結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2024年06月09日(日曜日)

孔子とソクラテス・論語と弁明・公益と私益

昨日8日(土)、九州南部が梅雨入り。
今日の9日(日)には四国が梅雨入り。

その影響でその影響で、
関東地方も天気がすぐれない。

「論語」に縁のある一日だった。

日経新聞「風見鶏」
「渋沢栄一になるためには」
高橋哲史編集委員が書く。

7月から新しい1万円札の顔となる渋沢栄一。
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渋沢は明治以降に、
500社近い企業の設立にかかわった。

「論語と算盤」をうたい文句に、
孔子の教えを日本の資本主義に
植えつけようとした。
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根っこにあったのが、
「道徳経済合一説」

「金もうけは決して悪いことではない。
ただ、自分だけがもうかればいい
という振る舞いでは、
いずれ必ず行き詰まる」

「では、どうすべきか。
大事なのはもうけを社会のために生かす、
すなわち『私益』と『公益』を
両立させる発想だ」

「渋沢はそれができてはじめて、
国全体が豊かになると考えた」

新自由主義は、
1980年代に米英から世界に広がった。
渋沢が理想とした資本主義とは異なる。

「弱肉強食の競争で一部の人に富が集まり、
世界で分断が加速した」

「公益より私益を優先する風潮が
強まったのは否めない」

ここで岸田文雄首相。
2021年9月の自民党総裁選で公約した。
「新自由主義的な政策を転換する」

そして目標に掲げたのが、
「新しい資本主義」の実現。

高橋編集委員。
「意識したのは渋沢の思想だろう」

あら、そうだったのか。

「それに共鳴する議員連盟の会長を務め、
政権発足後は
『富める者と富まざる者、
持てる者と持たざる者の分断』を防ぐと、
内閣の基本方針に明記した」

6月から始まった首相肝煎りの定額減税。

首相が繰り返すのは、
「税収増を国民に還元する」

「国に入ってきた税金が余ったから、
国民に分配する」

「それは渋沢が唱えた公益にかなうものだと
主張したいにちがいない」

そうなのか?

だが実態は公益というより、
「選挙目当ての私益を追求する減税ではないか。
国民の多くは見透かしている」

首相こそ本当に論語を学ばねばならぬ。

「子の曰(のたま)わく、
政を為すに徳を以てすれば、
(たと)えば北辰(ほくしん)の其の所に居て、
衆星(しゅうせい)のこれに共するがごとし」

「北辰」は北極星、例えば内閣総理大臣。
「衆星」はまわりの多くの星、例えば国民。

政治を行う時に道徳によっていれば、
まるで北極星がその天の頂点にあって、
まわりの多くの星が、
その周辺を正しく巡るようになるだろう。

選挙目当ての私益は、
徳とはかけ離れたものだ。

だから国民に見透かされている。

ほぼ日の糸井重里さんも最近、
論語に凝っている。

今日も論語の考察。

たくさんの解説書やら研究書、啓蒙書がある。
「そりゃそうだ、もともと『論語』そのものが
孔子の言ったことを解釈したり、
孔子に質問しているという内容なのだから、
すでに『論語』自体が
『研究』のはじまりの書だよね」

そう、論語は孔子の言ったことを、
弟子たちがまとめたものだ。

ソクラテスも語っただけ。
弟子のプラトンが『弁明』などを、
対話編として書いた。
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さらにディオゲネスが『列伝』に残した。

孔子とソクラテス。
不思議に似ている。

弟子たちが残した孔子の『論語』には、
さらに2500年もの間に、
たくさんの人たちの研究が積み重ねられた。

だから膨大だ。

ソクラテスも同じ。

そこで糸井さん。
「最初は渋沢栄一の書いた
『論語の読み方』という本を、
ちょっと距離をおいて
読んだりしていたんだ」
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「他の学者や研究者や作家たちとちがって、
渋沢栄一は実業の人、つまりは
実利を重んじる人だからね」

「『論語と算盤』という本も書いているくらいで、
「自らを利するために
『論語』を使っていると想像してた」

「ところが、あるとき、気づいたんだよね。
渋沢栄一だけが『論語』を
『使っている』のだけれど、
他の人たちは『研究』しているんだなと、ね」

ここからが糸井流。
「もともと孔子は、
『わたしの言うことを研究しろ』と
言っていたわけじゃなかったはずだ」

「『使ってもらえる』ことを望んでいたと思うし、
わたしの考えは『使える』ものだという自負もあった」

「だとしたら、さんざん
『論語』を使って生きて、
使うものとしての『論語』を
語っている渋沢栄一こそ、
『論語の読み方』を書くには
最も相応しいのではないか」

「わたくしも、
そう思うようになったのであります」

その通り。
さすが糸井さん。

渋沢自身、
『論語と算盤』の中で言っている。
「学問と社会とはそれほど
大きな違いのあるものではない」

研究の「論語」は学問。
使う「論語」は社会。

「あたかも地図を見るときと、
実際に歩くときとのようなものだ」

「地図を開いて見れば、
世界も一眼で見渡せる。
一国一地方は近くにあるように見える」

「しかし詳細な地図をもってしても、
実際と比較してみると、
予想外のことが多い」

「それを深く考えず、わかった気になって
実地に踏み出してみると、
茫漠としておおいに迷う」

地図を上手に使って、
実地に踏み出し、
「公益=私益」を果たした。

それが渋沢栄一だ。

小売業も商売も、
渋沢栄一に倣うべきだ。

1万円札を手にするたびに、
そのことを思って感謝しよう。

首相肝煎りの定額減税は、
公益ではない。

国民の税金を使った私益だ。

〈結城義晴〉

2024年06月08日(土曜日)

インフレだけがイノベーションを促進するのか?

日経新聞経済コラム「大機小機」
新聞社の人間ではなく、
学者、経営者、ジャーナリストなど、
知見をもった人たちが書く。

最近はなぜか、
このブログで取り上げる機会が減った。

いつも読んでいるけれど、
私自身の関心がこのコラムから離れている。

日本の株価が絶好調だから、
コラムを書く識者の意識が、
いつの間にか金融経済に寄っているのだろう。
私の目は実体経済に向いている。
だからどうも縁遠くなった。

しかしコラムニストの与次郎さん。
鹿児島出身なのかもしれないが、
「インフレは革新の友なのか」

「2%を超える物価上昇が
2年あまり続く現実を前にしても、
日本銀行は目標とする2%のインフレが
『持続的・安定的』なものであるか、
なお見極める必要があると言う」

「安定的な2%インフレは
それほどまでに希求する価値が
あるものなのだろうか」

同感だ。

2%のどこに根拠があるのだろう。

コラムニストは最近の論調を批判する。
「インフレのメリットを説く新説がある」

「インフレは、
イノベーション(革新)を促進する。
逆にデフレは、
イノベーションを阻害する」

そうか? と私も思う。

「日本経済にとって
最大の課題が生産性の向上で、
それをもたらすのは
イノベーションであることは、
今やコンセンサスと言ってもよい」

アベノミクスでは、
この点が欠落していた。

浜田宏一東京大学名誉教授、88歳。
イェール大学名誉教授。
元内閣官房参与だが、
面白い発言をしている。
「アベノミクスの三本の矢を
大学の通知表にならって採点すると
金融緩和はAプラス、財政政策はB、
成長戦略の第三の矢はE」

つまり「ABE」

与次郎さん。
「そうした観点からも
安定的なインフレを実現することが
重要であるというわけだ」

しかし、経済学者ヨーゼフ・シュンペーター。
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「イノベーション」というコンセプトの生みの親。

シュンペーターは、
「それがどこまでも『ミクロ』であることを
力説してやまなかった」

「インフレ・デフレは『マクロ』の現象である」

「イノベーターは
自らが携わる事業の個別の問題を解決し、
夢を実現するために
イノベーションを行うのであって、
一般的な物価の動向は
二義的な役割しかもたない」

ピーター・ドラッカーも言う。
「マーケティングとイノベーションだけが
企業に成果をもたらす」

これもミクロの現象を起こすことだ。

「GAFAM」は情報化時代をけん引する。
Google、Apple、facebook、Amazon、Microsoft。

「その時価総額は2015年から24年まで
10年弱で6倍ほどになったが、
この間の米国の物価上昇は
累積で約32%にとどまる」

「ケタが違う」

「インフレが、
イノベーションを促進したわけではない」

「逆にイノベーションの敵とされるデフレの下で、
イノベーションの事例はいくらでもある」

ケーススタディの最初は産業革命。
「例えば19世紀の前半、
最先進国の英国では緩慢な物価の下落が続いたが、
スティーブンソンによる鉄道の実用化、
蒸気船と運河の発達など
イノベーションは減退しなかった」

「デフレの下で大英帝国は築かれたのである」

次の事例は大恐慌のころ。
「1930年代、実体経済が
壊滅的な打撃を受けた大不況下の米国ですら、
人々の娯楽が限られる中で
ディズニー映画が生まれ、
家に閉じこもりがちな人々のニーズに応え
FMラジオが開発された」

「ここ数年、コロナ禍の下で
オンライン事業が定着した」

ウォルマートはコロナ禍中に、
オムニチャネルリテーラーに蛻変した。

「イノベーターは
物価動向とは異なる社会のニーズを感じとり、
それぞれの夢を実現した」

「一見ふに落ちそうだが、
インフレがイノベーションを促進し、
デフレがそれを阻害するという議論は
誤りである」

与次郎さんは、
断言した。

気持ちいい。

インフレもデフレも、
社会や消費生活にギャップを生む。

そのギャップを埋めるために、
イノベーションが起こる。

1930年の大恐慌の時に、
マイケル・カレンによって、
スーパーマーケットが発明された。
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1978年のイラン革命から、
第2次オイルショックが始まった。
この後のデフレ効果と引締め政策によって、
アメリカは急角度の景気後退に突入した。

その最中の1980年にサム・ウォルトンは、
エブリデーロープライスの実験を始めた。
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小売業のイノベーションは、
デフレや景気後退のときに起こる。

インフレだけが革新の友ではない。
デフレもイノベーションを起こすのだ。

〈結城義晴〉

2024年06月07日(金曜日)

ボランタリーチェーンとフランチャイズチェーンのこと

一つのセミナーが終わると、
肩の荷が下りる。

第22回商人舎ミドルマネジメント研修会。
お陰様で無事、終了しました。

受講生の皆さん、
課題レポートに全力を尽くしてください。

商人舎オフィスに出ると、
「セルコレポート」が届いていた。

私は毎月、連載を書いている。
「艱難は商人を鍛える」
その第26回。
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第1回はクラレンス・サンダース。
そう、セルフサービスの発明者。

第2回は中内功。
ダイエー創業者。

第3回はサム・ウォルトン。
ウォルマート創業者。

それぞれに艱難に遭い、
そこから希望を掴みとった。

2年間、さまざまな偉大な商人に関して、
その艱難の物語を書いてきて、
「お前にはそれはないのか」と問われそう。
そこで自分のことを書き始めた。
2回のつもりが3回目となった。

それが今回。
「結城義晴、首を言い渡される。」IMG_4879 (002)
ご愛読のほど、お願いします。

さて、昨日の6月6日(木)。
日本ボランタリーチェーン協会第58回総会。
上野・東天紅3階の鳳凰の間。vc_1
山本恭広編集長が参加した。

賛助会員とメディアは、
総会に続く全国大会から参加。
200名弱が集まった。

第一部は記念講演。
講師は坂本崇博さん。
コクヨ㈱働き方改革P.Jアドバイザー。vc_2

コクヨ社内の働き方を改革した。
そのうえで大手企業や自治体で、
業務生産性向上を手伝う。
コンサルティング事業を立ち上げる。

働き方改革に必要な、
組織と個人の在り方を語った。

続いて第二部の懇親会。
同じ鳳凰の間。
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会の冒頭、井原實会長のあいさつ。
協同組合セルコチェーン理事長。
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昨年、新会長として就任した。
以来、会員獲得を始めとした、
協会事業の改革を進めている。
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隔月刊「ボランタリーチェーン」を刷新した。
さらに会員同士の交流を活発に行った。
コミュニケーションの改革に力を入れている。

続いて来賓祝辞。
自由民主党の甘利明衆議院議員は、
第一部であいさつを終えていたので、
小泉進次郎衆議院議員が登壇。
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小泉さんもいまや2人の子どもの父親だ。
だからスーパーマーケットが、
より身近な存在になった。
今の菓子売場が魅力的で、
子どもの目をそらすのが大変だとか。

乾杯の音頭は、
中小企業基盤整備機構の宮川正理事長。vc_miyakawa

昭和37年、1962年。
林周二著『流通革命』が世に出た。
流通革命

あまり知られていないが、
この年に倉本長治は、
『チェーンストアへの道』を上梓した。

私の『チェーンストア』は、
これらの本を下敷きにしている。
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そして倉本は、
はじめのころのチェーンストアを、
ボランタリーチェーンととらえていた。

実際にこの協会設立に当たって、
倉本は側面から支援した。

私が指摘したチェーンストア1.0は、
業種チェーンストアだった。

資生堂チェーン、日立チェーンストール、
松下電工のナショナルチェーン。

これらはメーカー主導のボランタリーチェーンだった。

チェーンストアの種類は3つに分けられる。
資本形態による分類だ。
第1はレギュラーチェーン。
単独資本で展開される経営形態。

第2はボランタリーチェーン。

「異なる経営主体同士が結合して、
販売機能を多数の店舗において展開すると同時に、
情報等を本部に集中することによって
組織の統合を図り、強力な管理のもとで、
仕入れ・販売等に関する戦略が
集中的にプログラム化される仕組みとその運営」
日本ボランタリーチェーン協会の定義だ。

第3がフランチャイズチェーン。
これも日本フランチャイズチェーン協会が定義している。
「事業者(フランチャイザー)が
他の事業者(フランチャイジー)との間に契約を結び、
自己の商標、サービスマーク、トレードネームその他
営業の対象となる商標および経営のノウハウを用いて、
同一のイメージの下に
商品の販売その他の事業を行う権利を与え、
一方フランチャージーは一定の対価を支払い、
事業に必要な賃金を投下して
フランチャイザーの指導及び援助の下に
事業を行う両者の継続的関係をいう」

スタート時点は、
ボランタリーチェーンが発達し、
その後、レギュラーチェーンが飛躍し、
最後にフランチャイズチェーンが発展した。

セブン-イレブンがその代表。

スーパーマーケットでも、
絶好調の神戸物産はこの形態を採用する。
ロピアも沖縄では、
フランチャイズシステムで出店した。

一方、ヤマダホールディングスは、
コスモスベリーズを傘下に置く。

巨大なレギュラーチェーンと、
ボランタリーチェーンの協業である。

三つのチェーンストア形態の、
融合が図られるのが、
商業の現代化の側面である。

〈結城義晴〉

2024年06月06日(木曜日)

政治資金規正法改正案とミドルマネジメント研修会最終日

政治資金規正法改正案が、
衆議院で可決された。

自民党安倍派のパーティー券裏金事件が発端。
自民党提出の改正案は、
公明党、日本維新の会などの賛成を得て、
可決されて、衆院を通過した。

「抜け穴」の指摘もある。
検討事項も多い。

参議院でも与党は過半数を占める。
したがって今国会で成立する。

しかしこれで日本の政治が、
正しく機能するとは思えない。

残念ながら。

自分の仕事、自分の会社、
自分たちの産業は、
正しく機能させたい。

商人舎ミドルマネジメント研修会は、
最終日。

朝8時15分から、2回目の理解度テスト。
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昨夜から今朝にかけて、
受講生たちはそれぞれに復習していた。
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学んだ成果をテストにぶつける。
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計数問題では電卓をたたく。
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もちろん記述問題が主体だ。
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30分間のテストを終えると、
笑い声やため息が出る。
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この和んだ瞬間を見ると、
皆、頑張った、やり切ったな、
と嬉しくなる。

そんな雰囲気の中で、
第1講義が始まる。
高野保男講師。
「作業システムとLSP」
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LSPはもちろん、
レイバースケジューリングプログラム。

高野さんは60社以上を指導して、
現在も全国の指導先を駆け回っている。
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豊富な動画やスライドによって、
作業システム改善のポイントを、
わかりやすく講義する。
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人手不足のなか、
生産性向上が課題になっている。
受講生たちは熱心に聞き入る。
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現場で一番よく起こっている現象。
作業台が物置き場になっている。
定物定位置管理の原則を徹底する。

汚れが出たら、
すぐにその場でふき取る。
それをしないから汚れが残る、増える。

売場を見れば作業がわかる。
作業を見れば売場がわかる。

ヤオコーのオペレーション。
本当にやるべきことを、
きちんとやる。

それが業績に結びついている。

2講義の2時間があっという間に過ぎる。
素晴らしい内容だった。
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ありがとうございました。

第3講義は井坂康志さん。
テーマは「ドラッカー入門」
~マネジメントの基本原則。IMG_6736

ドラッカー学会共同代表、
ものつくり大学教養教育センター教授。
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ドラッカー翻訳家の故上田惇生先生に、
この講座はお願いしていた。
その上田先生が鬼籍に入られた。
その上田先生の推薦で、
井坂さんがこの研修会の講師となった。

今年の講義では、
渋沢栄一のことを加えてくれた。
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ドラッカーに最後に直接会った日本人。
それが井坂講師だ。

もっとも大切なドラッカーの教えを、
簡潔に体系立てて講義してくれた。

そして最後はQ&Aタイム。

王さん。
日本と中国の懸け橋になりたいと、
コンサルティング活動をする。
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平和堂の細野さん。
木曽川店店長。
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成城石井の加藤さん。
商品部加工食品課長。
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井坂さんは質問に、
「ドラッカーだったら」という視点で、
懇切丁寧に答えてくれる。
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ありがとうございました。
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昼食をはさんで、
総括講義は結城義晴、
「自ら変われ!」
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最初は2日目の理解度判定テストの回答。
いつもこれが長くなる。

回答を確認しつつ、
話が展開する。
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本論は、ミドルマネジメントが、
知っておかねばならない流通理論。

まずはチェーンストア理論。
その本質。

それからマクネア教授の「小売りの輪」論。IMG_6771

そして私の持論。
業種、業態、フォーマット論。
コーネル大学のバナーの方程式。IMG_6779

最後はサービスマーケティング。
「ホッケースティックの関係」と、
間接部門のサービス。IMG_6794

最後の最後のメッセージ。
自分が変わらねば、
仲間を変えることはできない。
自分が変わらねば、
職場を変えることはできない。
自分が変わらねば、
店を変えることはできない。
自分が変わらねば、
会社を変えることはできない。IMG_6786

そしてラインホールド・ニーバーの祈り。

心から三日間のご清聴を感謝して終わった。

拍手をもらった。
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3日間、17講義の研修会も
無事終了。

受講生たちはバスに乗り込む。
遠方からの参加者たちだから、
急いで熱海駅や湯河原駅に送り届ける。
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私は静岡と神奈川の県境をまたぎながら、
みんなを見送った。
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受講生たちは手を振り返して、
笑っていた。
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研修は終わったが、
この後が大事だ。

学んだだけでは意味はない。
学んだことを実行する、実践する。

仲間に、部下に、
場合によっては上司に、
伝染させる。

職場を変え、店を変え、会社を変える。
産業を変え、社会を変える。

それが知識商人の生き方だ。
それがナレッジマーチャントの役割だ。

ともに商業の現代化を成し遂げよう。
みんな、私の同志だ。

健闘を祈る。
頑張れ。

〈結城義晴〉

2024年06月05日(水曜日)

自動車メーカーの「不正」とミドルマネジメント研修の「損得と善悪」

東京新聞の巻頭コラム、
「筆洗」

「教室の花瓶が割れたとする。
学校でこの手の問題が起きた場合、
担任の先生がクラス全員に目をつむらせて
割った者に手を挙げさせる」

昔はよくあった。

「今ではコントのネタだろう」

自動車・二輪車メーカーの、
「型式指定」を巡る不正申請。

「不正を行っていたのは誰ですか」
この問いかけにあの子も、この子も、
次々と手を挙げる。

昨年発覚したのが、
ダイハツ工業と豊田自動織機の不正。

国土交通省の調査に対して、
新たに5社が「実はうちも」と不正を認めた。

「成績優秀」、「不正はない」と、
胸を張っていた「トヨタ君」も、
申し訳なさそうに手を挙げた。

コラム。
「これで国内すべての乗用車メーカーが
品質不正をしていたことになる」

損得より先に善悪を考えよう。
倉本長治は真っ先に教えた。

それを真っ先に学ぶのが、
商人舎Middle Management研修会。
その2日目。

千歳川の清流。
実にいい天気。
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私たちの研修会場は、
茶色の壁面の会議棟。
その2階の大観の間。
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青空の下、朝の散策でもしたいところだが、
受講生はそれどころではない。
第1回理解度判定テストが控えている。

8時15分からスタート。IMG_6628

研修初日に受講した講義内容から、
設問が設けられている。
結城義晴と鈴木哲男講師の講義は、
内容も分量も多い。
そこから出される5つの設問に、
30分で答える。
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すべてが記述式。
丸暗記するのではなく、
学んだことの本質を、
それぞれ自分の言葉で表現する。
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前夜は遅くまで、
復習している姿があった。
健闘したと思う。

2日目の講義は長い。
朝9時から夜8時までの長丁場。
結城義晴と山本恭広講師が講義する。
山本君は月刊商人舎編集長。

私は6時間担当する。

朝9時から12時半までのテーマは、
「顧客満足と従業員満足」、
そして「知識商人と商業の現代化」。
重要な「マネジメント理論の歴史」。

しかしその前に理解度判定テストの回答の解説。
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回答を解説しながら、
講義になってしまう。

鈴木先生の「作演調」に対しては、
安土敏の例を持ち出して解説してしまう。IMG_6642

脱線や予定外の講義が増えていく。

それでも「Management理論の転換」を語り、
フレデリック・テイラーから、
アンリ・ファヨール、
そしてそれへの批判的研究群と、
ドラッカーとミンツバーグまで。IMG_6653

最後は私の本から。
「店長のためのやさしいドラッカー講座」IMG_6656

昼食を済ませた後、
午後1時半から15時45分までは山本講師。
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「計数の基礎」を2講座担当。
基礎であるから商品問題と人件費問題。

商品回転率と交叉比率、
人時売上高と人時生産性。

実習を交えながら丁寧に講義していく。
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今回もフレッシュな講義だった。IMG_6683

コーヒータイムで一息つくと、
20時までは一気呵成に結城義晴の講義。
テーマはドラッカーの実践論とリーダシップ論。

最初に計数講義の補足。
簿記と会計と財務の違い。
損益計算書(PL)と貸借対照表(BS)の原理。
そしてそのPLとBSの交叉。
それが総資本経常利益率(ROA)。
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商品回転率だけを指標にしていると、
例えばディスカウントの特売が増えてくる。
そして粗利益がどんどん減ってくる。
だから超品回転率と粗利益率を交叉させて、
交叉比率を使う。

ROAはこの考え方と同じだ。

商品問題の交叉比率と、
経営数値の交叉比率。

計数の補講のあとは、
「ドラッカーの使い方」

ドラッカー独特の「責任の組織化」、
目標管理と自己管理。
コミュニケーション。

様々な事例を交えて、
ドラッカーの考え方を、
いかに実践するかを講義する。IMG_6660

夕方になると、
デール・カーネギーや、
ジョンマックスウェル。

たとえば、
「リーダーの致命的な七つの罪」
尊敬を集めるよりも、好かれようとする
⑵チームのメンバーに助言や助力を求めない
⑶技量よりも規則を重視して、
個人の才能を殺してしまう
⑷常に建設的な批判を心がけようとしない
⑸チームのメンバーの間に、責任感を育てようとしない
誰に対しても同じような手法で付き合う
⑺常に情報を知らせるという姿勢がないIMG_6661

夕方になるとケン・ブランチャード。
「4つのリーダーシップスタイル」IMG_6680

大きく分けると、
リーダーシップには4つのスタイルがある。
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どのマネジメントスタイルかを聞いた。

援助型だと考えている人が圧倒的に多かった。
委任型はたった一人。

それはそれでいい。IMG_6688

大事なことはマネジメントされる人たちの、
スキルレベルやモチベーションレベルに合わせて、
対応していくことだ。

チームマネジメントについては、
スライドで講義。
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最後はゴドフリー・レブハー。
名著『チェーンストア』のエッセンスと、
結城義晴の「五つの利」。IMG_6693

長時間の清聴を感謝して終わった。

夕食後の研修会場。
夜9時を過ぎると、
少しずつ受講生が集まってくる。IMG_6697

明日は第2回目の理解度判定テスト。
再びの健闘を祈ろう。

正しいことを学ぶ。
これは幸せなことだ。
(明日へ続く)

〈結城義晴〉

2024年06月04日(火曜日)

知識商人養成の商人舎ミドルマネジメント研修会の「目的と手段」

朝の新幹線こだまで熱海に来た。
昨夜の豪雨をもたらした雲は去って快晴。
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仲見世名店街。
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熱海も活気が戻ってきた。IMG_4867 (002)

これから湯河原へ。IMG_4868 (002)

商人舎ミドルマネジメント研修会、
第22回目がスタート。

研修会場は
ニューウェルシティ湯河原。
IMG_6529

目の前を千歳川が流れる。
この橋のホテル側が静岡県。
道路側が神奈川県。

入口に「商人舎ご一行様」の立て看板。IMG_6515
今日から2泊3日間の缶詰セミナー。

毎年、この時期と秋の2回、開催。

コロナ下に中断もあったが
今回で1600人を超える知識商人が生まれる。
すでにその多くが参加企業の幹部になっている。

会場はホテルの2階、
大観の間。

終日学ぶときには、
天井が高く、快適な空間が必要だ。
IMG_6520

開講講義は、結城義晴。
プロローグは、
「コロナは時間を早めた」

自著『コロナは時間を早める』から、
コロナ下の現象を整理。
そのうえでポストコロナ時代の
取り組み姿勢を強調した。IMG_6531

そして第1部の講義テーマは、
「私たちの小売サービス産業」。IMG_6549

2008年4月11日に、
商人舎発足の会が開催された。

この時、私は3時間の記念講演をした。
第1部はこの記念講演の志を受け継ぐ内容である。

倉本長治と「商売十訓」、
マネジメントの父ドラッカーとの共通点、
さらに商業近代化の歴史。IMG_6540
福岡伸一さん、生物学者。
子どもたち、学生たちに言う。
「科学の代わりに、
科学史を勉強してほしい。
そうしたら科学の面白さがわかる」

私も同じだ。

歴史を振り返りながら、
小売業の核心の本質を解き明かす。

「関西スーパースタディ」を紹介しながら、
業種チェーンストアの1.0から、
業態チェーンストアの2.0への転換を説明。IMG_6551

さらに今、起こりつつある
チェーンストア4.0を整理する。

私の今日の持ち時間は2時間。
あっという間に終わってしまった。

第3・4・5講義は鈴木哲男講師。
㈱REA取締役会長。
IMG_6585

テーマは52週MDの基礎と応用、
そしてトアコンパリゾンまで。
16時から20時までの講義。

皆、真剣にメモを取って聴講する。IMG_6548

鈴木先生は現場主義だ。
自身の目で見て、歩いて、
調べたデータをもとに、
実務に役立つ講義をしてくれる。 IMG_6587

受講生たちにとっては、
目からウロコの内容だった。

初日の講義を終えて、
レストランで夕食。
IMG_6599

海の幸と山の幸。
IMG_6605

温かい鍋とタケノコの炊き込みごはん。
IMG_6607

講義が終わると笑顔がこぼれる。IMG_6602

派遣してくださった企業の皆さん、
初日は元気に無事終わりましたよ。IMG_6600

鈴木先生と夕食をともにしながら、
情報交換した。
IMG_6609

鈴木先生を見送り、会場に戻ると、
受講たちが自習を始めている。
IMG_6621

明日は8時15分から理解度テスト。
IMG_6622

そのための自発的な復習。
もちろん部屋で自習している人たちもいる。
IMG_6625

私はまだ気管支炎が完治していない。
長く話すと咳き込む。

しかしこの咳とも、
折り合いをつけることができるようになった。

何とか迷惑をかけずに講義ができる。

いつまでできるだろうか。

渥美俊一先生は83歳まで、
講義をしていた。

倉本長治先生も、
亡くなる直前まで、
舞台に出てきて力強く語った。

及ばずながら私も、
少しでもその域に達したい。

倉本長治は商業の近代化を推進した。
渥美俊一はそのためにチェーンストア産業をつくった。

私はささやかながら、
商業とチェーンストアの「現代化」を目指したい。
そのことにお役立ちをしたい。

この研修会はそのためのものだ。

商業現代化を果たすのは、
間違いなく知識商人だからである。

一人ずつ、少しずつ、
知識商人が生まれていく。

ナレッジマーチャントは、
大量生産では育てられない。
それは十分すぎるほどわかっている。

かといって手づくりの育成体制では、
間に合わない。

「マスカスタマイゼーション」ともいうべき、
人財の育成法が必要だ。

まず私はカスタマイズで養成する。
つぎに知識商人となった人たちが、
それぞれの企業で、
カスタマイズ教育をしていく。

それを繰り返す。

大量生産の画一的人財ではなく、
マスカスタマイゼーションによる、
知識商人養成である。

1600人の修了生たちには自ら、
知識商人の育成の役割を担ってほしいものだ。
(明日につづきます)

〈結城義晴〉

2024年06月03日(月曜日)

全米オープン優勝の笹生優花「母にも父にも」と「強欲インフレ」

Everyone, Good Monday!
[2024vol㉓]

2024年第23週。
先週土曜日に6月が始まって、
第2週。

今日は月刊商人舎6月号の責了の日。
なぜなら明日から、
商人舎ミドルマネジメント研修会。

会場はニューウェルシティ湯河原。
2泊3日の缶詰セミナー。

万全の態勢でお迎えします。

だから今日は何としも、
責了しなければならない。
いつも最後は私の原稿。

特集のまえがきを書いて、
結城義晴の述懐、
表紙のCoverMessage、
今月の[Message of June]、
そして編集後記を書く。

頑張ります。
IMG_4862 (002)

さて、全米女子オープンゴルフ選手権。
U.S. Women’s Open Golf Championship。

米国ペンシルベニア州、
ランカスターCCで行われた。スクリーンショット 2024-06-04 095621
私は午前3時に起きて、
テレビ観戦した。

女子ゴルフには5つのメジャー大会がある。
シェブロン選手権
全米女子プロゴルフ選手権
全米女子オープン 
全英女子オープン
エビアン選手権

これらのなかで最も価値のあるタイトルが、
この最古の全米女子オープンだ。
1946年から開催されている。

今回は特に難しいコースで、
難しいセッティングだった。

その難コースを乗り切って、
笹生優花が通算4アンダーで優勝。スクリーンショット 2024-06-04 095217
2021年に次ぐ2勝目。

アンダーパーはたった2人だった。

笹生と2位に入った渋野日向子。

笹生は今、最も強い女子ゴルファーだ。
スクリーンショット 2024-06-04 095511

優勝賞金240万ドル(約3億7700万円)。
優勝を決めた瞬間、
小さくガッツポーズをした。
スクリーンショット 2024-06-04 095420
「一度目の優勝はフィリピン人の母に、
二度目は日本人の父に捧げたい」
いい優勝コメントだった。

渋野日向子は通算1アンダーで、
2位に入った。
スクリーンショット 2024-06-04 094909
2019年にメジャーの全英オープンを制覇。

今でも凄い人気がある。

アメリカでも「スマイリング・シンデレラ」と呼ばれ、
カメラマンもシブコを追いかける。
スクリーンショット 2024-06-04 095736
こちらの獲得賞金は129万6000ドル(約2億円)。

粘りに粘った。
その粘りが幸運をもたらした。

日本勢は、6位に2オーバーの古江彩佳、
9位に3オーバーで小祝さくらと竹田麗央。

10位以内は来年の出場権を確保した。

朝3時から起きて見た甲斐があった。

さて、新潟日報の一面コラム、
「日報抄」
大学時代の親友がこの新聞社に入った。
だから私は新聞を敬遠して、
雑誌社を目指した。

ブンヤとなった彼は、
最後には潟日報の常務にまで上がった。

だから日報抄はよく読む。

「70円が80円に値上がりしたのは、
2年前だったか」

近所の焼き鳥屋の皮や砂肝などの1串の値段。

「夫婦で営む小さな店に時々お邪魔する」

感染禍で客足が遠のき、
肉や野菜の仕入れ値も上がるばかり。

「それでも、煮込みや冷ややっこなどの
定番の値札は変わらない」

コラムニストは少し失礼なことを聞いた。
「値上げしないと大変でしょ」

「お客さんも同じだし…」
店主は言葉をのみ込んだ。

全国消費者物価指数。
4月段階で32カ月続けて上がった。

インフレだ。

4年前に比べると7%以上の値上がり。

では実入りはどうか。

物価変動を踏まえた実質賃金は、
24カ月連続で減少。

「財布のひもが締まるのも当たり前だ」

円安不況が重なる。

「一方で、上場企業の3月期決算は
3年連続の最高益である」

「インフレ」は物価高が継続すること。

これに対して、
「強欲インフレ」という言葉がある。

「企業の過剰な利益追求によるインフレ」

「2021年以降、欧州で物価が暴騰した。
その際、実際のコスト増加分以上に
値上げしているとして企業側は
強欲と批判された」

コラム。
「どうやら日本にも広がってきたらしい」

強欲インフレ。

「一番の問題は値上げによる利潤が
多くの人の懐に回らないことだ」

日本政策投資銀行の3月の調査報告。
警鐘を鳴らした。
「賃金上昇を伴わない強欲インフレが続けば、
消費が低迷し不景気を招きかねない」

コラム。
「焼き鳥屋の店主が言いたかったのは
“店もお客もお互いさま”という
商売の基本だったのか」

その通り。

「強欲インフレの風潮への
ささやかな抵抗だったかもしれない」

商売をする者は、
強欲インフレに
加担してはいけない。

世間からも、
「強欲」などと、
思われてもいけない。

「オワリヤ、おヌシもワルよのう」
あれは本当にいけない。
OIP (1)
〈アロマディフューザー「アロマ屋文左衛門」より〉

笹生の実力と親思い、
渋野のスマイルと粘り。

合わせて5億数千万円の賞金。

それらは「強欲」からは、
かけ離れたものによってもたらされた。

では、みなさん、今週も、
強欲は本当にいけない。

Good Monday!

〈結城義晴〉

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コロナは時間を早める

結城義晴・著


流通RE戦略―EC時代の店舗と売場を科学する

鈴木哲男・著

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