米国エステシャンでなく(?)流通日記 “流るる水のように”
今回は、いつもの美容からすこーし外れまして、
先日浅野秀二のツアーに修行同行しました際のお話をしたいと思います。
現在、米国で働きたい小売業店の10位に上げられる、
カリフォルニア州北部で店舗展開をしている「ナゲット」を訪れました。
畑のど真ん中にある最新店舗は、輝くような黄色いひまわりのデザインの外壁と、
穀物を両手に捧げる女神たちの銅像で飾られ、もう店舗に入る前から人々の目を惹きつけます。
店内も外に負けず劣らずのユニークさです。
豪華で、可愛いデザインで、床は、今までどの店に行っても見たことも無いような
カラフルなデザインな陶器質感覚です。もちろん清潔に磨き上げられています。
溜息が出るほど楽しいお店です。
サンフランシスコの町から2時間近くもバスに揺られ、
疲れ気味の参加者たちの目も、すっきり覚めてしまったのではないかと思います。
でも、私は、そのナゲットでクレームをつけてみました。
浅野氏がバスの中で、顧客サービスでも優れた優良店であると話されていたので、
ここぞと思っての、実験的なクレームです。
店内で販売されていたとてもキレイな柄のテーブルナプキンや紙皿を買おうと見ていたところ
参加者の女性数名に呼び止められました。
「五十嵐さんこれ、値段はどこに書かれているのかしら?」
私は商品を裏返したりして、パッケージを見ましたが、どこにも価格の表示がありません。
ふと周りを見ると、横の壁に一枚、紙が貼られ、各商品名とそれぞれの価格が書かれています。
しかし、どれがどの商品の価格なのかはっきりしません。
ちょっと不親切だなと思い、部門の担当者を呼びました。
そこに現れたのは、どうみても若い学生パートの女の子。
彼女に「各商品には、直接値段表示がされておらず、横の壁にアイテム名と価格が書かれた紙切れ一枚。
これではお客が混乱するし、買う気になれない」と文句を付けてみました。
その女の子はニコニコを笑みを浮かべながら話を聞き、私の話に深くうなづきながら
「早急に対応したいとおもいます。貴方の提案に本当に感謝します。」と答えました。
そして、「皆さんは日本から来たのですか?」と訪ねて、いきなり
“あめ、あめ、ふれ、ふれ、母さんが~”とキュートな笑顔で日本の童謡を歌いだしたのです。
聞くところによれば、彼女は日本人のクオーター(彼女に流れている血の1/4が日本人)で
おばあちゃんが幼い頃に謳って聞かせてくれた歌を、覚えていたのだそうです。
そんな彼女はとても、生き生きとしていて、その店で働くことがとても楽しそうです。
みずみずしい女性とは、こんな人のこのを言うのかなと思いました。
これで普通のお客様なら、
いっぺんにクレームの原因である不満も忘れてしまうのではないかな?
良いスタッフを雇い、その教育が行き届いているのだなと感じました。
ナゲットはその店自体のみならず、働く人にもエンターティメント性が十分なのだと思いました。
店に入ってから出るまで自分も一杯笑い、そしてたくさんの笑顔をみた感覚が残りました。
ナゲットが店舗展開しているカリフォルニア州都サクラメントには、
オレゴン州から流れる豊かな大河が流れています。
その水がカリフォルニア州全体に届けられ、豊かな農業を支えています。
バスの窓から、その水を眺めた後にふとあることに気づきました。
ああ、私の仕事であるこのサービス業も、ここに流れている水と同じなのだ。
物を売る小売業も、人に施術を行う美容業も、通訳も、ガイドも、弁護士も、お医者様だって
人対人の仕事は全て、水のように移り変わりのある流動性ある商売―――
水商売なのだと思うのです。
“流るる水”の如く、お客様は気まぐれで、水が流れない場所は干上がります。
そして“流るる水”の如く、我々はお客のニーズに合わせて、自らを柔軟に変化していかないと
水はスムーズに流れていきません。
今日の経済低迷状態で、めっきり客足が遠のいた高級グルメの店舗を訪れ、
並ぶ惣菜を見たとき、バラエティーがあるのに、
きゅうりもセロリも乾いてかさかさで誰も手を付けていませんでした。
なにか悲しいなあと感じました。
私はかつてその店が非常に忙しく、多くの人でにぎわっていた頃を覚えています。
それはまだアメリカで高級なお店で買い物することそのものが、
おシャレだったつい数年前のことです。
彼らはまだ、あの頃の栄華が忘れられないのか?
それともなす術が見つからないのでしょうか?
今の時代の流れにあわすことが出来なければ、
本当に取り返しの付かないほど、その土台はひやがってしまうでしょう。
同じ日にホールフーズの人気店で見た惣菜は、
みずみずしく新鮮で、生き生きとしていて、美味しそうで、
ライブ(生きてる惣菜)だと思いました。
だから人が手を伸ばして食べてみたくなるのです。
これは自分の仕事でも言えることであると感じました。
あのカリフォルニア州全域へ流るるサクラメント河の水のように、
私は時代の流れを自らの目で見て、触れて、感じ取り、
ライブの情報を、皆様にお届けしていくために日々精進しなくてはいけないなと、
そんな気づきの旅となりました。
参加されたお客様、訪れた店舗の皆様、浅野先生、そしてサクラメントの豊かな大河に心からサンキューです。
五十嵐ゆうこ