄える。

フランチャイズの場合、
加盟店は「店員」である。

コンビニは客のためにあり、
「加盟店」とともに栄える。

これを忘れてはならない。

〈結城義晴〉

2024年04月26日(金曜日)

日経社説の「賢く動け」と「そよら横浜高田」グランドオープン

円の下落が止まらない。

どこまで下がるのか。
どのように対処するのか。
そして誰が、いかに責任をとるのか。

日経新聞の社説。
「小売りは消費変化に賢く動け」

「大手小売業の2024年2月期の決算が出そろった。
軒並み好業績となった」

「ただ足元の消費は力強さに欠ける」

はてさて、
「力強さに欠ける」といった程度のものか。
私はもっと深刻に考えている。

「実質賃金はマイナスが続き、
消費者には”値上げ疲れ”の雰囲気も漂う」

そこで、
「機動的な価格戦略と、
消費を喚起する付加価値の高い商品開発が
各社には求められる」

これがこの社説の主旨だ。

コンビニエンスストア業界の決算が好調。
高級ブランドを扱う百貨店も好調。

「値上げが相次いだ食品スーパーも、
ライフコーポレーションが
純利益を27%増やすなど堅調だ」

「外食業界は値上げをてこに、
新型コロナウイルス禍以前の利益水準を
上回る企業が増えてきた」

足元での消費者の節約志向の高まりを、
客数や購入点数の現象に求める。

そしていつもの言い回し。
「賃上げが広く波及しなければ、
物価高で生活防衛に動く消費者は増えるだろう」

賃上げは残念ながら、
広く波及はしない。

「とはいえ、過度な低価格競争は
経営体力を削りかねない」

このあたりが実に無責任だ。

具体的に説明しなければ解明しない問題を、
一般化して表現してはならない。

消費者は生活防衛に動く。
だから価格対応しなければ、
顧客の支持が得られない。

しかし過度な価格競争は、
経営体力を削る。

社説子は結論をもっていない。

そこでイオンにそれを求める。
「4年ぶりに営業利益が過去最高となったイオン」

「プライベートブランドで
一部商品を値下げする一方、
高価格帯のチルド食品も拡充している」

「節約とこだわりという消費の二極化に対し、
賢く動くことが重要になる」

この、「節約とこだわり」という、
イオンの二極化対応が、
社説子が言う「賢く動くこと」の内容だ。

中学や高校の先生たちが、
生徒たちに「賢く動けよ」などと言ったら、
日本はどうなるのだろう。

会社でも上司が部下に、
「賢く動けよ」と声を掛けたら、
どうなるのか。

日経は社説でそれを言っている。

昨年の1月から私は、
「トレードオン」を言い続けている。
それが今も必須であるとも言い続けている。

最後の一言。
「小売り各社は中長期の成長に向けた
戦略づくりも急ぐ必要がある」

いつものことだが、
締まりのない結論だ。

月刊商人舎5月号で、
この増収増益決算続出の問題と、
「円安による消費不況」に対して、
鮮明な主張を考えている。
今、その執筆中である。

ご期待いただきたい。

さて今日は、
「そよら横浜高田」が、
グランドオープン。

商人舎流通SuperNews。

イオンリテールnews|
都市型SC「そよら横浜高田」4/26オープン

私の体温は昼は36.7℃だが、
夕方から37.5℃。

だから自宅で仕事しつつ、静養。

亀谷しづえ商人舎GMが取材に行った。

場所は横浜市港北区、
地下鉄グリーンラインの高田駅から徒歩1分。
工場跡地に開発した。
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イオンリテールが、
都市型ショッピングセンターを開発し、
フード&ドラッグを核店舗に据えた。
アメリカのそれを研究し、
そのうえでイオンらしさを出している。
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1階が食品フロアで、
2階がイオン薬局とH&BCと日用品など。IMG_5120

そしてテナントのキャンドゥやバーガーキング、
大戸屋などの飲食店、全14のテナントで構成する。

地下鉄グリーンラインは2008年に開通した。
周辺はファミリー世帯を中心に人口が増加。

一方で駅周辺には商業施設や飲食店が少ない。
周辺住民の期待は大きい。IMG_5066

グランドオープンでは、
1日中入場規制が続いた。IMG_5061
食品売場、とくに鮮魚、畜産の売場には、
顧客が押し寄せた。

館全体で年間200万人の来場者を目指す。

ここには「節約とこだわり」や「賢く動く」などという、
薄っぺらな言葉を超えるものがある。

賢くなど動くことはない。
そんなことで今を乗り切ることはできない。

信念をもって行動せよ。
そして、初心忘るべからず。

この精神を全員が貫徹してほしい。
消費は現場が必死に喚起するものだ。

〈結城義晴〉

2024年04月25日(木曜日)

川勝平太静岡県知事と蒲島郁夫熊本県知事の「実践的知性」の落差

喉が痛い。
ガラガラ声を通り越して、
かすれ声。

体温は37.9℃。

このところ疲労が溜まっていたのだろう。

それでも1日、活発に動いて、
夕方、大阪から帰浜。

新幹線の窓からは夕焼けが楽しめた。
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富士の姿もくっきり。
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まだ頂のあたりは雪をかぶっている。
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箱根を超えても富士は見える。
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車中では久しぶりに、
何もせずに静養した。

日経新聞「大機小機」
リーダーに必要な「実践的知性」

コラムニストは客人さん。

静岡県の川勝平太知事と、
熊本県の蒲島郁夫知事を比べる。

15年にわたった川勝県政が幕を閉じる。
蒲島知事も16年の県政から去る。

川勝、75歳。
蒲島、77歳。

ほぼ同じ時期の学者出身の知事。

「川勝氏は人気があった。
知事として初挑戦の選挙こそ
辛勝であったが、その後、
3度の選挙ではいずれも圧勝だった」

「人気の背景の一つに学者出身という経歴、
そして数々の著書から推察される
知性や見識に対する評価と期待があった」
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だが15年の県政を見ると、
その期待に見合う成果はなかった。

リニア中央新幹線の2027年開業は延期させ、
富士山の世界文化遺産登録をした。
このくらいしかない。

一方の蒲島知事。
「台湾積体電路製造(TSMC)の工場進出の
受け入れ体制整備に奔走し、
国の川辺川ダム着工にメドをつけ、
県のPRキャラクターくまモンを大成功させた」
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その落差は大きい。

川勝知事の問題点。
「関係者とのコミュニケーションや
それを通じた信頼構築を経ることなく
一人で大きな意思決定を行う傾向があった」

「その結果、川勝氏の意思決定は
関係者の理解を得られないものとなりがちだったが、
固執して不毛な対立が長期化した」

蒲島知事は、
「企業や国と信頼関係の構築に成功して
成果をあげた」

コラムニスト。
「心理学・教育学は、
知能が多面にわたるものであることを指摘している」。

「学者として高い評価を得ていた川勝氏が、
優れた分析的知性や創造的知性を
持っていたことは間違いない」

「一方、新しい状況の中で
適応的に対処する能力である実践的知性、
その重要な一部と考えられる
対人的知性は十分でなかった」

実践的知性。
対人的知性。

これは経営者や経営幹部に必須だ。
いや店長もバイヤーもチーフも、
実践的知性と対人的知性をもたねばならない。

それが知識商人の本来の在り方だ。

蒲島知事は農協の職員から東大教授に就任した。
異色の学者だ。

民間での就労経験、米国での農業研修など、
幅広い経験を有する蒲島知事は、
優れた実践的知性を持つ。

「学者だと言えばありがたがるような人は
分析的知性を過度に重視している」

その通り。

「企業を含む社会のリーダー選出にあたっては、
そうしたバイアスは危険だ」

結論。
「実践的知性の必要性を認識し、
それを見極める力を磨く必要がある」

分析的知性だけではなく、
実践的知性が必須である。

実践の中から知性が磨かれる。
商売の世界でそれを実現するのが、
知識商人である。

今年の商人舎1月号。
[Message of January]
みんなで学べ。

「まなぶ」は「まねぶ」から生まれた。
学ぶことは真似ることから始まる。
創意を尊びつつ良いことは真似よ。

商人は商売と仕事から学ぶ。
会社と上司と仲間から学ぶ。
顧客と取引先と地域から学ぶ。

話を聞いて学ぶ。
本を読んで学ぶ。
体験して学ぶ。

みんなが学ぶ。
しかし優先されるべきは、
個人が学ぶことだ。

個人が人生をかけて学ぶ。
それが組織学習の基礎となる。
個人の学習なしに組織の学習はない。

「みんなで学ぶ」とは、
「チーム学習」とは、
学んだ者同士が対話することだ。

対話を通じて、
ビジョンを共有し、
成果を最大化させることだ。

ポストコロナの2024年。
学習する組織をつくろう。
みんなで学ぼう。

個人が人生をかけて学ぶ。
それが組織学習の力となる。
個人の学習なしに組織の学習はない。
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「商人は商売と仕事から学ぶ。
会社と上司と仲間から学ぶ。
顧客と取引先と地域から学ぶ」

これが実践的知性である。

実践しつつ考える。
考えては実践する。
そしてまた考える。

限りなくそれを繰り返す。
そこから実践的知性が生まれる。

学歴は全く関係ない。
大学教授であったことも、
実務家としては全く関係ない。

川勝平太と蒲島郁夫。
皮肉な取り合わせで、
同時期に知事を務めた。

そして実践的知性の重要性を教えてくれた。

〈結城義晴〉

2024年04月24日(水曜日)

万代知識商人大学第9期の開講式と第一講座、全身全霊

珍しく、昨夜、熱が出た。
私はその対処法をもっている。

それをやった。

朝には熱は下がった。

軽く朝食をとって薬を飲み、
タクシーに乗り込んだ。

万代知識商人大学第9期が始まった。

例年3月開講の万代カレッジ。
今年はひと月遅れて、
4月に開講。

4月はミッションマネジメント、
5月はヒューマンリソースマネジメント、
7月はフィナンシャルマネジメント、
10月はオペレーションマネジメント、
11月はマーケティングマネジメントと、
ストラテジックマネジメントを、
2日間かけて学ぶ。

そして来年1月の論文発表・修了講義。
6回、7日間で実施される。

その間の9月には、
商人舎ミドルマネジメント研修会に、
全員が参加して、
万代知識商人大学の復習をしつつ、
他社の同志たちと交流する。

よくできたカリキュラムだ。

9期生たちは1年かけて、
マネジメントの体系とその基礎を学ぶ。
仕事はできる者ばかり。
3000人の中から選抜された32人だ。

Managementの「Manage」とは、
馬を御するときの手綱の取り方、といった意味だ。
昔、渥美俊一先生は、
みんなで丸太を漕いで、
どこかへ向かうこと、
という説明をした。

安土敏こと、荒井伸也さんは、
Managementとは、
「段取り組みのことだ」と、
簡潔に説明した。

いずれも正しい。

そのマネジメントは多様化してきた。
なんにでもマネジメントをつけるきらいがある。

しかしその中で大きな枠組みをすると、
6つのマネジメントになる。

それが万代知識商人大学のカリキュラムとなっている。

講義会場は万代本社に隣接する、
万代会議棟の大ホール。

朝9時に開講式がスタート。

開会のあいさつは和久正樹取締役。
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物事を斜めから見ずに、まっすぐに見よう。
知識を学んで商売の楽しさを知ろう。IMG_4971

和久さんは丁寧な言葉で、
9期生たちに期待の言葉を贈った。

次は結城義晴。
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私が最初に受講生たちに贈る言葉は、
「ビッグシンカー」。
Big Thinker。

世界で初めて企業内大学をつくったのが、
ゼネラルエレクトリック社だ。
1956年のことである。

通称「クロントンビル」。

そのクロントンビルのたった一つの考え方が、
「Big Thinker」である。

大きなモノの見方、考え方。

日本語にすると、
「着眼大局、着手小局」。IMG_4980

物事を大きく捉えて考える。
そして実践にあたっては、
小さく着手する。

開講挨拶のあとは、辞令交付。
阿部秀行社長が一人ひとりに辞令を言い渡す。
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32名が次々に辞令を受け取る。
会社の正式な業務として学ぶからだ。
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今日はコーポレート部門の取締役たちが出席。
管掌部門のミッションを説明しながら、
受講生へ期待の言葉をかける。

山口茂樹取締役。
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情報システムと物流管掌。

谷内(やち)毅取締役。
経営企画管掌。
IMG_5002

頓宮博取締役。
IR/広報管掌。
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河野竜一取締役。
人事管掌。
IMG_5008

これから1年にわたって、
役員たちが自ら講義する。
これが企業内大学のメリットである。

教えられる者は、
自分たちの実務に即して講義が受けられる。

講師たちは大学で講義するために、
自分の管掌を再整理して、
イノベーションにつなげる。

生徒も教師も、
共に学んで成長することができる。

外部の講師は結城義晴だけだ。

9期生たちは真剣に聴講する。
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そのあとはミッションマネジメント講義。
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昼食休憩をはさんで、
4時間30分。
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午前中に2時間、
午後に2時間半。

まずマネジメント体系の説明から入る。

ピーター・ドラッカーは語っている。
「鋸(のこ)や金槌、あるいはペンチしか
持たない者は、大工は出来ない。
それらの道具を一揃えにしたとき、
初めて大工道具を手にしたということが出来る。
それが、私が『現代の経営』で行ったことだ。
私はマネジメントを体系として
まとめたのだった」

万代カレッジ生には、
スーパーマーケットにおける
優秀な大工になってほしい。

それはマネジメント体系の完全な理解から始まる。

講義は倉本長治の商売十訓、
ピーター・ドラッカーが重視する3つの概念、
商業の基幹産業化と知識商人の役割。

さらに午後からスライドを使って
「商売の使命と万代の使命」。IMG_5025

何とか気力で持たせていたが、
午後になって体力が限界にきた。

だから着座での講義となった。

「ミッションマネジメント」の意味を説明してから、
具体的にその事例を解説した。

ウォルマート創業者サム・ウォルトンの10ルール。
イオンの理念、ベニマル商法十二章。

最後にチェーンストアのガイダンス。
万代も160店を超えるチェーンストアである。
だからそのコンセプトはミッションと深くかかわっている。

ゴドフリー・レブハーのチェーンストアの定義、
さらに自著『チェーンストアー産業ビジョン』。IMG_5027
5時間にわたる講義で、最後は声が枯れた。
しかし万代カレッジ第1回講義は無事に終了。

講義が終わると、
阿部社長が受講生に訓示する。
IMG_5033

30分ほどの短い時間だが、
これが実にいい。

商売の在り方、マネジメントの在り方を、
経験を交えて話す。

仕事や商売の半分はゲームだと考えてみてほしい。
ゲームをクリアするのは楽しい。
仕事は楽しい。

クリアする方法を一所懸命に考えて、
いいやり方が見つかったら、
夜も寝ていられない。

商売の半分はそんなゲームだ。
楽しめ。

しかも毎日毎日結果が出る。
こんな楽しいことして、
そのうえ給料までもらえる。

万代のチーフの仕事は、
楽しいものだ。
楽しまなければいけない。

若いチーフたちに向けて、
本当に腹に落ちる話ばかりだ。
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和久さんもお疲れさま。
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万代知識商人大学第9期、
開講式とミッションマネジメント。

何とかやり遂げた。

体はくたくた、声は完全に涸れた。
熱も出てきた。

それでも講義となると、
全身全霊を傾ける。
手は抜けない。

ご清聴を感謝する。

〈結城義晴〉

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