日本の小売業。
7月がひどく悪かったが、
8月は潮流を変えるほど好調だ。
商人舎流通Supernewsで、
チェーンストア各社の8月の実績が発表されている。
セブン&アイ・ホールディングスとイオンは、
さまざまな業態を展開しているので、
日本全体の小売業を見渡すのに適している。
セブン&アイnews|
8月既存店7-11は0.2%減/IY1.8%増・YB3.9%増
㈱セブン‐イレブン・ジャパンは、
既存店売上高が前年同月比99.8%、
客数は99.3%、客単価は100.5%。
このところセブン-イレブンが不調だ。
㈱イトーヨーカ堂の既存店は総売上計が101.8%。
これは館全体のテナントを含めた売上高。
ヨーカ堂自身の商品売上高は99.2%、
客数98.6%、客単価100.6%。
テナント売上高は107.3%と好調。
㈱ヨークベニマルは既存店売上高が103.9%、
客数100.6%、客単価103.2%と好調だった。
こちらは手堅く回復した。
一方、
イオンnews|
8月既存店イオンリテール5.8%増/主要10社前年売上増
主要10社の既存店売上高が前年同月を上回った。
イオンリテール㈱は前年比105.8%。
イオン北海道㈱は101.6%。
イオン九州㈱は105.4%。
イオンのスーパーマーケット事業の既存店売上高。
マックスバリュ東海㈱は105.3%。
㈱フジは既存店売上高が104.4%。
㈱いなげやが106.3%。
いなげやは健闘した。
コンビニ事業ではミニストップ㈱が100.7%。
専門店事業の既存店は、
アパレルの㈱コックスが112.4%、
靴の㈱ジーフットは105.1%。
ワンプライスショップの㈱キャンドゥは106.8%。
イオンは全体に復活基調を取り戻した。
㈱PPIHは109.4%。
このなかでディスカウント事業は111.0%。
スーパーマーケットの既存店実績。
㈱ライフコーポレーションが106.8%、
㈱ヤオコーが107.3%。
㈱ベルクが106.5%、23カ月連続の伸び。
㈱ユニクロはなんと125.3%、
㈱ニトリは107.8%、
㈱良品計画は112.8%増。
ユニクロはドラスティックだ。
皆さんの会社はどうだろう。
さて商人舎ミドルマネジメント研修会。
その2日目。
朝8時15分から30分間、
第1回理解度判定テスト。
初日の講義から5問。
ただし、すべて記述式だから、
回答するのは大変だ。
自分の理解したことを言葉にする。
文章力そのものはあまり重視しない。
もちろんいい文章に越したことはない。
何よりも理解ができているかを評価する。
全員が前かがみになって一生懸命、取り組む。
この姿が本当に好きだ。
2日目の第1講義は結城義晴。
はじめに今、終わったばかりのテストに関して、
回答を確認しつつ、さらに解説を加える。
より理解を深めてもらうためだ。
この講義はいつも好評だ。
私もこの解説が重要だと思っている。
だから30分ほど時間をかける。
復習とはこういうものだ。
本来の講義では、
世界と日本の小売業の、
位置づけと存在意義を語る。
21世紀は小売業の時代だ。
15年前の商人舎発足の会で、
3時間の基調講演をした。
そのタイトルは、
「小売サービス業が日本を救う」
私はそれを固く信じている。
さらにFORTUNE働きがいのある企業ランキング。
ウォルマートが初めて、
上位100社にランクインして98位。
240万人のアソシエーツを抱えるチェーンストアが、
このランキングに入ることは快挙だ。
倉本長治の言葉。
「店は客のためにあり、店員とともに栄える」
柳井正さんとのエピソード、
リッツ・カールトンのクレド、
そしてサム・ウォルトンの10ルール。
第1講義では
「顧客満足と従業員満足」の重要性を強調した。
第2講義は、井坂康志講師。
ものつくり大学教養教育センター教授、
ドラッカー学会共同代表。
ドラッカーと最後に会った日本人。
故・上田惇生先生の愛弟子で、
ドラッカー学会を先生と共に立ち上げた。
上田先生が亡くなられた後を継いで、
この研修会では講義してくれている。
ドラッカー・マネジメントの重要なポイントを、
実に、わかりやすく解説してくれる。
最後は受講生とのQ&A。
真っ先に質問してくれたのは、
㈱マツモトの辻昌幸さん。
㈱平和堂の西浦義尚さん。
㈱関西スーパーマーケットの原田真樹子さん。
それらの質問に、
「ドラッカーだったらこう答えるだろう」
と考えつつ、真摯に応えてくれる井坂講師。
いつものように、とてもいい講義だった。
井坂講師の最新翻訳本『ハーフタイム』
ボブ・ビュフォード 著、東洋経済新報社刊。
ざっと読んだがいい本です。
昼食は酒井幸男さん(右)とご一緒。
日本流通産業㈱人事総務部部長。
研修会に毎回社員の皆さんを派遣してくれる。
酒井さんは1日だけの聴講。
午後は山本恭広講師の「計数の基礎」。
月刊商人舎編集長。
第一人者、白部和孝さんが引退した。
その後を継いで、ご本人の了解を得て、
テキストを踏襲しながら講義する。
基本を説明した後、
設問を設けて、
受講生に実際に解いてもらいながら、
講義を進める。
これも白部さんのスタイルを踏襲している。
30分のコーヒータイムを挟み、
16時から20時までは
結城義晴が担当。
初めに計数についての補足講義。
これも大事にしている。
私は経営数値を語る。
BSとPLの基本。
そしてROAの重要性。
ミドルマネジメントが、
身に着けておかねばならないこと。
フィナンシャルの講義を終えてから、
Managementの本論。
はじめにマネジメント理論の変遷。
賢者は歴史に学ぶ。
英国産業革命後に、
アダム・スミスが初めて分業の概念を世に出した。
ここからマネジメント理論が始まった。
さらにフレデリック・テイラーの科学的管理法、
アンリ・ファヨールの管理過程論の弊害、
そして、人間関係論と行動科学論までを、
一気に解説していく。
そのうえでアンリ・ファヨールへの批判。
ドラッカーもハーバート・サイモンも、
そしてヘンリー・ミンツバーグも、
激烈な批判をしている。
そのファヨールのマネジメントが、
現在も日本の産業を覆っている。
日本のチェーンストアもその隘路に陥っている。
ファヨール理論が「大企業病」を生み出している。
ミドルマネジメント研修会の目的は、
この古いマネジメントから脱却して、
ドラッカーのマネジメントをベースに
チェーンストア経営を進めることにある。
『店長のためのやさしいドラッカー講座』を
ダイジェストしてドラッカーの基本を教授する。
それから責任の組織化、
自己管理による目標管理、
コミュニケーションまで、
肝になる内容を一気呵成に講義。
ドラッカーの考え方に、
私の経験や見聞の多くの事例を肉付けして、
熱を入れて講義する。
この4時間にはいつも力がこもる。
講義が終わると明日、講義してくださる
高野保男講師が夕食時に合流。
情報交換をしながら、
飲んだビールがのどに染み渡った。
2日目の長い長い講義の後に、
夜も更けて、
11時まで会場で復習する受講生たち。
この後も自室に戻って、
勉強は続く。
明日の理解度判定テストのため。
健闘を祈ろう。
〈結城義晴〉