結城義晴のBlog[毎日更新宣言]
すべての知識商人にエブリデー・メッセージを発信します。

2024年05月05日(日曜日)

こどもの日の「人口減少問題」と「成熟社会の構築」

こどもの日。

季節はちょっとずれるけれど、
雪とけて村いっぱいのこどもかな
〈小林一茶〉

実にいい句だ。

総務省の人口推計。
15歳未満の男女は4月1日時点で1401万人。
前年からまた33万人減った。
43年連続で減少。

比較可能な1950年以降の最少記録を更新。

総人口に占める比率は11.3%。
前年に比べて0.2ポイント低下。
これも過去最低。

3歳ごとの区分でみると、
12~14歳は317万人、
0~2歳は235万人。

低年齢ほど人口が少ない。
これも悲観材料だ。

1950年段階では、
子どもの数は総人口の3分の1を超えていた。

それ以降、1975年から50年連続で低下。

一方、65歳以上の高齢者は29.2%。
もっとも多い。

「村いっぱいの老人」である。

1950年の高齢者の割合は4.9%だった。
そして1997年に高齢者が子どもの数より多くなった。

1997年は日本の分岐点だった。
橋本龍太郎内閣で、
消費税が3%から5%に増税された。

北海道拓殖銀行が破綻し、
続いて山一證券も破綻。

小売業ではヤオハンが倒産した。

総合スーパーがピークを迎え、
外食産業も頂点にあった。

現在の子どもの比率は諸外国と比べても少ない。
人口4000万人以上の37カ国のうち、
下から二番目だ。

日本が11.3%で、
韓国が11.2%。

ドイツが14.0%、中国が16.8%、
アメリカが17.7%。

インドは24.9%。

しかしこの少子化をどう考えるか。

毎日新聞の巻頭コラム「余録」

「人口減少は過去にも起きた。
縄文時代後半や平安時代。
江戸時代後半にも、
東北や北関東で減少した」

歴史人口学者の鬼頭宏さんの分析。
「文明システムの成熟化に伴う現象」

鬼頭著『人口から読む日本の歴史』
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「明治以降の日本社会の変化は、
工業化を軸とした現代文明の帰結でもあった。
出生率の低下は先進国に共通する現象だ」

「700超の自治体に消滅の可能性がある」

鬼頭さんの20年以上前の提言。
「少子高齢化をどう防ぐか」ではなく、
「どのような成熟社会を構築するか」

一方、歴史人口学の泰斗・速水融博士。
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その著『歴史人口学事始め』
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速水博士の分析。
「特に日本など父系が強い、
“マッチョな国”の出生率が低い」

そしてこう指摘する。
「浮世絵や俳句など
江戸の庶民文化が花開いたのは
人口減少期」

考えさせられる。

日経新聞「大機小機」
「岸田政権子育て支援策の大罪」
コラムニストは吾妻橋さん。

岸田文雄政権の「子ども・子育て支援金」の創設。
財源として個人や企業から徴収する。

「本来の少子化対策とはいえない」

「少子化は様々な社会課題が凝縮した結果で、
バラマキ政策では解決しない」

その通り。

若年世帯の多くは夫婦共働きで、
子育ての最大のコストは母親の所得減だ。

「仕事との両立が困難なため、
出産を機にした退職や残業のない業務へ転換すれば、
家計収入が大きく減る」

「政府は育児休業の改善には熱心だが、
肝心の休業明けの就業継続支援には、
ほとんど手を付けていない」

片手落ち。

小売業もサービス業も、
休業明け就業継続支援は、
大いに助かる。

「効果が不明確な少子化対策にもかかわらず、
その財源として医療保険料に上乗せするかたちで
子育て支援金を徴収する方式に批判が集中した」

これが愚策だ。

岸田首相は社会保障の歳出削減により
「実質的な負担を生じさせない」と強弁した。

「しかし社会保障給付の削減も、
その受給者にとっては負担増であり
論理矛盾である」

「少子化防止のために真に必要な政策なら、
そのための負担増を国民に堂々と求めるのが筋だ」

「財源は年齢や就業形態にかかわらず
負担する消費税の一定割合とするべきだ」

1997年の消費税増税から、
今、10%である。

その使い方こそ、国の未来を左右する。

「子育て支援金の徴収は、
本来必要な少子化のための制度改革を
遅らせる点でも有害である」

「やってる感」だけの岸田政権。

江戸の庶民文化が花開いたのは、
人口減少期だった。

人口減少には何とか歯止めをかけつつ、
この視点を未来への足場としたい。

雪とけて村いっぱいのこどもかな

〈結城義晴〉

2024年05月04日(土曜日)

みどりの日の「ジャングル大帝」と勝海舟の「時間さへあらば」

みどりの日。

寝正月ではないが、
寝黄金週間だ。

旅行はできない。
ゴルフにも行けない。
外出しない。

熱は36.5℃。
もう大丈夫だとは思うが、
深呼吸すると胸の奥から咳き込む。

まだ完治はしていない。

来週の水曜日からアメリカ。
商人舎US研修ベーシックコース。
50人の団員が待っている。

だから体調を完璧にしておかねばならない。
よく寝て、よく休んだ。

それでも夕方、自由が丘へ。

自由が丘 Sweets Festa 2024が開催されて、
人が集まっていた。
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いつもの花屋。IMG_3826 (002)4

パリの一角のような、
モンソーフルール。IMG_3822 (002)4

カーネーションの鉢植えがずらり。IMG_3823 (002)4

母の日は5月第2日曜日、
今年は5月12日。

それに向けて店頭でアピールする。444

朝日新聞「天声人語」

手塚治虫の名作
『ジャングル大帝』
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「白いライオンの王パンジャの死から
物語が始まる」

そうそう、そうだった。

「パンジャとは
ジャパンのことだという説がある。
誤読する自由で言わせてもらえば、
つまりは日本」

「息子レオは俺(オレ)であり、
父の死後、生まれ変わる日本を示唆」

なるほど。
知らなかった。

「マンガが雑誌に掲載されたのは戦後、
連合国による占領期だった。
だからあえて、この時代の日本を
ジャパンという英語で表し、
ひっくり返してみたのでは……」

コラムニストの推理。
読みすぎだけれど、面白い。

しかし手塚は書き残している。
「もう二度と、戦争なんか起こすまい、
もう二度と、武器なんか持つまい、
子孫の代までこの体験を伝えよう」

同感だ。

そしてジャングルや地球のみどりを、
残したい、増やしたい。

イオン岡田卓也さんの「木を植えよう」は、
ほんとうにいい運動だ。

朝日新聞「折々のことば」
第3069回。

「時間さへあらば、
市中を散歩して、
何事となく見覚えておけ、
いつかは必ず用がある」
(勝海舟の教師)

海舟はかつて長崎で修学中、
教師にこう教わった。
そしてそれを肝に銘じていた。

「政治はつねに世態や人情を”実地”でよく観察し、
事情に通じていないとだめだ」

商売も実地で観察し、
事情に通じている必要がある。

「だから江戸に戻っても、暇さえあれば、
目抜き通りから場末、貧民窟まで歩き回った」

「それが官軍による江戸攻めという非常の時に役立った」

『氷川清話』から。
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小売業の経営者や店長も、
勝海舟と同じだ。
もちろん私も。

時間さへあらば、
市中を散歩して、
何事となく見覚えておく。

チェーンストアの経営者や幹部なら、
中心商勢圏の市中を巡る。

店長ならばもちろん、
商圏内を回る。

その観察が必ず、
何かを教えてくれる。

いざという時に役に立つ。

そして市中を巡ることは、
それ自体が楽しいものだ。

〈結城義晴〉

2024年05月03日(金曜日)

日本国憲法の「戦争の放棄」と「ジャンクな情報」

憲法記念日。

ゴールデンウィーク後半の4連休。

日々の商売となれば、
2連休は毎週末に必ずあるから、
対処法や成果も「ルーチン」となっている。

3連休は2連休にもう一つ加わるから、
特別のストーリーをつくって、
そのうえで具体的な作戦を立てて、
3日間通しの成果を最大化する。

さて4連休となると、
どう組み立てるか。
ここは知恵の出しどころだ。

客数も多いだろうし、
予期せぬ出来事も起こるだろう。

みんなが気分よく仕事できるように、
それぞれに気を配りつつ、
店を守りたい。

昔々、倉本長治先生が、
徳島のキョーエイに贈った言葉。
「市民生活を守る砦たれ」

連休のときにも、
生活を守る砦でありたい。

さて日本国憲法。

お薦めしている。
篠田英朗著『はじめての憲法』
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この憲法の特徴は、
「第2章 戦争の放棄」である。
とくにその「第九条」。

一項。
「日本国民は、
正義と秩序を基調とする
国際平和を誠実に希求し、
国権の発動たる戦争と、
武力による威嚇又は武力の行使は、
国際紛争を解決する手段としては、
永久にこれを放棄する」 

二項。
「前項の目的を達成するため、
陸海空軍その他の戦力
これを保持しない。
国の交戦権は、これを認めない」

国際政治学者の篠田英朗さん。
神奈川県出身の56歳。
東京外国語大学大学院総合国際学研究院教授。
大学院生時代に国連PKOボランティアに参加。
さらにアジアやアフリカの紛争地域で、
ボランティア活動に従事した。

『平和構築と法の支配』で大佛次郎論壇賞、
『「国家主権」という思想』でサントリー学芸賞、
『集団的自衛権の思想史』で読売・吉野作造賞を、
それぞれ受賞している。

元大阪市長の橋下徹との論争は痛快だった。
完全に論破した。

その篠田さん。
第九条に以下の文面を加えて、
その部分の改憲をすればいい、
と主張する。

去年もそれを紹介した。

三項。
「前二項の規定は、
本条の目的にそった
軍隊を含む組織の活動を
禁止しない」

篠田さんに賛成している。

憲法九条の本来の趣旨は、
「国際法遵守」である。
九条はそれを宣言したものだ。

二項の「戦力(war potential)」は、
一項の「戦争(war)」と「放棄」に対応して使われている。

つまりここで言われるのは、
「戦争のための戦力」である。

自衛隊は自衛する組織だから、
戦争のための戦力に該当しない。

二項の「交戦権」とは、
戦時中の大日本帝国が国際法を蹂躙した事実に対して、
日本国憲法はそれをしないことを誓った規定である。

憲法九条は「国際法遵守」を宣言しているのだから、
それ以上に制約を課してはいない。

「戦争の放棄」を、
「原理」と主張するひとたちがいる。

「戦争」は絶対にいけないものだから、
それを「原理」ととらえる考え方は、
わかりやすいかもしれない。

しかし「戦争の放棄」は「目的」である。

「軍隊を含む組織の活動を
禁止しない」

これを第三項として加えるだけで、
「自衛隊」という組織が正当化される。
自衛隊という言葉を使わずに、
それが憲法に記される。

篠田英朗、
頭、いい。

いまさら自衛隊の存在を否定することはできない。
それを「軍隊」に変える必要はない。

しかし自衛隊は、
誰が見ても異論や疑念がわかないように、
憲法の中に位置づけられねばならない。

今の自衛隊の位置づけは、
ごまかしだ。

朝日新聞「折々のことば」
第3073回。
知的であるためには
ある種の無防備さが必要だ
(内田樹)

「無知とは知識の欠如でなく、
ジャンクな情報で頭がぎっしり詰まっていて
新しい情報の入力ができない状態のことだ」

なるほど。

「これに対し、学びとは、
入力があるたびにそれを容(い)れる器そのものの
形状や容積が変化してゆくこと」

『だからあれほど言ったのに』から。
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ジャンクな憲法情報に毒されていると、
新しい概念が頭に入ってこない。

がちがちの改憲論者も、
原理主義の護憲論者も、
新しい状況が生まれ、
新しい情報や新しい考え方がでてきたら、
それを受け入れる柔軟な器をもつ必要があると思う。

憲法に限らない。
チェーンストア理論でも、
原理や原則を補助線として使え。

ドラッカーのポストモダンの方法である。

〈結城義晴〉

2024年05月02日(木曜日)

上場企業の7割増益と「禍福の転変に備えよ!」

月刊商人舎5月号、
書き終わった。
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特別企画のPrologueとEpilogue。
特集のまえがきの提言。

それからMessage of May。
表紙のCover Message。

編集後記を書いて終わり。

風邪をひいてしまって、
体調は良くなかった。

けれど仕事となると、
手は抜かない。

商人舎5月号、
期待してください。

すべて終わって、
山本恭広編集長とツーショット。
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日経新聞一面。
「上場企業の7割増益 前期」

2024年3月期決算、
上場企業の業績が好調だ。

小売業の2月期決算も絶好調である。

3月期企業のうちの16%の企業、
時価総額で28%の企業が発表を終えた。

東証プライムに上場する173社。

その7割に当たる120社が増益。
増益社数の比率は、
過去10年で2番目の水準となった。純利益が増えた企業が69%ある。

前の期比14ポイント増。
22年3月期は73%で、
この10年の最高だったが、
それ以来の高水準となった。

鉄道や空運、食品、機械など、
幅広い業種で増益企業が増えた。

新型コロナウイルス禍に伴った制約がなくなったからだ。

純利益合計は前の期比27%増。
決算未発表企業の会社予想を加えて、
上場企業全体では16%増となる見込みだ。

3年連続で最高益となる。

小売業もチェーンストアも、
全体では「最高益」だろう。

産業全体を見れば、
「円安」は輸出企業を中心に利益を押し上げた。
輸出採算が改善したり、
外貨建て取引の差益が膨らんだりした。

日米金利差を背景に円安が進んだ。
そして対ドルの平均レートは、
145円だった。

前の期比9円の円安に過ぎなかったが、
約34年ぶりの円安水準となった。

しかし今年度の「円安」は、
さらに激しい。

しかもこれは、
人々の生活に直結する。

大企業を中心に賃上げは進んだ。
それでも日本全体でみれば、
どのくらい給与水準が上がり、
それが消費や購買に結びつくのか。

前期の好調な決算。
増収増益。
そして最高益。

チェーンストアでは、
イオンが増収増益の過去最高。
セブン&アイ・ホールディングスは、
減収ながら最高益。

ライフコーポレーションも、
過去最高の営業収益で、
利益はコロナ特需の特異年に次ぐ、
過去二番目の高さだ。

それ以外のチェーンストアも、
とくにスーパーマーケットは、
増収増益、最高益が続出。

そこで商人舎5月号の[Message of May]
今月の商人舎標語でもある。
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禍福の転変に備えよ!

吉凶(きっきょう)禍福(かふく)
禍福倚伏(いふく)
幸いと災いは、
因果的に繰り返される。

人間万事塞翁が馬。
塞の老人の馬が逃げてしまった。
悲しんでいるとその馬は、
駿馬を連れて戻ってきた。

喜んでその馬に乗っていると、
翁の息子は落馬して足を折った。
今度は悲しんでいると戦争がはじまり、
息子は兵役を逃れることができた。

コロナ禍で世界中が萎縮した。
しかし想像を超えた特需が生まれた。
次の年にはその大きな反動に沈んだ。
4年が経過して今、最高益が生まれた。

けれど事実を見つめると、
次の災いの根は深くはびこっている。
円安は国民生活を冒し続ける。
チェーンストアに改革を求める。

吉凶禍福のない企業に目を向けよう。
禍福倚伏が起こらないチェーンに学べ。
そして「塞翁が馬」の故事を噛み締めよう。
禍福の転変に備えよう。

幸いと災いは、
因果的に繰り返される。
その因と果を考え続けよう。
今、頭脳と意志が試されるときだ。

〈結城義晴〉

2024年05月01日(水曜日)

5月1日「メーデーの孤独」とイズミ「ランサムウェア被害」の回復

5月1日。

2024年に入って、
3分の1の時間が過ぎた。

毎日毎日、欠かさず仕事をし、
生活をしてきた。

大仕事をやり遂げていなければならないが、
それが進捗していない。
単行本『チェーンストア』後編の執筆だ。

読者の皆さんはもとより、
編集者やデザイナー、印刷所など、
待たせっぱなしだ。

本当に申し訳ない。

発刊は大幅に遅れます。
しかし強いプレッシャーの中で、
頭はいつも単行本のことで埋まっている。

月刊誌の原稿を書いていても、
それは単行本につながる。

実際に今年に入ってから、
ここまで5冊の雑誌をつくったが、
単行本に使うべき新たな内容が、
次々に浮かんできた。
論理が深まってきた。

貴重な熟成の期間となった。

風邪が完治しないまま、
今は月刊商人舎5月号に集中する。

頑張ります。

今日は5月1日。
連休の合間の、
メーデーの日。
国際労働者の日。
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今日はあいにくの雨。
それでもデモや集会をやったのだろう。

雨降らば降れメーデーの旗滲(にじ)
〈原田種茅〉

20代、30代の前半までは、
私も商業界労働組合の組合員だった。
だから必ずメーデーに参加した。

一方、管理職になると、
会社に残って仕事をした。

商業界はユニオンショップ制をとっていた。
つまり社員は全員が組合に入るというルール。
だからメーデーの日には組合員は全員、
会社に来ない。

メーデーに参加する人も、
参加せずに勝手に有給休暇にする人も、
どちらも仕事を放棄した。

管理職が会社や仕事を守った。
ガランとした会社で、
編集長や部長だけが仕事をしている。

「静かでいい」などと言う人もいた。

現在は連合系が4月28日(土)に開催。
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芳野友子連合会長が中央実行委員長となって、
あいさつした。
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ここには岸田文雄首相もやって来た。
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隔世の感がある。

首相はあたかも自分が、
賃上げを先導したかのように、
薄笑いを浮かべつつ発言したのだろう。

今日の5月1日は、
全労連系が集会を開き、デモをする。

かつては二大労働組合連合体があった。
総評(日本労働組合総評議会)と、
同盟(全日本労働総同盟)。

総評が日本社会党を支持し、
同盟が民社党を押した。

それが1989年に合併して、
連合(日本労働組合総連合会)を結成した。
世界最大の労働組合だ。
現在のUAゼンセンも連合傘下である。

それとともに社会党も民社党も衰退した。

代わって民主党が連合と組んで、
政権交代を果たした。

一方、連合を「右傾化」と批判して、
左派の組合によって結成したのが、
全労連(全国労働組合総連合)だ。
日本共産党との関係が深い。

これら総評や同盟、のちの連合や全労連を、
「ナショナルセンター」と呼ぶ。
全国組織である。

現在は連合も全労連もよろしくない、
という団体がある。
全労協(全国労働組合連絡協議会)である。

それぞれに全国でメーデーを開催する。

総身(そうしん)の雨にひたぬれメーデー歌
〈瀧尻佳子〉

全身びっしょり濡れながら、
メーデー歌を声を限りに歌う。

そのメーデー歌。

聞け 万国の労働者♪
轟き渡るメーデーの
示威者に起る足どりと
未来をつぐる鬨の声♪
聞いたことはあるでしょう?
しかしこのメーデー歌は、
旧日本軍歌「歩兵の本領」の替え歌だ。
万朶(ばんだ)の桜か襟の色♪
花は隅田に嵐吹く
大和男子(やまとおのこ)と生まれなば
散兵線(さんぺいせん)の花と散れ♪
真逆の思想、真逆の歌詞が、
同じ旋律に乗って、
高らかに歌われる。
実に不可思議な現象だ。
一度、深く考えてみる必要がある。
それから去年のブログでも紹介した一句。
いい句はいい。

メーデーの列とはなつてをらざりし
〈稲畑汀子〉

見たまんまが滑稽。
さすが高濱虚子の孫、
汀子の真骨頂。

メーデーに参加して、
いつも最後はこうなる。

メーデーの遂に一人の家路にて
〈伊丹丈蘭〉

人が集まって何かをする。
それは結局、それぞれの人に、
孤独を自覚させることになる。

私たちはその孤独に耐えねばならない。

人間は一人で生まれて、
一人で死んでいく。

さて、商人舎流通SuperNews。

イズミnews|
システム復旧で5/1からECやアプリ利用再開

㈱イズミのシステム障害。
2月15日に発生したランサムウェア被害が原因だ。

ランサムウェアとは悪意のあるソフトウェア。
ファイルをロックして身代金を要求するために保持する。

イズミはこのランサムウェアの被害に遭った。
メールシステムを含む各種システムの使用を停止し、
連絡手段は電話・FAX・郵送となった。

イズミnews|
システム障害の完全復旧は5/1をめど

専門家に依頼して、
イズミらしく丹念に対処した。
その結果、予告通り5月1日に完全復旧した。

決算発表も遅れた。

「組織変更および人事異動」は、
実施日を3月1日付から5月16日付に変更した。

また3⽉7⽇に予定していた新店、
「ゆめマート新⼤村」開業は、
延期された。

何はともあれ、経営者、関係者、
ホッと一息といったところだ。

2024年2月期業績に及ぼす影響は、
軽微であると見込まれている。

私も専門ではない。
ランサムウェアを、
100%防御することは難しいらしい。

企業が取るべき重要度の高い措置は、
データをバックアップすることだ。

万が一、感染した場合にも、
バックアップに切り替えて、
身代金を払わなくても済む。

なんにしても、
イズミの皆さん、
お疲れ様でした。

〈結城義晴〉

2024年04月30日(火曜日)

横尾忠則「’70大阪万博・未完パビリオン」のぼやけた輪郭線

Everyone, Good Tuesday!
[2024vol⑱]

2024年第18週。
4月最終週、最終日。
明日から5月。

ゴールデンウィークの合間。
火曜・水曜・木曜と合間の平日があって、
金曜の憲法記念日から、
土曜のみどりの日、
日曜のこどもの日、
月曜の振り替え休日へと続く。

私は前半の3日間は、
自宅で完全休養。

もちろんパソコンに向かって、
原稿を書くことはできるので、
それはやった。

けれど一歩も外へは出なかった。

それでも夏風邪はしつこい。
咳はずっと残った。
熱も36.6℃を下回らない。

平熱まであと0.3℃か。

咳が出るので今日も自宅で原稿。
そして夕方、マスクをして出社。

会社のみんなにうつしてはいけない。

6700字と1万700字の2本の原稿を、
換骨奪胎して書き直した。

頭はシャープだし、
気力は充実している。

商人舎5月号、
ご期待ください。

この3日間で雑誌を仕上げて、
そのあとの4日間で、
風邪を完璧に打ちのめす。

そして1日開けて、
5月8日の水曜日から、
ラスベガスに向けて出発する。

商人舎US研修ベーシック編。
円安がここまで進んで、
派遣企業には負担をかけるが、
それでも大人気の研修だ。

今年は最後にお申し込みの3社には、
お断りしなければならなくなった。

すみません。

かつてはバス2台だとか、
バス3台の編成で実施したことがある。

しかし、ベーシック編は、
バス1台でギリギリ46名。
事務局と私できっちり50名。

マンツーマンで指導する場面もあるから、
これが限界です。

秋にベーシック編を、
もう一度やろうかとも思うが、
スペシャル編は実施したいし、
喜ばしい悩みだ。

アメリカに学ぶものはもうない。
そんな発言をする人もいる。
いや、どんな時代にも、
そんなことを言う人はいた。

しかしそれはおかしい。
ほんの一部の例外の人を除いて、
何しろアメリカの小売業やサービス業は、
楽しい、面白い。

面白い映画を見たり、本を読んだり、
楽しい音楽を聴いたりするのと同じだ。

学ぶなどと考えなくとも、
その楽しい小売サービス業に接することは、
間違いなく人間としてプラスになる。

そして商人舎の研修のように、
目的を明確にして米国と接することは、
極めて有益である。

もちろん米国に限らず、
欧州やアジアも有益であるし、
日本国内も有益である。

ストアウォッチングは楽しい。
45年前に販売革新誌で、
新入社員特集を組んだ時から、
これは私の信念である。

特集は、
「Store Watchingのススメ」
まだ駆け出しの編集者だったが、
大好評を博した。

さて日経新聞巻頭コラム「天声人語」

横尾忠則の大阪万博の話。
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知らなかった。
面白い。

横尾忠則は1970年の大阪万博に反対だった。
なぜか。

戦時中、多くの画家や作家が、
国威発揚に利用された。

そこでいかなる国家の事業にも加担しない。
そう考える芸術家は多かった。

横尾は万博への参加は承諾したが、
「人類の進歩と調和」というテーマは、
受け入れられなかった。

「なんとか裏切ることはできないか。
任された『せんい館』の構想を練るうち、
建物を未完のまま『完成させる』アイデアを思いつく」

面白い。

「周囲に工事用の足場を残し、
建築のプロセスをそのまま作品として披露する」
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当時33歳の若さ。
前衛のグラフィックデザイナー。

そのパビリオンは、
「いま写真で見ても抜群にクールでかっこいい」
同感だ。

「スキーのジャンプ台に似たスロープ状の屋根から、
真っ赤なドームが顔を出す。
同色のパイプで組んだ足場の上には
ヘルメットを被った人形が何体か立っている。
遠くから眺めると、作業中に見えた」

「予算がなくなって放置されたなどと
散々にいわれた」

来年4月に開幕する大阪・関西万博。
意図的ではないが、準備は進まない。

だが、横尾忠則は言う。

「人間は未完で生まれて未完で生きて、
未完で死ぬ。これでいいのではないか」

それでいい。

今日の朝日新聞「折々のことば」
第3072回。

自身の思考の輪郭線は
常にぼやけていたほうが
より良い社会を創ることができる
〈永井陽右(ようすけ)『共感という病』から〉
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永井は1991年、神奈川生まれ。
テロ・紛争解決プロフェッショナル。
特定NPOアクセプト・インターナショナル創業者。

「物事はつねに多元的かつ多岐的なもので、
白か黒か、右か左か、
はっきりさせるというのは
賢い選択ではない」

「”共感”がもし、共通項を見つけ、
一体になろうとすることであれば、
それこそが自分たちとは違う人らとの
対立や分断を生む」

「わかりあえないと思い定めておくほうが、
理解の余地は少しは広がる」

これは現在の世界外交の基本だろう。

同時に横尾の「未完のパビリオン」に通じる。
完成させないから、
白か黒か、右か左かは、
はっきりしない。

輪郭線はぼやけている。
そこに活路を求める。

するとより良いものをつくることができる。
面白い。

店も売場も、
すべてがきっちりとしていなくても、
面白いものができる。

ウォルマートは、
わざと一点、外した売場をつくる。

では、みなさん、今週も、
未完でもいい、面白ければ。

Good Tuesday!

〈結城義晴〉

2024年04月29日(月曜日)

危機の中の日常の「昭和」と失われた30年の「平成」

昭和の日。

祝日法で定めるのは、
「激動の日々を経て、
復興を遂げた昭和の時代を顧み、
国の将来に思いをいたす」

世界的な戦争を起こし、
最後には原爆を落とされて敗戦し、
そのあと劇的な復興を遂げた昭和である。
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戦争の中では平和を希求し、
その平和の中で繁栄を享受した。

昭和は平和の裏と表を知っている。

2025年は昭和100年。
別の意味でコンピュータ問題もあるけれど、
しっかりその意義を考えたい。

政治や議員主導で特別の祭典をやる必要はない。
国民が全体に昭和の意味を知り、
問い直す必要がある。

世界は昭和の時代から、
あまり進んではいない。

悲しいことだ。

私はその昭和を37年間生きた。
しかし昭和の劇的復興には、
それほどお役立ちできなかった。

私は昭和64年1月1日付で、
食品商業編集長の辞令をもらった。

そして7日後に平成となった。

しかし平成時代は、
ほとんどが「失われた30年」を含んでいる。

「失われた30年」はいい言葉ではない。
けれど、バブル経済崩壊後の1990年代初頭から、
コロナ禍の2020年代初頭までを示す。

私に様々なことを教えてくれた人たちは、
例外なく昭和の復活を担った。

尊敬し、感謝しなければならない。

私が本格的に社会貢献できるようになったら、
「失われた30年」に入ってしまった。

それはいつも思っている。

ただしこの時期、
かつての重厚長大と金融は、
「失われた」ときだったかもしれないが、
軽薄短小と小売業は、
発展と成長を果たした。

そのことに少しだけ貢献したか。

昭和の日にそんなことを思う。
「平成の日」の祝日がないのは、
失われたからなのか。

朝日新聞「折々のことば」
第3071回。
「平凡な日常」とは、
フィクションでしかないのだ。
(松村圭一郎)

「コロナ禍のような非常時には、
ケアや運送、ごみ処理といった
“エッセンシャルワーク”が、
労働条件が劣悪なまま社会全体を
支えてきたことが露(あら)わになる」

「社会的支援が不十分な人たちが
まっ先に苦境に立たされる」

「危機の中で顕在化する
構造のほうが”ふつう”で、
“何事もない日常”こそ
例外的であることが判明する」

『人類学者のレンズ』から。
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松村は1975年(昭和50年)生まれの、
文化人類学者。
熊本出身、京都大学大学院博士、
岡山大学准教授。

エチオピア西南部のコーヒー栽培農村を調べて、
博士号をとった。
フィールドワークを主体に研究をする。

「危機の中で顕在化する構造」が、
日常そのもので、
「何事もない日常」は、
例外的である。

昭和は危機の中の「日常」だった。
平成は何もない「日常」だった。

何もない日常が、
失われた30年をつくった。

かといって、
危機の中の日常に戻ればいい、
というわけではない。

そこが悩ましい。

しかし何もない日常だからこそ、
小売サービス業が貢献した。
その意味でエッセンシャルな産業なのだろう。

だからこそ、
凡事徹底、有事活躍なのだ。

〈結城義晴〉

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