知識商人登場!當仲寛哲の巻[第5回 LINUXとの出会い③]
當仲氏:
このLinuxって、面白いんです。
フィンランドの国で発明されたんですが、フィンランドって寒い国じゃないですか。
Linuxを開発したリーナスさんは、コンピュータオタクで、
冬でもコンピュータを触りたいんだけど、休みで学校に行けない。
★リーナス氏「自分はできない、誰か助けて!」
當仲氏:
当時、Linuxの前身になったMINIXという基本ソフトがあって、
彼はそれをヘルシンキ大学で研究していた。
そのMINIXっていうのは、一応コンピュータの基本的な仕組みについてのプログラムは書いてあったんですが、
キーボードを打ったり、画面に映し出したり、
そんなことすらできないソフトだったんです。
それだと、家で操作できないので、
まずリーナスさんは、家からでもアクセスできるように、
電話をかけて大学のMINIXに接続できるソフトを作ったんです。
彼は、コンピュータオタクなので、それがうまくいった。
「やった!これで家から、冬、大学に行かなくてもコンピュータが触れる!」と。
それがスタートです。
うまくいったら、人間、欲が出るものです。
MINIXは、自分で作ったプログラムをディスクにセーブする機能がなかった。
だから、せっかく作ったプログラムも、電源を消すと消えちゃう。
そんなだったんで、リーナスさんは調子に乗って、
今度はハードディスクに自分のプログラムを残すような、
保存するようなプログラムを自分で書いてみようと思ったんです。
ところが、彼は一生懸命やったんですけど、失敗したんですね。
要は、結構難しいんですね。整合させるプログラムが。
彼の天才たるゆえんはですね、
その時、何をしたかというと、
インターネットを通じて「自分はできない」と言ったんですね。
「自分はできないので、だれか助けて!」と。
★オープンに公開し、いいものは自由に取り込む
當仲氏:
これって、バカ素直な話なんですけど、それを言ったら
世界中から、
「なんで君はできないんだ」
「俺が代わりに書いてやる」
というヤツがいっぱい集まってきて、とうとう、
ハードディスクにデータを保存するプログラムができあがったんですね。
こうしてできあがったMINIXのプログラムは、
画面から遠隔でも操作できるし、
データも保存できる。
これは一つの売り物になる立派な基本ソフトじゃないかと話されたんですけど、
リーナスさんは、これはみんながお互いに自由に意見を交換してできたものだから、
フリークスという名前にしようと彼は提案したんですね。
結城:
Free、自由ね。
當仲氏:
そう、自由。freedam。
ところが周りの友達がですね
「いやいや、みんながUnixのソースを隠しあってる中で、
君はよくぞ、その考えに至った。快哉だ。」
「ぜひ、あなたの名前を付けなさい」といった。
そうして、周りに押されて「Linux」という名前になったんですね。
當仲氏:
そういう生まれなので、Linuxは、
オープンにして公開する、
いいものは自由に取り込んでいく、
そういった思想が流れている。
しかも、もともとUnixなので、
小さな道具を組み合わせて、それで問題を解決する
という両方のいいところを備えている。
そして十数年のうちに非常に洗練をされてきた。
実はインターネットの全世界のサーバーの7割以上はLinuxで動いています。
これがタダで動いていて、なおかつ、そこに乗っているソフトは
非常に優秀なソフトなんですけど、全部タダだったりするんですね。
こういうものからITは、実は成り立っていて、
今、このLinuxを使って、Unixの考えでもって、
情報システムを作るのは非常にいいことだと思っています。
結城:
まさしくさっきの「安い、早い、柔らかい」を
出自のところで持っていたということですよね。
言葉の世界というか、概念の世界では
「Wikipedia」という、オープン百科事典がある。
あれはもういろんな人の知恵が集まってきて、
時々、間違ってるよなんて言われるんだけど、
すぐ修正されていて、
有名な大学の教授が作る百科事典よりも
非常に柔らかくて、現代的なものも全部入ってる。
そのWikipediaというものものに似てますよね。
★まねできるものは情報やシステムではない
當仲氏:
そうですね。
考え方のベースになっているUnixの考え方というのは、
オープンにすることなんですね。
そして多くの人の目に触れることによって洗練されていくと。
オープンにしたからといって、
何か、商売上、大事な情報を盗まれちゃうんじゃないかっていうふうに、
そう思ってしまいがちなんですけど、
実際には、そんな簡単に真似できるものは、情報とかノウハウじゃないんですね。
要は、隠して初めて成立するような、
そういったものに依存しないと続かないようでは、
どこかで誰かに追い抜かされてしまう。
コンピュータの世界では、みんなよく分かっていて、
自分が作ったものを進んでオープンにすることによって、
さらにいいものができあがってくる。
だって、コンピュータは道具であって、
道具を使いこなすのは、人間で、それは個々に任されているわけです。
だから道具はみんなでいいものを作って、それを利用して、
その利用の仕方の差でもって競争しようと。
そういうことが正しい競争の姿だと思うんですね。
だから、このLinuxを使ったシステムというのは
技術はオープンでどこでも使えるんですけども、
それをどのように使っていくかということは、
各会社にいる人たちが、自分の会社の特性を考えて、
あるいは戦略を考えて、ふさわしい物を作ればいい。
それができ上がった暁には、そう簡単に真似できない。
だって、会社そのものですから。
結城:
それが當仲さんのUSP研究所のコンセプトでもあるわけですよね。
続きます