〈第24話〉 夢へ、少しずつ動き出す
第8章 ―――― Esthetician Diary from U.S.A.(米国エステティシャン日記)
夢へ、少しずつ動き出す
米国エステティシャン日記の連載を始めて1年後の2006年7月7日、東京の神田にあるCMPジャパン社にて、“ダイエット&ビューティ新聞”の読者の方々を集めた座談会が催された。私もその座談会に招かれ、皆の前で話をさせて頂く事になった。そんな経験は初めてのことでとても緊張した。しかし、同時に楽しくもあった。
座談会に来られた人々は、掲載開始から欠かさず私の日記を読み続けて下さった方ばかりで、また、美容産業で活躍さている方々も沢山おられた。そんな人々から、私のつたない日記を楽しみにしていると言われ、私は非常に恐縮した。
先ず、私が1時間ほど話した後に皆様から様々な質問を受けた。そして、日本の現場の悩みやストーリー等を聞かせて頂き、逆に沢山の事を教えて頂いた。
私がこうして記事を投稿する事によって、人との繋がりが増えて、今回のような、今までに体験出来なかった事にもチャレンジする事が出来たのだ。そして米国のコラムニストの一員としてCMP ジャパンとも更に繋がり、美容と健康関連における通訳の仕事を毎年頂けるようになった。
それから暫くして、この健康関連の通訳業務を通し、統合医療のパイオニアとも言われるジョセフ・シバラシ医師という方のインタビューに、立ち会うことになった。
カリフォルニア州サンタモニカ市で、1992年からウエルネス・クリニックを営われているジョセフ医師は、ニューヨーク私立病院の緊急救命医師として長年の激務に就かれ、多くの命を救ってきた最先端西洋医学の医師である。
彼の元に、死と背中合わせで運ばれてくる重症を負った人々。その中で、助かる人とそうではない人を日々見続けてきたジョセフ医師は、西洋医学の見地だけでは説明しきれない何か別の“癒しの力”について感じることがあったそうだ。そしてシバラシ医師にとって大きな転機となったのは、自ら経験した肉体の不調を通してだった。
救命医師の殆どがそうであるように、朝と夜とが逆転した生活を送る激務の毎日が彼を疲労のどん底に押しやり、ある日、仕事へ行こうと起きた時に身体が動かせなくなったそうだ。その時ジョセフ医師は、肉体が求める限り、ひたすら睡眠を取った。そしてファーストフードなどの加工食品を食べるのを止めて、胃に優しい野菜を多く取り入れた食事を多く食べることを心がけた。長い時間眠ることと、栄養のバランスが取れた食生活はジョセフ医師の心身を急速に回復させたのだという。変化していく身体の状態をまさしく体感した彼は、人体の自己治癒力について深く考えるようになった。そしてそのアイデアは、西洋医学の見解とは異なる新たなる治療法 『代替療法』 について詳しく研究したいという思いに、とジョセフ医師を導いていった。彼がそれまで行ってきたトラディショナルな西洋医学に、東洋医学やホリスティカル的療法を合体させれば、もっと違うアプローチで患者を救えるのではないかという考えは、自らの新しいフィールドを切り開くきっかけとなり、これがジョセフ医師が実践する統合医療ウエルネスセンターの原点になったそうである。
その後、ジョセフ医師と昼食を共にする機会があり、私は自分の闘病経験について打ち明けた。ジョセフ医師は、非常に興味深い話であると言い、こう続けた。
「その貴重な体験談を何かの形にして、多くの人と分かち合ってみるのはどうだろうか?そうすることで、様々な病気を抱える人達やその家族に新しい情報を与えるだけでなく、君に共感し、君が抱く計画に興味を持ち、将来的に力を貸してくれる人だって現れるかもしれないよ。」
いつか浅野氏から言われた言葉、“新しい何かが見えてくる”が心に浮かだ。“あの言葉が意味していたのはこういう事?私は自分の仕事を通して、貴重な出会いを体験し、夢への糸口を掴もうとしているのだ。”
ジョセフ医師との出会い、そして彼が語ってくれた言葉は、私の心を大きく揺さぶった。
“私の体験を、何らかの形で人々とシェアーすることがもし出来たら、もしかしたら、少しずつでも何かが動き出すかもしれない。”と。
五十嵐ゆう子
JAC ENTERPRISES, INC.
ヘルス&ウェルネス、食品流通ビジネス専門通訳コーディネーター