「元気を出そうよ、
それがあなたの仕事です」
私の得意のフレーズで、
今週をスタートさせよう。
さて、年末まで、2カ月半。75日。
あなたは、どんな考え方で、
今年を締めくくろうとしているのだろうか。
今年の締めくくりを、
イメージしないままに、
今週を、そして今月を、
11月、12月を迎えようとしているのだろうか。
私の、心境をご披露しよう。
10月上旬、アメリカ滞在中、
私は『宿澤広朗 運を支配した男』(加藤仁著、講談社刊)
について考えていた。
毎回、海外に出かけるときは数冊の本を持っていく。
しかし今回は、往路でこの本を読んでしまい、
あとはこの本の中の主人公の言葉を、
反芻していたのだ。
宿澤広朗(しゅくざわひろあき)は、
早稲田大学ラグビー部現役時代、
大学日本一となったうえに、
社会人ナンバーワンチームを2年連続で破って、
日本一に輝いたラガー。
ポジションはスクラムハーフ。
大男ばかりのフォワードのそばにくっついて、
ゲームをコントロールする小男。
私は、その鋭い動きと的確な判断力が、
瞼に残っている。
とりわけ強い意志が、忘れられない。
その後、日本代表チーム監督として、
世界の8強宗主国の一つ、
スコットランドをテストマッチで破る。
ワールドカップでは、
ジャパンを初勝利に導く。
仕事の面でも、住友銀行に勤め、
ロンドンの為替ディーラーとして活躍。
日本に戻ってからも、
バブル崩壊後の松下問題の解決など、
重要案件を次々に処理。
取締役専務執行役員まで一気に昇格し、
新時代の銀行戦略を打ち立てる。
その宿澤広朗の言葉。
超一流のラガーマンと功を成し遂げたビジネスマンに、
共通に貫かれていた哲学。
「全力疾走していなければ、失速する」
「努力は運を支配する」
「一流であれ」
これらは、宿澤の55年の短い人生を貫徹した精神。
「マーケットがどう動くかは、
そこに参加する人間がどう動くかによって決まる」
為替ディーラーのときの発言だが、市場の原理を言っている。
「リスクをとれる強気な人間は数十人に一人。
その強気の人間を発掘するのがリーダーの仕事」
「リーダーシップが求められるのは、チャンスとピンチのとき。
それ以外のときには、それほど必要ではありません」
リーダーシップについて。
「何かをやろうと思って本当に決意したときには、
とことんすべてをやらないと実現しない。
そのためには、相当決意を強く持たないとだめでしょう。
そこまで決意を固めた人間には、なかなか誰も反対できない。
決意を固めて、自信を持ってやっている人間は強いんです」
「指導者の中途半端な方針は無意味です。
決めたことについて、大体のことは、やろうと思えば出来る。
そこに間違いがないとはいえない。
間違いが2回に1回ではだめだが、
10回やって2回くらいならいい。
肝心なのは、そこを怖がらないこと。
思い切って決めたら、責任を持ってやり遂げる」
これらは、指導者の責任と心構えに関して。
宿澤は、赤城山の外輪山・鈴ヶ岳の山頂で、
心筋梗塞にて逝去。
2006年6月17日のこと。
本当に惜しいことに、享年55歳。
私より、二つ年上。
そして私は今、その55歳。
全力疾走していなければ、失速する。
リスクがとれる強気の人間とは、
自ら決意を固め、その決意を信じ込んだ者だ。
だから強い。
間違いを怖がらない。
ピンチのとき、
チャンスのときにこそ、
強気がリーダーシップとなる。
怖がらない勇気がリーダーシップとなる。
そして、運は努力によって、支配される。
年末までの75日。
あなたは、どんな考えで、過ごすのだろうか。
全力疾走せよ。
リスクを負え。
強気を固めよ。
努力を怠るな。
運を支配せよ。
<結城義晴>