〈第1話〉 Thank You 命をありがとう ~プロローグ~
『Thank You 命をありがとう
~真の健康を得る機会、ヘルス・オポチュニティーの扉を開く~』
プロローグ ――― Dream On(夢は続く)
ウイーピングロック(涙の岩)
「今、貴方が目にしている一粒一粒の水の雫は、1200年の時間を経て、堅い岩を貫き、光る宝石となってこの場所へ流れ落ちてきているのです。」
その場所に立て掛けられた、観光者向けのプレートに綴られた説明文の一字一句を、声に出してゆっくりと読んでみる。高い頭上から零れ落ちる水滴が、照りつける太陽に反射して煌く。私はその眩しさに瞳を閉じると、青く銀色に流れる光の波が瞼の奥に広がった。
大自然の宝庫といわれるアメリカ西部に流れるコロラド大河。その豊かなる水の流れを取り巻くように広がる台地、カイバブの森。新世代から白亜紀、そして現代に至る20億年以上の地球の変化によって隆起した巨大な地層が階段状に削られた岩壁は、気の遠くなるような地球の歴史を私たちに連想させる。
“グランド・ステアケース(巨大なる階段)”と名付けられた、ユタ州からアリゾナ州へと連なる壮大なモニュメントの中に厳かに聳え立つ石の峡谷、ザイオン自然国立公園がある。今から約150年前、この地へ入植したモルモン教徒らは、その壮麗なる美しさに感動し、この場所を『シオン―永劫の地』と名付けた。ザイオンのほぼ中心に位置し、最も不思議で神秘的とされるウイーピング・ロック(涙の岩)は、遥か昔に起きた大規模な地殻変動と長い年月の風化現象によって剥がれ削られた大きな一枚岩の断片に、涙のような水が滴り落ちることからそう呼ばれる。雨や雪によって浸み込んだ水が悠久の時を経てその強靭な岩を貫き、降り注ぐ日光や茂る緑に照らされてエメラルドやトパーズに輝く雫となり、途絶えることなく地上に降り注いでいる。
そこを初めて訪れたのは4年ほど前の5月のことだ。まだ初夏に入ったばかりとはいえ、日中は30度を越える暑さだった。ウイーピング・ロックへと続く約1キロのトレイル、この峡谷特有の草花が咲き乱れる上り坂を、私は流れる汗を拭いながら息を弾ませて歩いた。
ようやく目的地へ辿り着くと、涼しげな水がピチャピチャと滴る音、そして、マイナスイオンで一杯のひんやりとした湿気が、瞬く間に体の熱を冷ましてくれる。
ほんの4~5分の事だったと思うが、いつもは観光客が多いこの有名スポットにいたのは、偶然にも私一人だけだった。
目前に現れた、自然が創りだす水の雫のカーテン。その清らかな滴りに両手を差し出し、ゆっくりと指を広げると水粒が弾けて虹色のプリズムが現れる。私は手すりに寄りかかり、思い切って体をぐっと前に突き出して振りそそぐシャワーを真下から浴びた。輝く水飛沫が私の顔と体を濡らして、その心地よい冷たさに身を委ねれば、大自然の涙に口づけされ、優しく抱擁されているような感覚を覚えた。
“全てが浄化されていく、そして細胞の一つ一つが生まれ変わっていく。”
そんな思いが全身を包み、私は、病む事も老いる事も忘れて、永遠に輝く命を手に入れることも可能なのかも知れないと考えてしまう。 そして夢を探し続ける事も・・・。
私には夢がある。
確かなる知識の裏づけの元
病む事や、老いる事にも脅かされず
細胞も血液も
心も体も活性化され
最善の健康を手に入れる術を知り
癒しを求める多くの人々を救う事
エジソンが闇を照らし
ベルが遠く離れた人々を声で繋ぎ
ライト兄弟は、人間が鳥のように羽ばたけることを証明し
リンドバーグは、アメリカからヨーロッパへ向かう渡り鳥になって
そして、人は宇宙までも飛んで行った
乳飲み子を抱え
一杯のコーヒーを買う事が精一杯のシングルマザーが書いた物語が
世界中の子供たちに魔法をかける
『私には夢がある』と
唱えた黒人牧師の夢は現実となり
その意思をつぐ者が大国を動かす
彼らは何も特別ではない
皆同じ人間で
ただ夢をけして諦めなかっただけなのだ
この岩を貫いて溢れ出す水たちは
もとはただの水で
前に進むことを諦めなかったからこそ
ここまで辿り着き
陽の光を浴びて
煌く結晶となる
水しぶきで濡れた髪を
さっと振り払い顔を上げると
光の粒が舞って、輝いて、私を包む
その時、
夢の楽園に佇む自らの姿を見た
私はその姿を愛おしむかのように抱きしめる
All dreams come true! 夢はきっと叶う
五十嵐ゆう子
JAC ENTERPRISES, INC.
ヘルス&ウエルネス、食品流通ビジネス専門通訳コーディネーター