セーフウエイの底力を見た!
世界中を震撼させたリーマンショックから一年、経済低迷状態からいまだ脱出できない状況で、高級レストランは閉店し、新興住宅地に開発された大型ショッピングセンターの店舗スペースはガラガラ状態である。低価格を提供するWAL-MARTやCOSTCOは大忙しだが、一般スーパーでは様々な工夫や安売り作戦を展開するも、ほとんどがどんぐりの背比べ状態である。
そんな中、“Ingredients for Life(より良い暮らしのための素材)”をキャッチコピーとするセーフウェイが、その底力を見せつけている。かつて惣菜のセーフウェイといわれた栄華を復活させるような高級感溢れる大型新店舗を、2009年の7月25日にビバリーヒルズとハリウッドのど真中にあるウエストハリウッドに、パビリオンとして華々しくグランドオープンさせた。
まず度肝を抜くのが、真ん中に駐車場を囲むように並ぶ隣接モール。近い将来、小売店が入るスペースが幾つもあるのだが、それらをただの空きスペースにしていないで、全ての場所のシャッターに色鮮やかな惣菜の大型写真をプリントしてある。
それらの写真が、車を停めてから店の自動ドアをくぐるまで顧客の目を刺激する。
スーパーの建物自体にも3階立て駐車場が完備されているが、駐車場は非常に混みあっている。
店内正面の入り口には、これでもかと言うほど、蘭などの高級な花のオブジェが置かれている。さらにさまざまな形の壺に活けられた生花が、店舗に向かって左側に位置する大通りのサンタモニカ・ブルバード沿いからよく見えるように、ガラスのショーウィンドーにズラーっと並べられている。
そしてそのショーウィンドーに沿って、EAT INのためのテーブルと椅子が並ぶ。なんと皮の肘掛け椅子やソファも置かれている。そしてスターバックスがすぐ隣接され、入り口側には最近のライフスタイル店で見るコンビニがある。
EAT INで非常に成功しているWHOLE FOODSを彷彿とさせるように、惣菜コーナーや調理の実演販売コーナーがある。オーブンの火の前に並べられた焼き立てのパン、フレッシュなフルーツがふんだんにのっているケーキや上品なプチフールデザート(これは他の店舗では見た事がない)などが並ぶ。
店の正面にある青果コーナーは想像を超えるバラエティーの多さで、日本の野菜もある。珍しい野菜は小分けされ、仕切られた枠にきれいに並べられ、まるで絵画を見ているようだ。トマトや唐辛子類など、複数の種類が並んでおり、こんなに色々あるのだなと感動した。オーガニックコーナーも真ん中に置かれ、健康志向を象徴している。
精肉や生鮮コーナーも料理のPOPがきれいで美味しそう。
“美味しく調理する方法をアドバイスしますので、どうぞ質問ください”と書かれている。グルメレストラン風にアレンジされて、下準備を施されてある食材の並べ方も素晴らしい。
とどめはワインコーナーである。オーク素材の棚に並んだワインの種類は豊富で、ワイン専門店にいるようだ。右端の出口近くに設置されたガラス張りのワインセラーは高級感が漂っている。とにかく店舗の右端のほとんどがワインコーナーなのには、びっくりした。
2000坪はあるかと思う店内にはレストルーム(お手洗い)が3カ所も設けられている。安心して、長時間ゆったりとショッピングができる環境が整っている。
とにかく溜息の出る店とはこういう店なのだと感じた。そしてぜひ、また行って見たいと思わせる店であった。
店内にあるJUMBA JUICEというジュースバーで、店員の人からこう聞かされた。
“こんな凄い店はアメリカ人の僕でさえ始めて見るよ。他のVONSに先週行ったけど、店はとても暇で、聞こえてくるのは店内に流れる音楽だけだった。だけどここは人の話し声で溢れているよ”
本当に、セーフウェイの底力を見せつけられたと、心の底から思える店である。
五十嵐ゆうこ