2012年業態別年間販売額と「競争に参画すること・軽蔑されること」
私にとってはうれしいニュース。
「東急・メトロの池袋―横浜直通」
日経新聞の記事。
私の家は東急・妙蓮寺駅、
商人舎オフィスは横浜駅、
一方、立教大学は池袋駅。
それが一本でつながる。
スタートは 今年3月16日。
あと2カ月。
東京急行電鉄東横線と、
東京メトロ副都心線が、
相互直通運転を始める。
結果として、
池袋⇔横浜が最速38分で結ばれる。
便利になった。
それも、日中15分間隔で運転。
直通運転の区間は、
元町・中華街―森林公園(88.6km)と
元町・中華街―飯能(80.5km)。
相互直通運転による主な駅の所要時間は、
横浜⇔新宿三丁目が32分、
武蔵小杉⇔池袋が25分、
自由が丘⇔川越が1時間。
ヤオコー本部とも近くなります。
もちろん、現在の私は、
商人舎の横浜から立教大学の池袋までは、
JR東日本・湘南新宿ラインを使っている。
従って湘南ラインと東急・メトロの競合になる。
それは二つの選択肢ができて、
顧客としての結城義晴にはすこぶる便利。
何ごとも、競争が発生すると、
顧客にはありがたいことが起こる。
結城義晴著『メッセージ』より、
「競争はあなたの仕事です」
初めに、こう呼びかける。
あなたは、競争が好きですか。
他者と競争することに、喜びを感じられますか。
競争そのものを楽しむことができますか。
最後は、「競争はあなたの仕事です」
なぜか。
顧客が喜ぶから。
さて日経新聞『企業総合』欄に、
「セブンイレブン、全1万5000店にカフェ導入」
名称は「セブンカフェ」。
今夏までに、全店のレジカウンターに専用マシンを設置。
ホットコーヒーとアイスコーヒー。
ともにレギュラーサイズ(150ml)は100円、
ラージサイズは容量が異なるから値段を変える。
ホッ ト(235ml)が150円、アイス(270ml)は180円。
1杯ずつ豆をひいてドリップする。
香りや風味が引き立つブレンドコーヒー。
レジで料金を支払ってカップを受け取り、
マシンのボタンを押して、
顧客自らコーヒーを入れるセルフ式。
競争相手も同じ売り方をしている。
ファミリーマートは180ml150円、
サークルKサンクスは150ml130~180円。
セブン-イレブンの100円は、
わかりやすくて、安い。
新型マシンの導入店では、
1店当たり平均60杯の販売計画。
そうすると、サンドイッチは導入前より2割、
デザート類は3割、
売上げが増加する。
セブン-イレブンはまず、
札幌や北海道で実験をする。
今回も道内の店で実験をして、
来店客数4~5%増。
このセブン-イレブンの100円コーヒーに対して、
日経新聞の『マック原田の反省』の連載。
「おかしい。顧客が戻らない」。2012年夏、
日本マクドナルドホールディングス会長兼社長の原田泳幸。
手元に上がってくる販売実績に首をひねった。
「もはや100円メニューにお得感はない。
新たなバリューの提供が必要だ」
そこで原田さん、
「マクドナルドから助っ人を呼んだ。
店舗オペレーション歴37年のベテラン米国人と
マーケティングのプロのオーストラリア人女性だ」
「日本人社員とともにプロジェクトチームを作り、
新たな成長戦略を作り上げた」
「内容は60秒無料サービス、
リピーター率が80%を超える定番品『ビッグマック』の活性化、
朝食メニューの強化など」
今年2013年1月。
「新戦略が動き出した」
「注文から60秒以内で商品を提供できない場合、
ハンバーガーの無料券を渡すキャンペーン」
週刊誌やネットでこれが紹介され、
批判もされた。
しかし「話題性と出来たて商品」が、
「マクドナルドの価値」として、
それを訴えつづける。
ビッグマックの新たな販促の切り札も「無料」。
首都圏に大雪が降った1月14日の成人式。
新成人に単価290~340円の25万食のビッグマックを無料配布。
122万人の今年の新成人の2割超。
しかし店長らのコメント。
「人通りが減っている」
「夕食時間の落ち込みが激しい」
「市場は想像以上に悪い。
デフレ脱却の流れもあれば、消費増税もある。
お得と感じてもらえる価格を早く導き出さないと」
記事は「原田の模索は続く」と続く。
しかしこの無料作戦。
残念ながら、私は全面否定。
先の「競争はあなたの仕事です」のなかで、
私はこう書いている。
「ただし、気をつけねばならないことが二つあります。
第一は、競争をするといっても、お客たちから、
軽蔑されるようなものは避けなければならない、
絶対にやってはいけない、ということです」
「商売のルールを守る。
相手方を尊重する。
お客から尊敬される」
「第二のポイントは、
『差異性』を生み出す競争であることです」
無料、タダは、誰でもやれること。
それは競争の根本的な対策とはいえない。
原田泳幸の悩みは解決しないどころか、
セブン-イレブンが100円コーヒーで、
本格的に挑んでくる。
さて、今日の本論。
昨2012年の業態別販売統計。
まずは「全国百貨店売上高概況」。
日本百貨店協会から先週17日発表。
調査対象は全国の百貨店86社、計249店舗。
12月の総売上高は7165億8581万円。
対前年比はマイナス1.3%。
衣料品は2062億8242万円でマイナス1.8%。
紳士服、婦人服、子ども服、すべてが振るわず。
家庭用品は314億2363万円、マイナス3.7%。
家庭用品はこれで8カ月連続のマイナス。
食料品は2609億0377万円でマイナス2.1%。
国政選挙の影響によるお歳暮商戦の不振が要因。
逆に今月も好調なのは、身のまわり品や化粧品、宝飾品。
身のまわり品は2062億8242万円でプラス0.8%。
化粧品が340億1975万円で、プラス1.7%、
そして美術・宝飾・貴金属が323億7633万円、プラス0.7%。
2012年度の売上高速報も発表されている。
年間総売上高は6兆1453億1796万円。
前年比はプラス0.3。
その要因として考えられるものは3つ。
震災の反動による大幅プラス、
本物志向、こだわり消費などの消費マインドの変化、
そして店舗の増床や改装。
16年ぶりに前年を上回る結果となった。
次に、コンビニエンスストア統計調査月報。
21日に日本フランチャイズチェーン協会から発表。
調査対象は正会員のコンビニエンスストア本部10社。
ココストア、サークルKサンクス、スリーエフ、
セイコーマート、セブン-イレブン・ジャパン、
デイリーヤマザキ、ファミリーマート、ポプラ、
ミニストップとローソン。
12月の既存店売上高は、
7248億7400万円。
前年同月比はマイナス2.0%。
客数はマイナス1.6%、
平均客単価もマイナス0.4%。
既存店ベースでは売上高、客数、平均客単価ともに、
7カ月連続でマイナス。
ただし、全店ベースでは、
いずれもプラスとなっている。
12月の低温傾向や降雨量の影響、
たばこの売上げ減少で、前年割れだった。
その中で、おでんや肉まんなどのカウンター商材は好調。
寒さが味方してくれた。
年間売上高は全店ベースで、
9兆0264億円。
前年比を4.4%上回った。
コンビニ各社の出店攻勢が功を奏した結果。
百貨店とは3兆円の差が出た。
さらにコンビニは大手10社だけでなく、
各地にローカルチェーンやインディペンデントが展開しているから、
コンビニ業界全体では、どうだろう10兆円は超えているだろうか。
商業統計が経済統計として、
工業統計などと統合される。
早くそのあたりを知りたいところだ。
ちなみに2012年には、
コンビニ10社で2508店舗がオープン。
総店舗数は4万6905店で、
前年比プラス5.6%。
チェーンストア販売統計月報。
日本チェーンストア協会から22日に発表。
このデータでは主に総合スーパーの動向を読み取ることができる。
売上げの半分くらいが総合スーパーのものだからだ。
調査対象は57社、7895店舗。
大手総合スーパー、スーパーマーケット、
ホームセンター、ニトリ、ダイソーなどが名を連ねる。
総販売額は1兆2662億4369万円で、
既存店前年同月比はマイナス1.5%。
部門別の概況は、
食料品が7601億8357万円、マイナス1.1%、
住関品が2763億7325万円、マイナス2.0%、
サービスが44億2481万円、マイナス0.7%。
衣料品の売れ行きが特に不調で、
1391億2343万円の前年同月マイナス5.7%。
先月好調だった(プラス5.2%)反動で、
今月の動きは鈍かった。
さて、チェーンストアの年間販売動向。
総販売額は12兆5340億4600万円。
対前年比は全店でマイナス1.3%、
既存店でマイナス1.9%となった。
最後にスーパーマーケット販売統計調査。
昨日22日、スーパーマーケット3協会から発表。
調査対象は310社、7358店舗。
総売上高が9435億6651万円、
既存店前年同月比はマイナス1.3%。
食品の合計は8128億7566万円で、
マイナス1.2%
生鮮3部門の合計は3051億6995万円で、
マイナス1.0%
その内訳。
青果が1133億9421万円、プラス0.8%、
水産が941億4276万円、マイナス3.1%、
畜産が976億3298万円で、マイナス0.8%。
惣菜は848億4015万円、マイナス1.3%。
日配が1676億2717万円、マイナス0.9%。
一般食品が2552億3839万円、マイナス1.6%。
非食品は870億0523万円、マイナス2.8%で、
その他が436億8563万円のマイナス1.8%。
青果が高値で、この部門だけプラスだった。
「インフレターゲット2%」が喧伝されているが、
それが実現すると、店頭では、
高騰した12月の青果部門プラス0.8%以上の価格イメージとなる。
インフレを呼び起こすことが国是のようになっているが、
これは国民の生活を脅かす。
そのことを、商人として、
いつも忘れてはならない。
今月の発表担当はオール日本スーパーマーケット協会(AJS)。
年頭ということで荒井伸也会長と松本光雄専務理事が発表。
まず、松本専務理事が統計概況を発表。
「12月は11月を上回る数字だったが、
相場高だった青果以外がすべて、前年割れ」
「2012年の年間売上高は、
9兆6405億8528万円。
全店では前年比プラス1.0%」
「全店ベースではどの部門もプラスだが、
水産はやはり厳しく、マイナス0.1%。
エリア別にみると、首都圏と東海エリアが
全店でも前年割れをしている。
まだまだ2011年3月の震災の影響が残っているのだろう」
「クリスマス・年末商戦は、
購買行動が縮小傾向にある中で、
12月上中旬から積極的に
販促策を仕掛けた企業は好調だった」
結城義晴言うところの「早仕掛け」作戦は功を奏した。
「今年のクリスマス・イブは祝日だったため、
ファミリー向けの商材は好調。
パティシエとコラボレーションしたケーキや、
ビュッシュド・ノエル、小型のケーキなどの
動きは良かった。
ただし、全体的に見ると、
前年並みか若干下回る商況だった」
「年末は30日に雨が降ったことが影響し、
前年比90%前後の店が多数」
「AJSの数値だが、
12月25日~31日の1週間は平均96.5%だった。
お正月商材は小型化、少量パックが好調。
逆に刺身盛り合わせ、オードブル、お節セットなどの
大型パックは不振だった」
「各社、同じ内容を仕掛けても、
結果が出たところと、出なかったところ、両方あった。
理由は明確にはわからないが、
自社の強みを活かした企業が総じて良かったのだろう」
これも結城義晴のポジショニング戦略。
次に荒井伸也会長の発言。
「オール日本スーパーマーケット協会は
協会というよりも、“教”会である。
基本的にはメンバーの教育に重点を置き、
“知恵の共同仕入れ”を目的としている。
よって、他のスーパーマーケット協会とは、
性格が違うということをまずいっておきたい」
「生活良好(くらしりょうこう)というプライベートブランドをつくっている。
AJSは商品を共同開発するために集まった団体ではなく、
協会全体の売上高を上げようという考えにはない。
個人的な見解だが、
PBの比率は10%くらいで、NBも必要。
PB比率を増やすのが大事なのではなく、
消費者が求める品揃えにすることが重要なのだ」
「昨年はAJSに台湾の全聯実業が加入した。
初の海外会員。
台湾で初めて、
生鮮に強い食品店をやろうという考え方をもっている企業。
AJSからは生活良好の商品を提供していくことで、
相互関係が強くなっていくだろう」
スーパーマーケットの今後はどうなっていくか。
「少子高齢化が進む中で、
高齢化した人がどれだけ内食を自分でつくるのかわからない。
これまでは車での来店に対応した店舗づくりをしてきたが、
高齢者や若者の車離れで、商圏は小さくなり、
買い物の行動半径が小さくなるだろう」
今後どういう形のスーパーマーケットが求められるのか。
「各社が試行錯誤していく中で、新しい方法が出てくるだろう」
ここにAJSの“知恵の共同仕入れ”が活かされるし、
この「新しい方法」こそ結城義晴のフォーマット論。
各協会の2012年データを順に並べると、
チェーストアが12兆5340億4600万円。
スーパーマーケットが9兆6405億8528万円。
コンビニが9兆0264億円。
百貨店が6兆1453億1796万円。
スーパーマーケットは、
3協会トータルで310社、9兆6406億円。
コンビニ10社を8000億円上回り、
チェーンストア協会57社より3兆円下回る。
百貨店は86社で業態別にみると一番小さい。
ただし統計の精度は百貨店が一番高い。
1社1チェーン当たりの年商。
コンビニは1チェーン平均9026億円。
チェーンストア協会は1社2205億円。
百貨店は1社当たり715億円。
そしてスーパーマーケットは、311億円。
日本チェーンストア協会からは、
業態別の年商を提出してもらいたいところだ。
そうすれば何よりも総合スーパーの全体像がはっきりする。
スーパーマーケット、ホームセンター、ドラッグストアなどは、
それぞれに協会がある。
ちなみに日本の食品スーパーマーケットは、
年間販売額20兆円くらいになると思う。
だから3協会統計でも全体の半分以下ということか。
組織率の問題はまだ道半ば。
こういった小売業態間の競争が激化していると同時に、
外食・中食・内食間の競争が展開されている。
セブン-イレブンの「100円コーヒー」と、
マクドナルドの「100円メニューにお買い得感はない」。
業態間の競争を、
顧客は面白がって見ている。
軽蔑される者は、
マーケットの中で縮んでいく。
〈結城義晴〉