現地時間6月30日、オースティン空港に到着したら、
まず、すぐにHEBセントラルマーケットへ。
14年前にオープンした店だが、
今も、絶大なる人気で、多数の固定客を集めている。
HEBは、ご存知、テキサス州の雄たるリージョナルチェーン。
310店舗で、年商135億ドル(1兆4850億円、1ドル110円換算)。
そのHEBのアップスケールタイプ。
現在8店舗。
約2000坪の大型スーパーマーケット。
ここでは、レクチャーを受ける。
フーディーズという役職の女性二人。
レクチャーの前に、実はランチ。
今回は、2階の屋外フードコートで、
ハンバーガーのサービスを受けた。
熱々のハンバーグを、パンにはさんで、
野菜と一緒に、バーキューソースで食べる。
一列にならんで、給仕してもらう。
そして昼ごはん。
美味。
皆、笑顔がこぼれる。
「有名な過酷なツアーのはずが、
最初からこんなにゆったりと楽しんでいいのでしょうか」
そんな声が聞こえるが、
大丈夫、ご心配なく。
どんどん過酷になってゆくし、
楽しさも増してくる。
楽しみながら、苦しむ。
商人舎得意の「オクシモロン」
さて二人のフーディーズから、
この店のコンセプトと現状を聞く。
フーディーズとは、食事コンサルタントのこと。
この店に7人ほど在駐している。
それから二手に分かれて、店内ツアー。
人数が多いので、二つにグループ分けしないと、
お客様と店に迷惑がかかる。
セントラルマーケットは、
リサーチとディベロップメントのためにオープン。
このオースティンの住民は、
高学歴・高所得者が多い。
そのターゲット顧客の食生活動向を探り、
この店で成功した商品や売り方を、
HEBのレギュラー店舗に反映させる。
さて、入口は、常に旬の商品で季節感を主張する。
この時期は、メロンで夏を訴える。
セントラルマーケットは、
何よりも第1に生鮮の中の青果部門を重視する。
何しろワンウェイコントロールで顧客を引っ張り続ける。
その最初の売り場こそが、
最後の売り場まで期待を抱かせ続ける爆発力を、
もたなければならないからだ。
入口の季節プレゼンテーションのコーナーを右に折れると、
左右に野菜売り場が続く。
通路真ん中に量りや島陳列の商品が並ぶが、
両サイドの商品が目に飛び込んでくる。
左は、箱に盛られた果菜類。
キューリ、ピーマンなど。
陳列什器は木製で、比較的腰高。
それでも顧客の目線に商品が飛び込んでくる感じ。
商品をまっすぐに見る。
そして自然に手に取る。
右手は、氷を敷き詰めたうえに、
ブロッコリ、カリフラワーなど並ぶ。
野菜から、品揃えが始まるところが、
セントラルマーケットの最大の特徴。
顧客が料理する、あるいは食事する時、
いちばん大切で頻度が高いのが、野菜である。
果物ではない。
その野菜を、鮮度と品質と品揃えで、
これでもかと主張する。
それがセントラルマーケットの「スペシャルティ」なのだ。
ディフェレンスなのだ。
奥正面には、オーガニック野菜のコーナー。
葉物を中心に品揃えされている。
ホールフーズはオーガニック・プロデュースが200前後の品揃え。
セントラルマーケットは、そこまでいかないが、100を超える。
各品種の中にオーガニックをちりばめているが、
葉物を中心に、奥正面にこのコーナーをつくることで、
大きなマグネットの役割を果たしている。
ワンウェイコントロールでも、
いやワンウェイコントロールだからこそ、
強力な磁石売り場は不可欠なのだ。
奥正面を右に曲がると、
まだまだ青果部門の視野が広がる。
圧巻の売り場であることに、
今更ながら納得させられる。
その右手は、タマネギ、イモ類などの根菜類。
根菜も敷き詰められた氷の上に陳列されると、
実に美しい。
左手に、果物が登場する。
プラムだけでこれだけの売り場が出来上がる。
奥は、リンゴ一色。
リンゴも味と食べ方、料理用途の多様性を訴えるが、
この世界最大級の品揃え。
アメリカのスーパーマーケットの果実売り場の実力を見るには、
リンゴを調べればよい。
最低、20品種のアソートメントは必要だ。
左手は、プラムからバナナに続くコーナー。
青果売り場の最後は、これもアメリカ人の必需品のバナナ。
タイガー・ウッズが、ゴルフプレー中にバナナを食べるのは、
タイガーの個人的な嗜好ではない。
アメリカ人は、皆、バナナが必需品なのだ。
そしてバナナ売り場とリンゴ売り場の間の島陳列で、
赤と緑の小ぶりのリンゴで決める。
美しい。
セントラルマーケットは、
1週間に100万ドルを売る。
日本円にして1億円超。
だから年間55億円くらいになる。
1週間の客数は4万人。
この4万人が、必ず、青果部門から入る。
まず、季節のプレゼンテーション売り場。
そして野菜から果物へ。
最後はバナナとリンゴで締める。
おそらく世界一のプロディース売り場。
顧客の食生活の優先順位と、
商品が主役の旬。
この二つの理屈で、
セントラルマーケットは出来上がっている。
<つづく、結城義晴>