〈第37話〉 ナチュラル&オーガニック
第13章 ―――― Dreams will go on (夢は続く)
ナチュラル&オーガニック
私の2年以上に及んだ闘病経験を振り返り、最も学んだ事はデトックス(解毒)と免疫力強化を促進する食生活の必要性である。適度な日々の運動と、繊維を多く含んだ食物を多く食べる事を心がけ、青汁や野菜ジュースを飲み、毎日の規則的な排便を行い身体に病気の素となる毒素を溜めない事(排便がそれでも順調でない場合は百毒下しなどの和漢薬を使用する事もある。)白砂糖、抗生物質や成長ホルモンを使用した動物性タンパクの摂取を辞め、高カロリーの揚げ物や甲殻類の食品を控える。弱アルカリ性の水を1日に5~8杯飲用し(可能であればペットボトルではなく、信頼の置ける会社の浄水器を自宅に設置して、そこから作られる新鮮な水が良い。無理な場合は消毒した備長炭や麦飯石で活性化した水を作る)、不足している栄養素はサプリメントや健康食品を正しく摂取することで補い、体の免疫力を向上させておく。
そして一番気をつけているのが、自然農薬により栽培された=ナチュラル&オーガニック(有機)野菜と果物を取り入れた食生活を続けることである。そして時には、コメディー番組を見たり、友人と楽しい話をして、大きな口をあけて思いっきり笑い、悩みは明日に回して十分な睡眠を取ることも大事である。
これらを繰り返してきた事が闘病中の体調を整え、治療に効果的な状態(免疫力が高い状態)を維持し、闘病の回復後も健康的な身体を保つことの出来る要だと信じている。私は常々この生活が本当に基本的なことばかりで、特別に難しい事はないと信じてきた。だから私の闘病について知っている人を通じ、日本の方々から寄せられる質問メールにも同じことを繰り返して紹介してきた。しかし、私の提案に対して幾人もの方が同じような返信をしてきた。それは食生活に関してであった。
「日本での食事療法はアメリカと比べれば難しい問題があります。市場で、農薬を使用しない有機野菜の数は限られ、おまけに高額で、毎日続けるのは難しいのですよ。」と。
確かに米国にはナチュラル・オーガニックを手ごろな価格で販売する食料品店が豊富にあり、特に私の住む周辺ではローカルの無農薬青果ばかりを集めた朝市が、毎日どこかで開かれ、多くの人で賑わっている。健康維持と有機野菜が密接に関連しているという意識は、一昔前の健康志向者向けではなく、今はメインストリームと呼ぶ主流の食品流通レベル、そして国の行政レベルまで浸透しているのだ。人種や年齢、知識に関りなく、子供から大人まで農薬の危険性や、オーガニック食品が身体に良い事は知っている。
私自身、この食生活を長年続けてきて明らかに体感することがあるのだが、それと知らずに農薬を使用した果物を一定量食べると唇が赤く腫れてしまい口内炎になる。無農薬ではもちろん全然大丈夫なのだ。この症状は葡萄や苺を食べた際に顕著に現れるので、この2つについては無農薬でなければ最初から殆ど口につけないことにしている。
あと、米国で無農薬が広がる原因の1つになったとされる恐ろしい話がある。通常、人は死ぬと土に帰るのが自然の事であるのだが、土葬の習慣を続けてきた米国で(州によって多少異なるが)、近代の食生活である農薬によって育てたれた青果や加工食品、ファーストフードを多く食べるのが習慣となってから、死体が土に帰らず、腐敗して悪臭を放ち、墓地の近隣に住む住人から苦情が出る事態が明るみになった。それから農薬散布してきた農家やその周辺で、障害を持って産まれる赤ちゃんが多く(3人兄弟の1人にダウン症などの障害が出る等)、癌の発生率も高いのは誰もが知る事実である。
仕事の経験を通しても、米国の食品小売業で成功している企業のトレーダージョーズのバイヤーと話した際、今後は更にナチュナル・オーガニック食料品がコンベンショナル(従来の一般的な食料品)をおしのけ、誰もが安心して口に入れる事が出来る健康的=クリーン(農薬、化学品を含まない)なフードがマス・マーケットに受け入れられ、それが本来あるべき、ヘルシー(健全な)な食品流通の姿であるべきなのだと聞かされた。そして、米国最大の健康食料品店WHOLE FOODS MARKETは、“健全な肉体に宿る、健全な食生活=医食同源”をモットーに顧客に向けて健康的な食生活を発信している。
“自らが望めば容易に健康的な食生活を送ることが出来るこの国に住む人々と、日本の大きなギャップが1日も速く埋まって欲しい。無農薬の野菜や果物が、豊富に低価格で人々に提供できれば、それだけ病気にかかる人も減るのではないか?”と、願った。
そして私の思いは、この可能性を託すことの出来る人物と繋がる事になる。その人は自然農法販売共同機構の専務取締役であり、福島県のオーガニックコーディネーター、NPO法人のオーガニック協会監事などに従事しておられる南埜幸信氏であった。
南氏とは静岡県で米国のWHOLE FOODSをモデルにナチュラル&オーガニックを充実させた品ぞろえを目指している食料品スーパー、静鉄ストアの米国視察ツアーで知り合った。静岡といえば、鈴木美恵さんが生前の頃、沼津で有機野菜を手に入れるのが大変なのだと話していたのを思い出す。静鉄ストアは現在、沼津にも出店しているので、彼女の思いが通じたのかなと不思議な縁を感じた。
話を元に戻すと、南氏は元々医師になることを考えていたのが、高校二年の時に“医者は病を治すが、社会の人が病気にかからないようにすることがもっと大事な仕事である。”という事を悟られた後に、有機農業に目覚めて農学部への進学を決意された。そして“有機農業を通して病無き社会を実現する。”という志を持ち、有機農業の技術体系が構築されれば農家が安心して有機農業を取り入れ、拡大が可能であると考えて、大学時代の殆どを日本各地の自然農法を実践する家に押しかけて長期滞在された。
有機の青果は、自然農法の短所として収穫が変動的、形が規格外、生産者の少品種集約生産に対して、消費者は少量多品目を求め、余剰農産物の可能性等、様々な問題が多くて日本国内での拡大には超えなければいけない壁が多いのが現実であると氏は語る。しかし、生産者や仲間同士で起業するオープンマーケットでの販売や、スーパーでの有機販売コーナーを拡大したり、又は米国で成功しているオーガニック専門食料品スーパーのWHOLE FOODSのような有機メインの販売量販店の実現、生産者、加工業者、企業法人、レストラン、学校給食などとコンソーシアム(同じ目的を持ち結束する団体)を設立するなどのシステムを改革する事で、日本でナチュナル・オーガニックの食材がもっと普及すると唱えている。そして驚くべきことは、南氏の構想の中には総合ウエルネスセンターの設立(総合医療による体質改善プログラム)が含まれていたのである。私はそれを聞いたとき「やったあ!ここにも同じ夢を持つ人が居るのだ。」と、胸の高鳴りを抑え切れなかった。
五十嵐ゆう子
JAC ENTERPRISES, INC.
ヘルス&ウエルネス、食品流通ビジネス専門通訳コーディネーター
2 件のコメント
2009年、2010年と北海道の農家を訪ねるツアーを行いました。印象深かったのは「美幌町」で20町の畑を有機で行っている「一戸さん」でした。
なにが大変ですか?と訪ねると速攻で「草取りだよ。草を取る機械はないからね」と答えが返ってきた。「どうしてるんですか?」と聞いたらにこっと笑って「手で取るんだよ」と答えてくれました。20町だよ!?
夜遅くまで懇親会に付き合ってくれて、翌朝朝食会場には現れませんでした。仲居さんから「一戸さんなら4時頃出て行ったよ。畑にでもいったんでしょう」と言われました。
あの時のごぼうの味は今での私の舌に残っています。一発でファンになりました。
息子が幼い頃に隣のトトロを一緒に見た時
畑で取れた野菜を田舎のおばあちゃんとサツキ、メイが病院のお母さんに届けてあげようと
話しているシーンのくだりで
「バアちゃんの野菜を食べたら、どーんな病気だって治っちゃう」とおばあちゃんが
言った台詞がとても印象に残っています。
自然に栽培され、お日様を浴びて、ミネラル一杯の熟れて食べごろの青果ほど
人の免疫を強くしてくるものはないと私も思います。