〈あとがき〉 読者の皆様へ
読者の皆様へ、
長きに渡り私のストーリーにお付き合いくださいまして、本当にありがとう御座いました。
自らの闘病記録をメインに、仕事の事、将来の目標等について文章に表すことのきっかけとなったのは、エピローグの章で出てきた“砂漠に咲き誇る花”を目にしたことからでした。
実はその頃、私は色々な困難を抱えていました。そして死の淵から生還した体験さえ忘れて、生きる希望を失いそうな状態でした。
仕事におけるスランプ、夫婦生活の問題(主人が職場の上司との人間関係で鬱状態となりました。)、馴れない土地での生活の難しさ等、色々考えると夜も眠れない状態でした。特に主人との関係は破綻の一歩手前でした。その余波は息子にも伝わっていたのではと思います。
月に数度、ラスベガスからロスアンゼルスへと仕事の為に車を運転し、通っていた私にとって、灰色一色が延々と続く砂漠の景色は単調で、気持ちが沈むばかりでした。その少しも好きにはなれなかった砂漠の地に、ある日突然現れた黄色の花畑は、本当に息をのむほどの感動的な光景でした。
文中にもあるように、雨が殆ど降ることの無い乾いた大地は石のように堅く、それを突き破って咲いていた花は、あまりにも可憐で、どこにそんな力があるのかと思いました。
その時にある重要な事に気が付いたのです。花の幹は細いけれども真っ直ぐに太陽に向かって伸びていました。顎を上げて、上を見上げなければいつまでも地面の下のような暗闇からは抜け出せないのです。目に見える物質的な大きさに関係なく,意思の力はきっと堅い岩をも貫けるのだと理解しました。このことが、私に勇気を与え、心にかかった雲を一瞬にして晴らしてくれました。そして一時的でしたが、私が病気の悪化で歩く事すら困難になった時、ベッドの上でいつも考えていた事を思い出しました。
“人が立って歩けるというのは、なんと凄いことなんだろう。私が再び元気になり、自由に歩く事が出来たら、何処へでも行けるし、なんだって出来る。”
苦境の中においても、一歩でも、ニ歩でも、思うが侭に前へと踏み出せるニ本の足を私はもっていたのだと言う事を再確認したのです。
このように私が体験した過去の経験を振りかえり、それを文章にすることで、さらに自らの身を引き締め、以前よりも更に前向きな気持ちを持つことも出来ました。そして不思議なのですが、この著書を書き始めた頃から、私の周りで様々な出会いが生まれ、自分の未来が少しずつ開けていったように思います。
この物語を綴っていた数年間に二つの悲しい別れと、一つの奇跡の物語がありました。先ず二つの別れとは、20年来、家族ぐるみでつきあってきた友人の奥さんの死と、仕事を通じて東京とアメリカで長年共に働いてきた先輩の死でした。双方とも最後まで希望を失わずに、一縷の希望を信じて病と戦い続け、力尽きて天に召されて行きました。もっと、もっと生きて、やりたい事も沢山あったであろう彼らの無念を思うと、今生きている事に感謝し、悔いのない日々を過ごさなくてはいけないと教えられている気がします。
その一方で、6歳の頃から世界でも数例しかない難病を患い,二度も死の淵をさまよいながらもその生命力で蘇り、今は学校に通えるほどになった知り合いの姪御さんがいます。
このように、光と影がいつも隣り合わせであるように、人の生死は我々が簡単にコントロールできるものではないのかもしれません。しかし、一つだけ確かな事があります。それは著書の中でも述べた、”今生きているだけで、100パーセントの可能性が与えられている”と言うことです。その可能性とは自分の心の状態を変える力です。人間の感情と言うものは、如何なる状態に置いても自由であり、自らの意思で幸福にも不幸にも自由に動かす事が可能なのです。
毎年日本を訪れる度に、企業の戦士達が自らの命を絶つという悲しい話を耳にすることが少なくありません。特に近年の長引く世界経済の低迷は、米国のみならず、日本の経済にも深刻な打撃を与え続けている事と想像します。しかし、このような状態においても、きっとどこかに光の差す方向へと続く道が存在します。
例えば我々がジャンプをする前に、地の底に思いっきり足をつけて踏ん張ると、より高く飛ぶ事が出来るように、多くのケースにおいてピンチはチャンスです。視点を変えてみるだけで多くのプラス的な要素が隠れていることに気が付きます。
明けない夜が無い様に、何があってもいずれ日は昇ります。それは私が約束します。
最後に、商人舎ホームページで、私のストーリーを掲載する機会を与えていただいた代表の結城義晴先生、様々なサポートをしていただいた亀谷様、鈴木様に誌面をかりて深く感謝致します。
この“Thank You 命をありがとう”のストーリーは一旦ここで完結いたしますが、私の夢への挑戦はこれらかも続きます。又、新しい展開がありましたら、皆様へ報告する機会を作りたいと思っております。
私は心の目を通し、今でもあの日の砂漠に咲いていた花を見つめています。
五十嵐ゆう子
JAC ENTERPRISES, INC.
ヘルス&ウエルネス、食品流通ビジネス専門通訳コーディネーター
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一年近くの長きにわたり、五十嵐ゆう子先生のWeb小説をご愛読いただき、
誠にありがとうございました。
今年1月のプロローグから始まり、エピローグまで合計40回の連載の中で
五十嵐先生が数々の困難を乗り越えられてきた姿に感動された方は数多くいらっしゃると思います。
読者の皆さまから寄せられたコメント数の多さがそれを物語っています。
今後も五十嵐先生には米国の流通ニュースを届けて頂きます。
また、新ブログなども企画中です。ご期待ください!
最後に五十嵐先生、本当にありがとうございました。
[商人舎事務局]