第3回 プロトコル・コード・フォーマット
當仲寛哲(USP研究所)VS玉生弘昌(プラネット)対談
玉生:EDIで通信を行う際には、技術的な約束ごととして、
「プロトコル」、「コード」、「フォーマット」の3つの標準があります。
この3つを取り決めることで、よいデータ交換システムを作ることができます。
海外では、「プロトコル」「コード」「フォーマット」の標準化を行い、
企業の経営戦略に結び付けていますが、
日本はまだ、その次元までたどり着いていないのが現状です。
「プロトコル」とは、
ネットワークを介して、
コンピュータ同士が通信を行なう際に用いられる約束ごとのことです。
通信手順、通信規約などと呼ばれることもあります。
たとえば、先ほどお話した「J手順」というのもプロトコルです。
「コード」は、商品や取引先に割り振られて、それぞれを識別するためのものです。
身近なものとしては、JANコードが挙げられます。
「フォーマット」は、どの情報をどのような順番で、
何桁の数字で表現するのかの取り決めです。
■J手順の失敗■
玉生:日本では、1985年に、日本チェーンストア協会が、
J手順というプロトコルを制定し、
広く普及したのですが、そのとき、フォーマットは決めませんでした。
単純に事務的な決めごとなのですが、このときに決めなかったために、
現在でも1000を越えるフォーマットが日本中で通信されています。
しかし、これではフォーマットの戦略的意味がありません。
セブン-イレブンの発注も、マツモトキヨシの発注も、
発注の中身はほとんど違わないはずなので、
書式を一つに統一しておけばよかったのですが、
残念ながら現在、EOSは、
標準化のレベルが非常に低い状態のままなのです。
それに加えて、J手順が完全に陳腐化しています。
大手ベンダー各社が、
J手順のサービスを終了するということを宣言しています。
現在、パソコンに標準でついているTCP/IPという通信プロトコルは、
J手順の100倍以上のスピードがあります。
しかも安価です。
J手順は、テレビ電話の時代の、
モールス信号のようなものだということができるでしょう。
ところが、J手順しか使えないというユーザーが、いまだ日本にはたくさんいます。
これでは「私は電話を知りません。連絡は手紙だけでしかできません」
というようなものです。
プラネットでは、メーカーさん341社、卸店590社をユーザーとして、
EDIのサービスを提供しています。
この加盟企業間でやり取りされる情報は、フォーマットが統一されています。
プロトコルは、プラネット標準プロトコルというものを使用しています。
コードは、GDSと呼ばれる、商品マスタの業界統一データベースを使っています。
発注データ、仕入れデータ、事前出荷情報データ、請求データ…
さまざまなデータの種類が企業間を行ったり来たりします。
それによって、マシンtoマシンによる電子取引が完結するのです。
日用品雑貨、化粧品、ペットフード業界では、
プラネットを介して、大規模な取引が行われています。
今データの種類は24種類。全てフォーマットは標準化されています。
メーカーさんは、プラネット仕様のフォーマットの通信システムを作れば、
プラネットと接続している約600社の卸店さんと、発注情報や請求情報などの交換を、
一気にオンラインで行うことができるようになります。
卸店さんも、プラネットに加盟すれば、数百社のメーカーさんと、
オンライン取引ができるようになります。
これを「N対N接続」といいます。
第四回に続きます