第六回 システムは基幹系・情報系・戦略系がある
當仲寛哲(USP研究所)VS玉生弘昌(プラネット)対談
玉生:基幹系システムというものは、
伝票処理や、給与計算など、定型的な手順で仕事が遂行される仕組みです。
これらの作業は、手順が一定なので、プログラムを組めば結果が出ます。
請求書発行に10人かかっていたのが、
コンピュータを入れたら2人でできるようになります。
しかも1週間かかっていた作業が、1日で出来るようになると、
眼に見えて生産性があがったといえます。
伝票処理だけでも、大型汎用コンピュータから、
オープン系のサーバに入れ替えることができれば、
劇的にコストが安くなります。
売上げ1000億円でも、パソコン1台で全部処理することができます。
また、パソコンと二十何万円の給与計算ソフトがあれば、
社員が10万人いても、給与計算ができてしまいます。
ところが、現在は、大型汎用機でそれをやってしまっている。
安田火災海上は、すべての業務システムをオープン系にしたところ、
それまで数年かかっていた、新しい保険サービスの設計が、
数ヶ月で済むようになったということです。
ですから、ほとんどの経営者は、コンピュータというと、
導入すれば省力化・迅速化・ミスの防止を進める効果があり、
コストダウンをするための道具と考えています。
■待ち望まれるCIOの誕生■
玉生:ところが、会社の仕事の8割は、非定型業務です。
非定型業務とは、分析・企画・調整を試行錯誤しながら、やりとりしていくものです。
スタッフの8割はこの仕事をしています。
それまでこのような分析・企画・調整の仕事は、
コンピュータでは処理できなかったのですが、技術が進歩することで、
コンピュータで実現できるようになりました。
これを情報系のシステムと言います。
例えば、パソコンを使って、画面を見ながら、
来年の販売計画を考えたり、シェアの増減を予測したりする。
そして、それをグラフにしてみたり、加工してみたり…。
スタッフにとって、
このようにして処理された情報は武器になりますので、どんどん普及します。
そして、定型業務がオープン系になると、基幹系と情報系とで、
データを上手くリンクすることができるのです。
ところが、情報系の生産性は、基幹系のそれとは全く意味が違います。
宣伝部のスタッフが10人いる、予算は10億円。
それで、来月の常務会までに、よりよい宣伝計画を提出しなければならない…
というように、経営資源は一定です。
基幹系の生産性とは全く意味が違うのです。
企業の情報システム部が、コストダウンを目的として、情報系を作ろうとすると、
全く求めているものとは違うものができてしまう結果となります。
最近では、定型業務と非定型業務の他に、
戦略系といわれる業務が注目されています。
ITを使うことで、新たなサービスを生んだり、新たな仕事を創出します。
これから企業は、優秀なCIOを育て、CIOが会社の立場に立って、
戦略的にITを選択する必要があります。
日本では、どんなに優秀なシステム部長でも、社長や役員になることはありません。
CIOがいないと、経営者として、ITを最適に判断することはできません。
これは日本の組織における今後の課題だと言えるでしょう。
第七回に続く
第五回 ハードウェアが1000倍進歩したのにも関わらず…
當仲寛哲(USP研究所)VS玉生弘昌(プラネット)対談
玉生:今から20年ほど前に、ダウンサイジングという言葉が流行りました。
メインフレーム、大型汎用機と呼ばれる、昔からのコンピュータを入れ替えて、
新しいオープン系の機械にし、コストを数分の一に下げようというものです。
実際、アメリカの場合は、ソフトウェア会社が、
昔からの古いテクノロジーしかもっていないSEをリストラして、
UNIXが分かるSEを採用しました。
当時は、会社が儲かっているのに、なぜ人の首を切るのか?
という批判も出ましたが、これはまさに技術の入れ替えだったのです。
ところが、そのとき、日本は全く技術の入れ替えを行いませんでした。
そのため、今でも古い仕組みのものを、日本だけがたくさん抱えている
状態になってしまったのです。
皆さん、ムーアの法則はご存知かと思います。
ゴードン・ムーアという、インテルの創業者の予言で、
「半導体チップは1年半で倍に進歩する」というものです。
1年半で倍ですから、3年で4倍、4年半で8倍、6年で16倍、
…10回倍になると1000倍になります。
15年間ぼやぼやしていると、
ハードウェアは1000倍進歩していることになります。
プラネットでは、23年間で5回マシンを入れ替えていて、
その度に、システムの運用コストが大幅に下がっています。
そのため、サービス利用料を、これまで7回も値下げしてきました。
一番最初に導入したプラネットのセンターマシンは、20億円しました。
ところが、今では同様以上のものを200万円ほどで調達することができます。
それだけITは進歩しているのです。
皆さんの会社は、この20年間で何回マシンを入れ替えたでしょうか?
最新の機械を使えば、売上1000億円の企業でも、
マシン1台で全ての伝票処理ができます。
そのために必要なソフトウェアは、たぶん数十万円で済みます。
ところが、そこに踏み込むことができない企業が大半です。
なぜなのでしょうか?
■オープン化を邪魔するマシンルームの大型汎用機■
玉生:企業のシステムは、表で示したように分類できます。
例えば、基幹系と呼ばれる業務の基本は、受発注を行い、
このデータ処理をコンピュータで行い、請求書に発行するというものです。
これを大型汎用コンピュータで行えば、提携的な業務を自動化することができます。
この業務を高性能サーバに入れ替えれば安くなるのですが、
大型汎用コンピュータからの移植ができません。
一方で、事務所内にパソコンはたくさんあります。
このパソコンはオープン系です。
それが増殖して、LANでつながっている。
事務所を見渡して、それぞれの机にパソコンがあると、
自分の会社がオープン系だと勘違いしがちですが、
実はマシンルームの奥の方には、
大型汎用機に象徴されるような昔からの仕組みが密かに動いており、
企業の変革を阻むのです。
さて、レガシーとオープン系はどのように違うのでしょう?
UNIXやLinuxのように、公開して開発されたOSで動く仕組みを、
オープン系といいます。
ここではWindowsもオープン系に含めます。
オープン系とレガシー系では、OSも違いますが、文字コードも違います。
オープン系はアスキーコードが中心で、統一が取れていますが、
レガシー系ではEBCDICなどが中心で、統一が取れていません。
文字コードが違うと、互換性がありません。
また、レガシー系の仕組みでは、
世界で当然の通信仕様とされている
TCP/IPでの通信ができないということも、大きな問題です。
ところが、レガシー系のシステムを、オープン系のシステムに
切り替えようと思っても、
システム部長には技術的な知識が無いために、
社長に問題点を説明することができないのです。
第六回に続く
第四回 次世代の標準、インターネットEDI
當仲寛哲(USP研究所)VS玉生弘昌(プラネット)対談
玉生:日本のメーカー・卸間のEDIは、
世界的に見てもかなり進んだものが普及しています。
一方、小売業界では、EDIはうまくいっていない、というのが現実だと思います。
世界に目を転じてみますと、
EDIFACTというプロトコルが多くの国々で普及しています。
また、現在では、国連が「UN/EDIFACT」という基準を管理しています。
※EDIFACT:1987年、ISO(国際標準化機構)が承認した、ビジネスプロトコルの国際規格
※UN/EDIFACT:現在貿易手続をはじめとしてビジネス全般に亘って幅広く使用されている電汎用国際基準
海外ではこれらのプロトコルが一般的なのですが、
漢字が載らないなどの欠点もあります。
そこで、日本では、財団法人流通システム開発センターが先頭に立って、
「JEDICOS」というプロトコルを作りました。
ところが、このJEDICOSもあまり普及していません。
また、流通システム開発センターは、次世代EDIということで、
「流通BMS」という仕様を定めました。
「流通BMS」は、JEDICOSに次ぐ新世代のEDI仕様で、
インターネットを使っています。
将来的には、圧倒的に早く、安く、大容量のインターネットEDIが、
主流になることでしょう。
皆様方自身、ご自宅でADSLや光ファイバーを使ってインターネットをつなぎ、
動画などを楽しんでいる方もいらっしゃるのではないでしょうか?
インターネットでカラーの画像を見ると、
文字と数字しかない伝票のようなテキストデータの通信に比べて、
少なくとも20倍以上、動画にいたっては1000倍以上の電気信号を使います。
今やそれが簡単にできる時代です。
光ファイバーで、24時間つなぎっぱなしでも、月数千円ですみます。
■インターネットの落とし穴はセキュリティ■
玉生:当然ビジネスでも、インターネットという
優れた通信手段を使うようになりますが、問題は、
通信の途中に様々な危険性が潜んでいるということです。
途中でデータの盗聴、改ざんが行われたりする可能性があります。
ですから、まずビジネスでインターネットを使う場合には、
暗号化を行う必要があります。
もう一つ、インターネットEDIを実施するためには、
「成りすまし」防止のための、電子認証が必要になります。
Aという卸から、Bというメーカーに発注がきたときに、
確かにA社からの発注なのか、ということを認証しなければなりません。
そのため、認証を行う第3者機関があります。
日本ベリサインという会社が有名です。
ところが、電子的認証にかかる料金というのは、まだまだ高い状況です。
ある会社とある会社の間の通信を認証するのに、年間1万円以上はかかります。
取引先がたくさんあると、それだけ金額がかさむのです。
プラネットでは、すでに、
SMOOTHEDIというインターネットEDIを提供しています。
日本でインターネットEDIを行っているのは、このサービスしかありません。
また、プラネットでは業界認証局というものも作っていまして、
5年間1万円で、複数対複数の接続を認証することができます。
「もううちはWebEDIを導入しているよ」という企業もあるかと思いますが、
WebEDIとインターネットEDIは根本的に違うものです。
「インターネットEDI」は、マシンtoマシンで、
全てのデータが自動的にやりとりされます。
「WebEDI」は間に人間が入ります。
相手先のマシンから届いた情報を、
人間がブラウザなどで閲覧して作業するというものです。
ですから、WebEDIは割と手っ取り早くできますが、
必ずしも全てが自動化されているとは限りません。
なぜ、これほどまでに、インターネットEDIが日本では普及しないのでしょう?
そこには、「レガシー問題」が関係しています。
第五回に続きます