セブン-イレブン「見切りか廃棄か」問題に結論を出す
昨24日の日経平均株価は一時、7155円。
バブル崩壊後の最安値を記録。
朝日新聞一面トップ。
「日米欧」
「株安 じわじわ」
先進国で、ジワリジワリと下がっている。
これは、深刻。
本質の問題、構造の問題だから。
さて、
セブン-イレブンの公正取引委員会調査の見切り問題。
多くの方からご意見をいただいた。
感謝申し上げたい。
私の整理。
まず、この問題は、二つに分けて考える。
第1は、チェーンオペレーションの問題。
第2が、「見切り」という行為の問題。
①
第1のチェーンオペレーションという側面から考えると、
今回の問題は、「個店経営」が第一義ではないことが判明したことになる。
チェーンオペレーションでは、標準化や統制が不可欠。
その標準化と統制の上に立って、個店経営がなされる。
安土敏さんのいう「作演システム」である。
日頃、セブン&アイ・ホールディングスが言っている「個店経営」の本質が、
図らずも、明確になったことになる。
その本部統制に、フランチャイジーの加盟店のうち、
従わない店が出た。
従わない店に、監督者であるスーパーバイザーが指導する。
「本部の指示は、全体最適のためです」
加盟店は反論する。
「いや、自分の店があってこそ、全体だろう」
レギュラーチェーンと呼ばれる直営のチェーンストアならば、
全く問題は起こらない。
これは、最初に書いた。
しかし、フランチャイズチェーンの加盟店は、
独立した資本家である。
だから本来、個店経営ではある。
ただし、それならば、冷たいようだが、
個人の意思をもって、他のチェーンに鞍替えしたらいいと、私は思う。
その自由は保障されている。
もしくは、チェーン全体に向けて、
「見切り」の提案をすべきだろう。
フランチャイズチェーンといえども、
チェーンストアである。
一部の店舗の事情が、
全体の顧客ロイヤルティを侵害すると考えられる場合、
本部は全体を優先する。
チェーンストアの鎖のたとえである。
一番弱い輪の強度が、
鎖全体の強度とイコールになる。
チェーンオペレーションの統制と、
その枠組みの中での個店経営とが、
浮き彫りになった。
だから、極めて面白い事件だった。
しかし公正取引委員会で、「黒」と判定されたら、
これは法律の問題となる。
見守らねばならない。
②
第2の、「見切り」という行為の問題。
なぜ、見切りするのか。
それは、在庫を売り切って、現金化するためだ。
間違いなく経営行為の一つの手段。
その意味では、生鮮食品や惣菜だけでなく、
衣料品でも雑貨でも、見切りはする。
生鮮食品や惣菜は、鮮度劣化したり、消費期限を超えたりすると、
商品価値は著しく低下する。
もしくは皆無になる。
だから商品価値がゼロになる前に、
安い値段をつけて、販売する。
顧客にも、それが店のルールとして、知れ渡っていれば、
顧客との約束を破ることにはなりにくい。
しかし、なぜ見切りする商品が生まれるのか。
それは、売れ数の予測が狂い、
発注が過多になったからだ。
小売業は、最終販売者である。
そのあとの顧客は、商品を転売することはない。
最終販売者ということは、
誰かから買って、誰かに売る。
誰かから買うときに、ミスすると、在庫が残る。
この残った在庫の責任は、誰が取るか。
小売業者である。
本来、仕入れた商品、発注した商品は、
すべて売り切れることが理想である。
その理想主義的な経営をセブン-イレブンは、
一貫して追求している。
だからセブン-イレブン本部が考えるように、
見切りの前提があれは、発注の精度が落ちる。
これは確実だ。
見切りを認めたからといって、
廃棄の数量が減るかというと、それは違う。
ここには、おそらく、
8-2の原則が適用できるだろう。
8割の加盟店は、見切りをうまく活用する。
2割の加盟店は、見切り制度があっても、
廃棄数量は、変わらない、あるいは増えるだろう。
これも推理の域を出るわけではないが、
従って、現在、セブン-イレブンの加盟店の中で、
発注精度が甘く、見切りしなければならない店は、
見切り制度が導入されると、発注はさらに甘くなり、
見切りしても廃棄は出るという矛盾に陥る。
いたちごっこになる可能性が強い。
「見切り」はあくまで行為であり、手段だ。
行為や手段の是非は、
その行為や手段が上手に活用できるか否かによって、
判断される。
野球のバントがいい作戦か悪い手段か。
それ自体の問題は、大きな戦略判断だが、
その前に、バントが上手か下手かの方が問題となる。
ただし、多くの方から指摘があったように、
生鮮品や惣菜の廃棄は、
地球環境問題や食糧問題、人口問題に関連している。
これは、世界の共通認識である。
だからこの問題に反することは、許されない。
損得より先に善悪を考えるべきだ。
セブン-イレブンの惣菜・弁当の「見切りか廃棄か」は、
従って、総量の問題となる。
生鮮や惣菜は腐るし、消費期限がある。
だから廃棄をゼロにすることは不可能だ。
それへの対応策として見切り制度を導入しても、
先の発注の甘い店が、
以前より多量の発注をしてしまったら、廃棄は出る。
すると、環境対応としては、マイナスになる。
しかし、セブン-イレブンが、企業全体として、
チェーン全体として、
現在以上に積極的に、廃棄総量を激減させることを、
第一目的化し、運動化するならば、話は別のことになる。
結論。
第一は、セブン-イレブンが公正な取引に抵触するのか否かの問題。
これは、法廷論争になるかもしれない。
事実がそれを証明する。
第二は、チェーンオペレーションと個店経営の問題。
私は、セブン-イレブン本部に、論議の分はあると思う。
第三は、見切り制度を導入するか否か。
これは、企業独自の方針であり、戦略問題。
セブン-イレブン本部にお任せすべき問題。
そして最後に第四に、環境問題と食糧危機問題。
セブン-イレブンという日本最大規模の小売業には、
積極的に、先導的に、この問題に取り組んでほしい。
これは、私の要望。
商業現代化、商業基幹産業化という大目標のために。
見切り制度を導入すれば、
おそらくセブン-イレブンは、
最もバントが上手なチームになるはずなのだから。
<結城義晴>
2 件のコメント
見切り問題にコメントします。
①フランチャイズチェーンの本質は、渥美 俊一氏によれば、「加盟店は本部のマニュアルを100%と実行してこそ そのチェーンの恩恵を100%享受できる。50%は本部指示、残り50%は我流では、高い加盟料の意味が無い。趣意」
私もその意見に同感です。
②廃棄による環境問題は、日本では食品衛生上の法律問題もありますが、海外では、賞味期限切れの食品をホームレスや生活困窮者に、瑕疵担保を留保する条件付で、無料配布しているところもあるやに聞きます。大量廃棄の問題も知恵を出せば解決策もあるはず。
ご意見感謝。
ボランタリーチェーンは、どちらかといえば、加盟社、加盟店が、自主性をもって、経営に当たります。しかしフランチャイズチェーンは、スーパーバイザーがきちんと指導に当たります。この根本のところを、互いに理解しておかねならないのだと思います。
もう一点、アメリカには「フード・バンク」というシステムがあります。
仰る通りの内容の機能。いわゆる見切り品、廃棄品の寄付行為で、それが税制上、控除の対象となったり、経費として扱われたりします。それを大手のスーパーマーケットなどが活用しています。
日本でも「フードバンク」を称する団体が登場し始めました。
たいへん良いことですが、しかしオーソライズのされ方や活用の次元が、
日米では大きく違います。
この問題は、もっともっと知恵と協力が必要だと思います。