結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2025年02月07日(金曜日)

ニューヨーク初日の対比的なポジショニングと「普通の店」の進化

羽田国際空港から飛び立って
12時間ほどで、
夜が明け始める。
IMG_9016
してジョンFケネディ空港に到着。

ニューヨークはあいにくの雨。
それも氷雨。
IMG_9022

全員無事に入国を済ませ、
現地コーディネーターの
浅野秀二さんと合流。

専用バスでいざ視察へ。
IMG_0516

最初に向かったのは、
ストップ&ショップ。
IMG_0518

ニューヨーク・ニューアーク地区では、
マーケットシェア1位が、
ボランタリーチェーンのショップライトだ。
115店舗16.9%。

ストップ&ショップは2位で、
152店舗・14.0%。IMG_0522

米国のごく一般的なスーパーマーケット。
「コンベンショナル(伝統)型」と呼ばれる。IMG_0526

それでもトレンドの対面売場を設けて、
デリを強化する。
IMG_0527
普通のスーパーマーケットを見ることで、
一つの標準ができる。

そのあとで際立つ特徴の店を訪れる。
するとイノベーションの本質が見えてくる。

しかしその普通の店が進化している。
それは当然のことだ。
どんな店、どんな企業もいつも、
イノベーションを志向しているからだ。

そのなかで本当に優れた企業は、
イノベーションを継続することができる。

イノベーションが止まらない。
それが強い企業、エクセレントな組織なのだ。

ウォルマート。
世界最大の小売業にして、
世界最大の企業。
IMG_9047

そのウォルマートの最強のフォーマット。
スーパーセンター。
衣食住薬のフルライン店舗。
IMG_9051

このエリアに60店舗で10.4%。
コストコに次いでシェア4位。
ニューヨーク市郊外にある超繁盛店。

エブリデーローコストを標榜しながら、
デリ売場には対面販売コーナーを設けて、
顧客サービスを怠らない。
IMG_9058

ロールバックの嵐。
EDLP価格からさらに値引いて販売する。
IMG_9071

バレンタインデープロモーション。
IMG_9066

小雨の中、全員で記念撮影。
IMG_0531

車中でも講義。
ウォルマートのPBを紹介する。
グレートバリューの、
「ツイスト&シャウト」。
NBの「オレオ」の完全コピー商品。
オレオと限りなく同じ味で3割安い。
そこにこの開発の価値がある。
IMG_0534
車内で食べ比べする。

ターゲット。
ウォルマートと同じ業態のライバル。IMG_0536

ウォルマートは食品とハードラインに強い。
ターゲットは衣料のソフトラインに強みをもつ。
IMG_9076

生鮮食品は絞り込んでいる。
IMG_0537

「アウトドアショップ」と名付けられた、
園芸コーナーが新設された。
IMG_9079
ウォルマートのコーポレートカラーが青なら、
タ―ゲットは赤。
IMG_9088 (002)

あらゆることがウォルマートと対極にある。

バレンタインプロモーションも、
センス良い売場づくりで真っ赤。IMG_9080

ウォルマートとターゲットは、
一目で差異がわかる。
市場を二分して棲み分けている。

それがポジショニング競争だ。

ターゲットに隣接して、
リドルが新規出店。
IMG_0555

1週間前にオープンした。
ドイツのトップ小売業、
シュワルツグループのボックスストア。
IMG_9109

アメリカには2017年に進出。
大西洋岸南部を中心に展開。
ニューヨーク州のベストマーケット27店舗を買収。
1月現在183店舗。

導入部は青果売場だ。
IMG_9097

青果に続くベーカリー売場に特徴がある。
焼きたてのインストアベーカリーで、
クロワッサンなど1個49セントで売って、
大人気だ。
IMG_9101

アルディと競うリミテッドアソートメント。
IMG_9103

アルディが1万平方フィートなら、
リドルは2万平方フィート。

アルディが98%PBなのに対して、
リドルは8割くらいがPBで、
ナショナルブランドも多い。

店舗中央の平台には、
ノンフードのポップアップ商品が並ぶ。
売り切れ御免のアイテムだ。
IMG_9104

同じ商業施設の反対側に、
アルディがある。
IMG_9111

地域一番の安さを提供する。IMG_9115 (002)

牛乳売場は後部から補充できる、
リーチインケース。
IMG_9113 (002)

ローコスト店舗なのに電子棚札導入。
リドルの価格変更に素早く対応する。
牛乳1ガロン(3.8ℓ)3.08ドル。
インフレが進む米国で1リットル81円。
購買力平価を考慮して1ドル100円で考えるのがいい。
IMG_9112 (002)

マネジャーにインタビューした。
メイシーから転職してきたが、
待遇はとてもいいとか。

写真はノーグッド。

一気にブルックリンに向かう。
ホールフーズ環境対策店。
IMG_0560

2階に水耕栽培の農場がある。
農産工場で生産した葉物を、
「ゴッサムグリーン」と名付けて販売する。IMG_0564

対面のシーフード売場も、
部門として位置づけられる。
アメリカのスーパーマーケットでは珍しい。
IMG_0577

2階のイートインスペース。
奥にビールバーがある。IMG_0592

上から駐車場を望む。
くるくる回る風力発電、
駐車場の屋根の太陽光発電。
環境店舗ならではの設備満載だ。IMG_0594

ゴッサムグリーンのロゴを配した配送車。IMG_0597

グロサリーピックアップの駐車スペース。 IMG_0600

グリーンのデリバリー車。IMG_0602

ホールフーズを後にしてダンボ地区へ。

ダンボは、
「Down Under Brooklyn Bridge Overpass」の略。

そのブルックリン橋のたもとで、
摩天楼を背景に写真。IMG_0607

ホテルに入って、チェックインすると、
すぐに4班に分かれて、
それぞれステーキハウスへ。

私はスパークスステーキハウスへ。IMG_9123

12名での会食。
ローカルビールで乾杯。
IMG_0613

シュリンプカクテルに始まって、
シーザーサラダ、
そしてロブスター。
IMG_0614

サーロインとヒレのステーキを、
レアとミディアムで味わう。
もちろん赤ワインをお供に。
IMG_0615

最後はニューヨークチーズケーキとコーヒー。
大いに語り合って、よく食べた。

ニューヨークの夜。
地下から噴き出す蒸気。
IMG_9125
長いながい1日が終わる。

それでもニューヨークの小売業は、
さらに進化を遂げていた。

普通の店のストップ&ショップが、
皮肉なことに全体の進化を示していた。
(つづきます)

〈結城義晴〉

 

2025年02月06日(木曜日)

2015年に始まった「OICグループ米国研修」ニューヨークへ出発

朝7時過ぎに、
横浜シティエアーターミナルから、
横浜ベイブリッジへ。
IMG_8959.jpg2

横浜港とみなとみらい。IMG_8962.jpg2

今朝は富士が美しく見えた。IMG_8971.jpg2

月刊商人舎2月号を責了して、
気分も爽快。
IMG_0504

ちょっと渋滞したけれど、
羽田空港。
IMG_8976

国際線は第3ターミナル。
IMG_8978

意外に空いていた。IMG_8980

石破茂首相が今日の午後、
この羽田空港からアメリカに発つ。
ドナルド・トランプ米国大統領との初会談。IMG_8981

私たちはOICグループのニューヨーク研修。

2015年の1月から毎年、
厳冬のニューヨークを訪れる。
2021年と22年はコロナ禍で中止したから、
今年が9回目となる。

毎回180人くらいが参加する。

その間、ロピアは躍進を続け、
OICグループとなった。

急激な成長であっても、
膨張であってはいけない。

そのためには何よりも、
ロピアの思想や哲学が、
全員に貫徹されていなければならない。
揺れてはならない。

急速成長で幹部や社員は、
いろいろな企業から集まってきている。
各自の「本籍地」を大事にしつつ、
OICグループの「現住所」の考え方に、
共鳴・共感してもらわねばならない。

アメリカ研修はそのために行われる。
私がそれを教え、伝える。

今年も4班に分かれて、
同じ思想、同じ考え方で、
アメリカのチェーンストアを学ぶ。

その第一声。
IMG_0506

みんな不安そうだが、
まずは安心してもらう。IMG_0511

ロピアのコーポレートカルチャーを、
もっともっと磨き続ける。

そのために楽しみつつ学んでほしい。IMG_0509

2025年度1・2班の団長は、
柴田昇取締役中部ロピア営業本部長。IMG_0513
柴田さんらしく3つの注意点を、
簡潔に話してくれた。

では、行ってきます。
IMG_8982

私も燃えている。
IMG_8984

チェックインして、JALの桜ラウンジ。
いつものカレーライスとサラダと生ビール。 IMG_8991.jpg2

そしてJAL006便。
エアバスA350-1000。
「お世話になります」
いつも機体に向かってお願いする。IMG_8995

そのビジネスクラスの席。
ゆったりとしていて、
いろいろなものを整理しやすい。
IMG_8996

11時に乗り込んで離陸。
IMG_8997

すぐに眼下に東京湾。
IMG_9006

今日は大東京の街が鮮明に見えた。IMG_9009.jpg2

関東平野一円まで見渡せる気がする。IMG_9011.jpg2

富士は雄大だ。
この姿を眺めていると、
なんの根拠もないけれど、
日本は大丈夫だと思う。
IMG_9014.jpg3
ありがとう。

さてホンダと日産自動車。
12月中旬に経営統合に向けた基本合意書を交わした。
それを破棄する方針が固まったようだ。

持ち株会社方式を基本に協議したが、
統合比率などの条件が折り合わなかった。

自動車会社世界3位グループの誕生。
それはなくなった。

しかし現在のままの統合では、
やはり膨張だったのだろう。

どちらも賢い選択だったと総括されるだろう。
とくにホンダにとって。

成長のためには、
コーポレートカルチャーの、
すみずみまでの浸透が必須なのだ。

では、2週間とちょっとの間、
日本を空けます。

行ってきます。
(つづきます)

〈結城義晴〉

2025年02月05日(水曜日)

商人舎2月号責了と「冷徹な悪意の成功例・善意の動機の失敗例」

北海道、東北、北陸。
歴史的大雪。

山陰や中部、九州、四国にまで、
大雪が降る。

お見舞い申し上げたい。

南関東だけが、
ぽっかりと残った印象。

雪は降らないけれど、
横浜も寒い。

今日は商人舎2月号の責了の日。
1日中、横浜商人舎オフィス。

昼過ぎに最後の原稿を書き終わって、
それから日課のスクワット。
IMG_0483 (002)

毎日同じではつまらない。
大きな手をはめて、
⑴スクワット35回。
⑵スロートレーニング20回。
IMG_0491 (002)

⑶逆スクワット20回。
これは速く立ち上がるスクワット。
IMG_0481 (002)
あとは、ひたすら校正。

全部終わって責了。

ありがとう。
今月号もデザイナーの力に助けられた。
七海真理さん、玉川昭子さん。

右が山本恭広編集長、
左が編集スタッフの鈴木綾子さん。
IMG_0502 (002)

[緊急特別企画]
西友はどうなる?!

商業経営問題研究会の座談会を、
まとめました。

楽しみにしてください。

もちろん実務特集は、
いい出来栄えとなりました。

2月10日を待ってください。

さてまたまた、
ドナルド・トランプ大統領。

パレスチナ自治区ガザに対して、
「米国が引き継ぎ、所有する」と言い出した。

ホワイトハウスで、
イスラエルのネタニヤフ首相と会談。
そのあとの共同記者会見で発言。

世界のメジャーなマスメディアは、
世界の首脳たちの一斉のブーイングを伝える。

国際法違反であることは明らかだ。

しかしこれもネタニヤフへのリップサービスか?

昨日のこのブログへのコメント投稿。
毎日、吉本一夫さんが書き込んでくださる。

「トランプは、
徹底した功利主義者だと思います」

「ただ、『よく誤解されるが、
功利主義の本質は実はWin-Winにある』と、
どこかで読みました。
トランプも、品がないだけで、
本質はそうだと信じたいです。
例えば、戦争は損だと、
トランプは思っていると思います」

私の返信。
「吉本さん、そこんところは同感です」

そして引用。
塩野七生『ローマ人の物語11』
「終わりの始まり」から。
91s83sOBnuL._SL1500_

「もしかしたら人類の歴史は、
悪意とも言える冷徹さで実行した場合の成功例と
善意あふれる動機ではじめられたことの失敗例で
おおかた埋まっている、
と言ってもよいかもしれない」

吉本さんが言っているのは、
トランプの「悪意とも言える冷徹さ」か。

「歴史に親しめば親しむほど
メランコリーになるのも、
人間性の現実から眼をそむけないかぎりは
やむをえないと思ったりもする」

人間性の現実を見つめると、
「冷徹な悪意が成功例を生み、
善意あふれる動機が失敗例をつくる」

憂鬱なことだが、
それが政治の歴史でもある。

塩野七生のこんなところが大好きだ。

塩野さんは、
マキアヴェッリのそういったところを、
高く評価した。

そして書いた。
『わが友マキアヴェッリ』
614HNXaS6ZL._AC_SL1200_

この本は実に面白い。
ずいぶん前に、出版されてすぐに読んだが、
ほんとうに勉強になった。

最後に商人舎流通SuperNews。

三越伊勢丹news|
第3Q売上高4175億円3.9%増・経常利益49%の大幅増

㈱三越伊勢丹ホールディングス。
2025年3月期第3四半期連結決算。

売上高が4175億円(前期比3.9%増)、
営業利益599億円(46.4%増)、
経常利益660億円(46.8%増)。
増収・大幅増益。

営業利益率は14.4%、
経常利益率は15.8%。

日本国内の免税売上高は、
過去最高額を更新。

首都圏の都心店舗だけではない。
地域店舗においても前年実績を大きく上回った。

百貨店はインバウンドによって蘇った。
百貨店にとって円安は追い風だ。

海外ではタイのバンコク中心部で、
「MITSUKOSHI DEPACHIKA」がオープンしている。
mitsukoshiisetan_depachika0

日本的なものが世界的に評価される。
それは実に有難いし、誇らしい。

政治は「悪意もあり」のようだが、
商売は本質的に「善意」によって成り立つ。

だから私は商売が好きだ。

〈結城義晴〉

2025年02月04日(火曜日)

「米国の世紀の終わり」と「耳は大なるべく 口は小なるべし」

立春が過ぎても、
寒さは続く。

北極方面から寒波が、
対をなして二方向へ流れ込んでいる。

一方はカナダ東部方面へ、
そしてアメリカ北部へ。

もう一方がユーラシア大陸から、
日本列島へ。

私は今週木曜日からニューヨークに出張する。
16日間。

最低気温はずっと氷点下だ。
思いやられる。

しかし冬のニューヨークは、
いつもこんなもの。

覚悟はできている。

さてそのアメリカ。

日経新聞の経済欄エッセイ「大機小機」
「米国の世紀の終わり」
コラムニストは与次郎さん。

この欄は学者・ジャーナリストなどが、
匿名で書いているから、
ズバリと指摘する。

今回も納得できる。

1月20日、米国の第47代大統領に、
ドナルド・トランプが就任。

「米国の黄金時代が今始まる」と宣言した。

アメリカの1人当たりのGDPは、
1899年にイギリスを抜いた。

19世紀に大英帝国が世界に君臨した。
それに代わって米国が世界1位の経済大国となった。

しかしアメリカも、
「直ちに国際政治の表舞台に躍り出たわけではない」

2つの大戦に挟まれた1930年代、
世界は大恐慌に陥った。

経済学者キンドルバーガーは指摘した。
大恐慌の理由の一つは、
「経済大国となった米国が国際政治において、
しかるべきリーダーシップを
発揮しなかったからだ」

「しかし第2次世界大戦の終結時、
米国は自他共に認める国際社会の
リーダーとなっていた」

第2次大戦末期の1944年。
米国の避暑地ブレトンウッズで会議が開かれた。

イギリスは経済学者ケインズが率いていた。
9784296113576
アメリカはこのケインズとともに、
関税を下げて自由貿易を推進する、
戦後のレジームを提唱した。

「ブレトンウッズ体制」である。

大恐慌の30年代に各国は、
自国産業を守るため高い関税を課し、
結果として世界貿易を縮小させて
対立の時代を招いた。

それへの反省があった。

「米国はこうした理念を実現すべく、
リーダーとしての役割を果たした」

ケネディ大統領が提唱して、
関税貿易一般協定(GATT)の交渉で、
各国の利害を調整して関税の引き下げを実現させた。
「ケネディ・ラウンド」と呼ばれる。
91YTD1ZlcPL._SL1500_
これが大戦後の自由貿易体制の成果だった。

その後、米国は変容し、
日米貿易摩擦も起こした。

それでも、世界貿易機関(WTO)が、
十分には機能しないなかで、
地域的な貿易協定を進めるなど
自由貿易の旗を降ろさなかった。

しかし2期目のトランプ大統領の再登板で、
「自由で開かれた世界」のリーダーであった、
米国の時代は終焉した。

米国第一主義を唱えるトランプが、
最も重視する手段は関税だ。
「国際社会は一気に、
100年ほど前に戻ることになる」

そう、100年前に後退する。

国際政治学者ジョセフ・ナイ。
「米国の強さは経済力だけでなく、
『ソフトパワー』によって支えられている」
81G+ymNdpjL._SL1500_
コラムニスト。
「確かに、かつての米国には
そうした無形の魅力があった。
だから各国は『米国の世紀』を受け入れたのだ」

しかし、突然。
グリーンランドは自国のものであるべきだなどと、
米国大統領が公言する。

この不躾(ぶしつけ)に、
世界は眉をひそめた。

コラムニスト。
「こうして、米国は、
ソフトパワーも失うことになった」

「内向き」になろうとするアメリカは、
どう変わっていくのか。

もちろん米国チェーンストアの先進性は、
すぐに失われるものではない。
私たちはそれを実感しに行く。

大統領選挙のあと、
若いアメリカ人が言っていた。
「われわれの政治は、
スポーツのようなものだ」

勝ったり負けたりのスポーツか。
そんな軽いものなのか。

わかる気はする。

しかし「米国の世紀の終わり」が、
世界を変えることは確かだ。

朝日新聞「折々のことば」
第3333回。

耳は大なるべく
口は小なるべし
(ことわざ)

「情報は広範囲から得るのがよいが、
それを人に語るのは控えめにしたほうがいい」

ことわざとドラルド・トランプは正反対だ。

『新明解故事ことわざ辞典』から。
61oryiqOppL._SL1000_

くわえて「耳の楽しむ時は慎むべし」
(甘いことを言われるとつい判断を誤るから、
何事も慎重に)

サム・ウォルトンのことば。
Keep your ear to the ground!
〈地に耳をつけよ〉
201609010_sam-walton

ウォルマートはずっと、
そうあってほしいと思う。

〈結城義晴〉

2025年02月03日(月曜日)

立春の「愚の上の愚」とヨーク・ホールディングスの「売却先」

Everyone, Good Monday!
[2025vol⑤]
2025年第6週。

立春。

それなのに横浜は寒い。

何事もなくて春たつあしたかな
〈井上士朗〉

「あした」は「朝」のこと。
何事もなく立春をむかえる朝である。

それもいい。

もう一句は、小林一茶。
還暦の年に詠んだ。
春立つや愚の上に又愚にかへる

立春は旧暦の正月に近い。
新しい年が来た。

一茶は愚の上にまた愚にかえる。
自虐的なようでいて、
達観したようでもある。

私は今日も横浜商人舎オフィス。
一日中、原稿に手を入れ、
あるいは自分で書く。

そして入稿。

じっと座ってばかりはいけないので、
例によってスクワット。IMG_0462 (002)
⑴深くゆっくりしゃがむスクワット35回。

⑵スロートレーニング20回。
深く、しっかりしゃがんで、
そこからゆっくり立ち上がってきて、
完全に立ち上がりきらずに、
またしゃがむ。

⑶しゃがんでから速く立つスクワット10回。

ああ、しんどい。
IMG_0466 (002)
れでも毎日3セットずつやっているので、
慣れてきて、楽しくなる。

さて日経新聞電子版。
「イトーヨーカ堂など売却交渉、
ヒューリックがKKRと連携」

㈱セブン&アイ・ホールディングス傘下の、
㈱ヨーク・ホールディングス。

イトーヨーカ堂、ヨークベニマルを中心に、
セブン&アイ・フードシステムズ、ロフト、
赤ちゃん本舗など31社。

2月末に売却の方針が出ているが、
米国投資ファンドのKKRが、
不動産会社のヒューリックと組んで、
買収提案をしたらしい。

KKRは西友の85%をもつ筆頭株主だが、
その西友株を売りに出して、
その売却益でヨークを買うようだ。

ヒューリックは、
ディベロッパー系の不動産会社として、
日本で6番目の規模の企業だ。
旧富士銀行(現みずほ銀行)系の不動産会社。

日経の情報網に入った。

ほかにはベインキャピタルと、
日本産業パートナーズが手を挙げている。
前者は米国投資ファンド、
後者は日本の投資ファンド。

昨年の1次入札を通過した3社が、
1月末までに応札した。

セブン&アイは各社の正式提案をもとに、
春までに1社に優先交渉権を与える予定。

いずれにしても投資ファンドが、
ヨーク・ホールディングスを買おうとしている。

嫌な気分だ。

会社は誰のためにあるのか?
e47ba97752ecfefdbbb456efa99a0883

いつも書くけれど、
イトーヨーカ堂やヨークベニマルの幹部・社員は、
どんな気持ちなのだろう。

イトーヨーカ堂は業績不振だが、
ヨークベニマルは問題はない。

ただセブン&アイの子会社になってしまった。
それだけで勝手に売り買いの対象にされている。

ドナルド・トランプ大統領が、
さまざまな大統領令に署名して、
カナダ・メキシコ・中国などの関税を上げる。

カナダ・メキシコは25%、
中国は10%の追加関税を課す。

アメリカ自身を加えて、
関係する4カ国でGDPが目減りする。
年間90兆円規模。

そのうち半分は米国自身が負う可能性がある。
これも日経の記事だが、
世界経済に波乱が巻き起こる。

それが日本の株価まで下げている。

ファンドにとって、
会社という商品を買いやすい状況が生まれる。

それも大いに迷惑だ。

一方で、西友の売却期限も迫っている。

何事もない立春ではなくて、
愚の上に愚にかえる立春である。

それでもわれわれはいつも、
顧客を向いて仕事をしたい。

ちいさな喜び、つくります。
ささやかな幸せ、ご提供。
あすへの希望、つむぎます。

では、みなさん、今週も、
あすへの希望を。

Good Monday!

〈結城義晴〉

2025年02月02日(日曜日)

節分「恵方巻・手巻き寿司」と藤井聡太「神の手」/原稿用紙の「効用」

2025節分。
明日は立春。

今年は2月2日のゾロ目の日曜日となった。

けれど今冬一番の寒気が、
日本列島に南下してきた。

ライフ中原井田店。

鮮魚売場は手巻き寿司セットを売り込んだ。
円形のトレーは1380円。
IMG_8924 (002)

四角い大型トレーは1680円。IMG_0455 (002)

惣菜売場は寿司コーナーを2倍に広げた。
そして平ケースは恵方巻。
1本ものとハーフを半々くらい。

恵方巻と手巻き寿司。
徹底して売り込んだ。

今日は朝から、
第50回将棋棋王戦。
その第一局。
img_3ee56e41355f5f35892455ab7056c7be487791
藤井聡太棋王に増田康宏八段が挑む。
持ち時間それぞれ4時間の1日制の対局。
5番勝負の第一戦。

ときどきパソコンとスマホで、
AbemaTVを開いて観戦。

手が進むたびに覗いた。

藤井棋王は22歳。
現在、タイトル七冠。

2023年に史上初の全八冠独占。

叡王のタイトルだけ、
同年の伊藤匠に奪われて、
今、七冠。

棋王戦は2022年度に、
当時の渡辺明棋王に挑戦。
3勝1敗で破ってタイトル奪取。
今期は3連覇に挑む。

増田八段は27歳。

「藤井が西の天才、増田は東の天才」
そう呼ばれたこともある。

東京都昭島市出身。

2024年度に順位戦のA級にランクイン。

棋王戦参戦10期目となる今期、
タイトル初挑戦を決めた。

注目の一戦だ。
.棋王戦

角換わり相腰掛銀の戦型。
増田が新工夫を見せて、
中盤までリードした。
IMG_8919 (002)

しかし終盤、増田にわずかに緩い手が出ると、
藤井が逆転して一気に優勢に持ち込む。
そしてそのまま藤井曲線で勝利。
IMG_8922 (002)
読みの深さが他を圧している。

今、藤井聡太と同時代に生きている。
大谷翔平とも井上尚弥とも。

それは幸せなことなのだと思う。

さて1日中、とびとび将棋観戦。

一歩も外に出ず、
原稿執筆に勤しんだ。

日経新聞夕刊「あすへの話題」
作家の荻原浩さんの1月30日のエッセイ。
「原稿用紙、1枚2枚」 

「昔の文豪のポートレートでは
万年筆を手に
原稿用紙に向かっている姿を
よく目にするが、
私は文豪ではないし、
いちおう昔の人というほどでもないので、
原稿はパソコンで書いている」

私も。

「ほとんどの小説家が
キーボードを叩いて文章を書いているのに、
小説の世界では、なぜか、
文字の分量を表す単位は、
いまだに原稿用紙換算だ」

原稿料の支払いも。

「20字×20行の400文字が1枚で、
何枚を書くとか、書いたとか、
というやり取りをするのが、普通」

私も自分の名前の入った商人舎の原稿用紙に、
何枚書いた、とやっていた。
IMG_8929 (002)

「著者渾身の大作、1200枚!!」
「一挙150枚掲載」

このときの「枚」は原稿用紙の1枚2枚。

萩原さん。
「新聞の連載小説は、1日分が原稿用紙2枚半弱。
週刊誌連載は経験上は毎週15~17枚。
月刊小説誌の場合、50~60枚をメドにしている」

「こういう枚数って、書きはじめる時には、
『○枚かあ。ずいぶん多いな』
と思うのだが、書き進めるうちに、
なぜか毎回、文字数がオーバーしそうになるのだ」

「このコラムも気づけば、
ああ、残り1行。また来週」

このエッセイ。
ネタがないときの常道。

いわゆる原稿用紙ネタ。

わかる‼

私は今「何枚」を卒業した。

「何文字」

ブログは今年の初めに、
1000字から1500字と宣言した。
2000字を超えることもある。

1000字は原稿用紙2枚半。
やはり短い。

1500字は3枚と4分の3。
2000字は5枚。

雑誌に書くときは、
4ページで5000字くらい。
原稿用紙にすると12枚ちょっと。

いい具合だ。

以前は1本1万字くらいだった。
原稿用紙で25枚。
雑誌原稿では大作だ。

思い返せば、
立教大学院で指導した院生の修士論文が、
最少で4万字だった。

結城ゼミでは、
10万字を書き連ねた豪の者がいた。
そのころから私も「原稿用紙何枚」を卒業した。

20代から30代のころは、
原稿1枚について会社から500円が支給された。
毎月100枚書けば5万円だった。

私は少なくとも年間に1000枚以上は書いた。

原稿料が欲しかったわけではない。
取材したり座談会を開いたりして、
それを原稿にして雑誌に載せたら、
自然にそうなった。

万年筆かボールペンテルで、
筆圧強く、原稿用紙に書き込んでいく。

中指にペン蛸ができた。

1時間に4、5枚。
2時間で8枚から10枚。
3時間で1本。

そんなペース。

原稿書きの仕事は、
本来、出来栄え管理なのだが、
原稿用紙に書いていくと、
出来高管理の気分になる。

それはそれで、
「やったー」「書いたー」の心持ちになって、
いいもんだった。

原稿用紙には効用がある。

出来栄えという「質」の仕事と、
出来高という「量」の仕事。

「量と質」には、
単純には言い表せない、
不思議な関係があるのだ。

〈結城義晴〉

2025年02月01日(土曜日)

「正答」という値札は豆の中に埋まっていていい。

2月1日。

如月や値札ふかぶか豆の中
〈中村草田男〉

節分の豆の販売だろうか。
量り売りなのだろう。
値札が深々と豆の中に埋まっている。

もう一句。
約束はひかへ目にして如月は
〈稲畑汀子〉

2月の約束は控えめに。

私は2月6日(木)からニューヨーク。
帰国は21日(金)。

だから約束も控えめだ。

その前に月刊商人舎2月号を仕上げる。
だから今日も出社して原稿執筆。

今月は現場の問題に取り組んだ。
なかなかいい特集になってきている。

いつもいつもモノづくりには、
「これでいい」という限界はない。

「もっともっと」と上を目指す。
時間はいくらあっても足りない。

夜食はパスタハウス。

大いに満足。
IMG_8915 (002)

疲れも癒される。
IMG_0454 (002)

朝日新聞「折々のことば」
第3325回。

真理はひとつ、これだ、と言って
自分の中にあるものを示す説き方に、
私はうたがいをもつ。
〈鶴見俊輔〉
173849

鶴見俊輔は、
1922年(大正11年)生まれ。
ダイエーの中内さんと同じ年。

リベラルな立場で論壇を牽引した。
2015年に93歳で亡くなったが、
そんなに長生きだったのかと思ったりする。

「生徒が誤った答えをした時、
間違いを指摘し、
唯一の正答へ導こうとする教師と、
そこに『別の問題への芽ばえ』を感じ、
問いの別の途(みち)を
ともに歩もうとする教師がいる」

「問いはいろいろな形に成長し、
枝分かれしてゆくもの」

「真理を囲い込まずに、
間違いをどう活かすか考えるほうが
望ましい」

『教育再定義への試み』から。
51zrBmdZjBL._SL1404_
同感だ。

とくに仕事や商売の場合、
「唯一の正答」などない。

「問いはいろいろな形に成長し、
枝分かれしていく」

だから私は、
「チェーンストアはこうでなければならない」
という言説に疑いをもつ。

メーカーはこうでなければならん。
商社は、問屋はこうあるべきだ。

そんなことにも疑いをもつのがいい。

もちろんそれらは、
仕事の「原理原則」を、
無視してよいということではない。

「真理」を囲い込んではならない。

そしてこの「疑い」をもつところから、
ポジショニング戦略が生まれてくる。
ポジショニングは様々でいい。

「それぞれのドラッカー」でよろしい。

意外かと思われるかもしれないが、
鶴見さんは漫画「がきデカ」を評価した。
gakideka_cover01
「『がきデカ』の主人公は、
ムキダシの欲望であばれ回る少年です」

「自分の欲望に従って生きようという
がきデカが増えたことが
ファシズムの防波堤になる、と思う」

「簡単に、命令一下の体制に
追い込むわけにはいかないですよ」

1994年には、
コンビニエンスストアも認めた。
セブン-イレブンは1万3923店だった。

「私はコンビニに期待する。
単なる消費者民主主義というが、
たいしたもんです」

セブン-イレブンに限らず、
チェーンストアは言葉そのままに、
消費者民主主義でなければならない。

これにも同感だ。

「真理」や「正答」という値札は、
豆のなかに埋(うず)まっていて、いい。

2月も私はそう考えていたい。
そういう原稿を書き続けたい。

〈結城義晴〉

「月刊商人舎」購読者専用サイト
月刊商人舎 今月号
流通スーパーニュース
月刊商人舎magazine Facebook

ウレコン

今月の標語
商人舎インフォメーション
商人舎スペシャルメンバー
商人舎発起人

東北関東大震災へのメッセージ

ミドルマネジメント研修会
海外視察研修会
商人舎の新刊
前略お店さま

チェーンストア産業ビジョン

結城義晴・著


コロナは時間を早める

結城義晴・著


流通RE戦略―EC時代の店舗と売場を科学する

鈴木哲男・著

結城義晴の著書の紹介

新装版 出来‼︎

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》

新装版 店長のためのやさしい《ドラッカー講座》
(イーストプレス刊)

新着ブログ
毎日更新宣言カレンダー
2025年4月
« 3月  
 12345
6789101112
13141516171819
20212223242526
27282930 
指定月の記事を読む
毎日更新宣言カテゴリー
毎日更新宣言最新記事
毎日更新宣言最新コメント
知識商人のためのリンク集

掲載の記事・写真・動画等の無断転載を禁じます。商人舎サイトについて
Copyright © 2008- Shoninsha Co., Ltd. All rights reserved.