Guilt-reduced Food 後ろめたさを軽減する食品
このタイトルを見て、「どういう意味?」と思う方がきっといると思います。まずは下の写真をご覧ください。
これは、アメリカ人が日常的に食べているマカロニチーズやトマトソースパスタを、Trader Joesがカロリーオフ・バージョンで開発したプライベートブランドの冷凍食品です。一般商品との違いは、豆乳で出来たチーズや、低コレステロールのヘルシータイプのオイルを使用したりしていて、一般の商品より健康的で低カロリーであることです。また、肉を一切使用していない(つまり動物の命を犠牲にしていない)ベジタリアンフードという意味合いも兼ねてGuilt-Reducedとうたっています。
先日、私が買い物へ行った際、このトマトソースパスタの試食が行なわれていたので、早速食べてみましたが、ベジタリアンだと意識しなくても美味しい味でした。一昔前のベジタリアンフードといれば、“良薬口に苦し”のごとく、“身体には良いけれどまずい”といったイメージがありました。しかし、ベジタリアンフードの歴史がそろそろ半世紀近くになる米国では、Whole Foodsなどの大手ナチュラル・オーガニック食品マーケットが成長してきただけあり、この手の食品は随分と美味しく、見た目もおしゃれになってきています。
私の高校生の息子の意見では、都会のティーンエージャーの間で、ヘルシーな食生活やベジタリアンフードを食べることはちょっとしたステータスで、「Very Cool(かっこいい)!」なことなのだそうです。以前はWhole FoodsやSprouts Farmers Marketなどで働いていた人達は、どこかヒッピーのような雰囲気だったり、神経質そうで痩せていて、いかにも菜食主義を彷彿とさせるタイプが多いなと感じていましたが、近頃は今時のオシャレな若者達が働いています。
ベジタリアンフードの人気と平行し、ここ数年は”グルテンフリー食品“も人気です。グルテンとは小麦やライ麦に含まれる小麦タンパクのことで、それらと水を混ぜた際に弾力を生む”粘り“の成分です。米国では、このグルテンにアレルギーを持つ人が多くいるとされています。特に遺伝的免疫疾患のセリアック病の人がグルテンを取ると、深刻な病気の悪化に繋がります。もっと身近なところでは、グルテンはアトピー発症の原因でもあると言われています。
2007年頃からグルテンを含まない食品が、非常に注目され始め、その後一気に広がりました。最初は健康食料品店でしか、グルテンフリー食品を買うことは出来ませんでした。しかし最近では、一般スーパーマーケットにも登場するようになってきています。有名な話では、クリントン前大統領の娘のチェルシーさんの結婚式で出された料理のすべてが、グルテンフリー(彼女は特にアレルギーではないにも関らず)であったそうです。小麦の代用として玄米や米粉、タピオカ粉などが使用されており、これらの原料を使用した味は、以前はあまり美味しくなかったのですが、今は改善されてきました。そうしてチェルシーさんのようにアレルギーを持たない人からも、肥満の原因でもある炭水化物が少なく、健康にも良いという理由から、グルテンフリー食品は求められるようになりました。
数週間前、南カリフォルニア州のオレンジ市にある“Veggie Grill”という店にランチを食べに行きました。
南カリフォルニアに7店舗あり、多くのメディアからも注目され、非常に成功しているベジタリアン・ファストフード店です。ハンバーガーやタコスなど、一般的なファストフードのメニューが全てミートレス(肉を一切使用せずに、テンペなどの大豆で代用)で提供されています。
マカロニチーズもグルテンフリー(米粉使用)でメニューにのっていました。ハンバーガーは、見た目や食感も肉が入っていないとは信じられませんでした。そしてなにより驚いたのが、3種類くらいのメニューをシェアして味見したところ、どれも非常に美味しかったことです。
店に訪れていた客は親子連れや、若者、普段はベジタリアンなどを気にしていないような筋肉隆々の男性客もいました。店内はパステルカラーを基調に、ポップで明るく、お洒落で楽しい雰囲気でした。
金額は通常のファストフードで支払うハンバーガーセットの倍はかかり、けして安い昼食代とは言えませんでした。しかし、これだけ美味しくベジタリアンフードを食べることができて、しかも通常のファストフードよりもカロリーオフで身体にも良いわけなのですから、たまにはこういうランチも悪くないなと思いました。ベジタリアンフードの良い点は、繊維質を含む素材を多く使用しているので消化に良く、お腹一杯食べてももたれないという利点があります。これならいつもはカロリーを気にして、いつもは控えがちなデザートも、後ろめたさを感じることなく食べることができます。
しかしここでカロリーの高いデザートを口にしては、元も子もないので、この日のデザートはフローズンヨーグルトデザートで有名な”Pinkberry”で、フルーツをトッピングしたヘルシーなヨーグルトアイスを食べました。
“Pinkberry”というフローズンヨーグルトのフランチャイズチェーンは、ロサンゼルスのハリウッド発祥で、今やニューヨークにまで広がる人気のデザート店です。韓国系移民が2005年に創業して以来、その病み付きになる“味”に、毎日食べないと気が狂ってしまうという熱狂的なファンまでいて、巷では麻薬患者を喩えにだして“クラック(麻薬)ベリー”と言うあだなまで付いています。
自分好みのトッピングを選ぶことができます。
一店舗あたりの年商は最低でも1億円で、ハリウッドの一号店は3億6~8千万円と言われています。デザート1つで平均5ドルはするので、けして安いとは言えませんが、低脂肪・低カロリーで美味しく、毎日食べても普通の高カロリーなデザートを食べるほど後ろめたさを感じないということが、アメリカで大ヒットした要因です。
最後に、話はがらっと変わりますが、お伝えしたいことがあり、こちらの写真を貼らせて頂きます。
この写真はエスニック輸入家具、雑貨、食器や食品を販売するCost Plus World Marketで撮影しました。Cost Plus World Marketは全米30州で260店舗を展開しているチェーンです。
私はいつもここで珈琲豆を購入しており、たまたま豆の補充に訪れた際、一番目立つ正面フロントで上記の陳列とポスターを見ました。今年の9月30日まで、ここで販売している日本産商品の売り上げから出た利益分を100%寄付するという取り組みです。
こちらのホームページでも内容を見ることができます。
その日は、奇しくも福島原発の放射能汚染がレベル7に引き上げられた翌日でした。そして、SN News(スーパーマーケットニュース)というサイトの見出しで、Wegmans Food Marketsが日本の食品について懸念し、今後、必要に応じた対応を強化するという記事がでた日でした。私はアメリカに食品を卸している人を何名か知っているので、このニュースを読み、心が沈みました。しかしCost Plus World Marketの取り組みを知って、すこしずつですが、希望の灯火がまた心に宿ってきました。
今、世界の至るところで、日本の安全と東日本の復興を祈り、出来ることから始めようとしている企業や人々がいるのだなと感じています。
私も知り合いの紹介でサポートを始めています。航空会社で働くあるアメリカ人女性が、仙台のボランティアグループを通じ、実際に現場で必要とされる物資の情報を集めています。彼女は逐次メールで情報を送り、我々はそれをチェックし、必要な物資を購入してロサンゼルスのトーレンスにいる彼女のもとへ届けています。航空会社も無償でこの物資を日本へ届けてくれています。直接、ニーズのある人々の手元へと物資が届けられるそうで、安心しています。
そして、ここでまた、結城先生の言葉を思い出しました。
まさしく“ひとつずつ、すこしずつ、いっぽずつ”です。
五十嵐ゆう子
JAC ENTERPRISES, INC.
ヘルス&ウエルネス、食品流通ビジネス専門通訳コーディネーター