寡占化反対!
先日、全米書籍チェーン第2位であったボーダーズが倒産したことは、既に様々なメディアや流通ニュースで語られているので、今更私が詳しく述べることもないでしょう。個人的には、息子が幼い頃から絵本や辞書などを買う際、値引きが多かったのでよく利用していました。
ボーダーズのメンバーカードを持っている私にとって、会社更生法の元で店舗数が減るのは不便になります。かといって、競合のバーンズ&ノーブルが繁盛しているのかと言うと、そうでもなく、本屋の店舗から客足が遠ざかっている現実があります。
電子書籍の普及だけでなく、高校2年生になる息子も、宿題をノートではなくUSBに保存して先生に提出し、先生も生徒達に課題や参考文献を載せてたものをメールしてきます。学生達が小型ノートパソコン1つを小脇に抱えて学校へ行き、町から本屋や図書館が消え、100%ペーパーレスの時代が来るのは、そう遠くないのかもしれません。
学生時代、本屋で買った新しいペーパーバックの本を開き、新しい紙や印刷のインクの香りを嗅いで、わくわくしながらページをめくるなどということを、これからの世代の人が体験できない日が来るのかと思うと、少し残念な気がします。
これはアーバイン市の「District at Tustin Legacy」というライフスタイルショッピングセンター内にあるボーダーズの閉店セールに、人が押しかけている写真。ここは結構繁盛店であったのに閉店してしまうようです。
最近の米国は本屋も、デパートも、電気屋やホームファニシングも寡占化が進み過ぎて、顧客の勝手な意見からすれば、ショッピングの楽しみが少なくなってきています。
数年前に出張でイリノイ州とインディアナ州の境にあるコールドウォーターという小さな町に滞在しました。買い物に行くといえばWalmartしかなく、店内はいつも溢れんばかりの客が押しかけていました。逆に小さな商店が並んだ通りは閑散としてスラム化していたのを覚えています。
そういえばロサンゼルスのダウンタウンや、郊外のパサデナ市にはショッピングモールが数箇所ありますが、どこもMacy’s に代わってしまいました。そしてMacy’s自体も消費者のデパート離れとカニバル現象の影響のためか、余り客が入っていないように思います。
ボスの浅野も日記の中で「Walmartが一人勝ちして価格やサイズが同じであれば客はつまらない。人には感情があるのだ」と書いていました。元来、お買い物好きである多くの女性の立場を代弁して言わせてもらえば、ショッピングは我々にとって日常生活に必要なものを手に入れるだけではなく、色々なお店を見て回り、新発見したり、時には吟味したりして、日ごろの鬱憤を晴らすことの出来る、バラエティ溢れる楽しいものでなくてはいけないのです。寡占化が進み、小売店にバラエティがなくなれば、私のような主婦の不満はもしかしたら主人への小言に繋がるのかもしれません。もしくはネットショッピングの世界にどっぷりはまり、夫婦の会話がなくなってしまうかも・・・。どちらにしても、余り芳しい状態ではないですよね。
と言うわけで私のとりあえずの憂さ晴らしは、バラエティあふれる食料品スーパーを渡り歩き、新商品を試食してみることです。特に、私のような働く主婦にとって、食事の支度時間が短く済み、味の面でも満足のいく惣菜や冷凍食品の発掘はかかせません。
最近、英テスコ社傘下の小型食料品店Fresh and Easyで、高品質食材を使用し、テイストを追求した20品目ほどのグルメシリーズの惣菜や、冷凍食品が売り出されたというニュースを見て、いくつかを試食してみました。
まだ全ては試してはいませんが、一番のお薦めはロブスターとスイートポテトのクリーミースープでした。普通、他の食料品店でこの類のスープを買うと、少し味付けをしないとあまり口に合わないのですが、このスープはそんなことをしなくても十分に美味しく、ちょっとしたカフェで出されるスープの味でした。スープは2種類だけでもう1つはオニオンスープでした。次回はこれに挑戦したいと思っています。
またクリームソースとかぼちゃ、クスクスの付け合せのFontina Chickenという惣菜も、とても美味しくいただきました。価格は1人前$5.99と、他の惣菜と比べると倍近い価格ですが、このレストランクオリティの味であれば、妥当な値段であると納得しました。
以前は新しい総菜や冷凍食品と言えば、もっぱらTrader Joe’sで購入していました。理由は他の一般スーパーでは見つけられない独自のエスニックな味と品質に信頼を置いていたからです。“やっとFresh & EasyもTrader Joe’sに対抗できる商品を持ってきたのかな?ドンドンやれ!”と内心、応援したい気分です。
さまざまな店がしのぎを削り、競合に負けない個性のある、そして美味しい商品を開発してくれることは、惣菜を頼りにしている私たちのような働く主婦にとっても嬉しい限りです。
最後に、これは私の知り合いでSprouts Farmers Marketに卸している業者筋から聞いたニュースですが、近々、SproutsがHenry’s Farmers Marketを買収し、そして店舗も今後はテキサスやコロラド州に出店を増やしていくという話があるそうです。そのため、Sproutsに商品を主に卸している業者がテキサス州にウェアハウスをこの夏に新しくオープンする計画でいると聞きました。その直後に合併の情報についてプレスリリースがありましたので、信憑性が高くなってきています。
昨年、私の家の近くで、Whole Foodsの目と鼻の先にSproutsが開店しました。Sproutsの店長に「凄いですね、Whole Foodsの目の前に開店されて。真っ向から勝負を挑んでるの?」と冗談交じりに尋ねると、「いえいえ、あちらのお客がこちらにも流れて来るんで、うちとしては好都合です。」と返されました。
今、日本の大河で放映されている“江”は、戦国の世を終わらせたかったお姫様の話ですが、主婦の楽しみのためにも、米国食品小売業界の戦国時代は、終わらないで欲しいですね。
五十嵐ゆう子
JAC ENTERPRISES, INC.
ヘルス&ウエルネス、食品流通ビジネス専門通訳コーディネーター