WAL MARTロゴマーク変更の意味
チェーンストアーの店舗デザインを手がける私にとって、
WAL-MARTが、数年前にシンボルロゴデザインを変更したことは、
大きな衝撃であった。
流通業界の一部に携わっているとはいえ、企業内店舗建築担当者ではないので、
たまたま私のまわりで、あまり話題にならなかっただけのことかもしれない。
店舗デザインは流通業にとって、
最重要な対顧客コミュニケーションアイテムであると捉えている私には、
何故、それが業界内部各所で語られていないのかが、当時から不思議であった。
シンボル変更は、その企業マネジメントにとって
「社会から抱かれたいイメージの操作」という重要な戦略上のテーマ
であるはずなのだが。
流通業が、企業アイデンティティ形成の重要性を深く理解していればいるほど、
世界一の売上げを誇るWAL-MARTが数年前、何故、
イメージの変革を自ら実行したか考え込まざるを得ないはずだ。
しかし我が国の小売業は、
「店舗とそのデザイン(対顧客コミュニケーションの柱)」を
企業のブランディングアピールの最重要アイテムとして、育て、
継続的に管理発展させるという発想がほとんど稀薄だ。
もしかしたらブランドメイキングはメーカー業の課題と決め込んでいるようにも見える。
ここに我が国小売業の「流通業による企業文化育成に対する眼差し」の欠如が垣間見える。
という戦略視点問題はさておき、
新しい新ロゴ&シンボルのデザインポイントを私見だが列挙すると
1.小文字の採用
・ネット社会の文字文化=アルファベット小文字
・小文字のイメージ=カーブ多く柔らかい、文字高さのバラエティー感
・センシティブ=大文字に比べ押し出しは弱いが、デリカシーがある
2.星印に変わる新しいシンボルの採用
・花びらの様な、線香花火の可愛らしい火花のような、人によっては爆発マークという方も
・このシンボルのイメージ=広がり、発展性、明るさ、元気・勢い
従来はWAL-MARTに、サムウオルとンの象徴と云われる☆を加え、
WAL☆MARTを長年使ってきた。
コーポレートカラーも紺で、ファサード文字を白、時には赤を使ってきた。
この文字は太くパワフルだ。
D.S業態に相応しい。
ハイパーマートUSA時代にアピールしていたBuy Americanの象徴だ。
3.ロゴの明るいカラーリング
・店内では黄色で=専門的に表現すればクロームイエローと
カドミウムイエローの中間の微妙な色
・ファサードでは外壁色とのコントラストを際立たせなければならない関係で
白を使う(もちろん内部照明用という機能もあるため)。
4.コーポレートカラーの変更とその展開性への計算
・従来のロゴは存在感が強いがため、多用するには不向きであった。
新しいロゴ&シンボルは、強烈さは薄らいだがイメージが柔らかいため
繰り返しの使用に堪えられる。
・最近の店では新しいコーポレートカラーであるブルーを背景に、
部門の括りや商品分類サインに数多く使われている。
・レジアウトでも新ロゴ&シンボルのアピール
レジを済ませコンコースのベンチに座ってみるとよく分かるが、
ガゼット袋をセットする回転台下に、各レーンとも全て新ロゴとシンボルが小さく、
しかししっかり目立つよう配されている。
使用開始時期が定かではないのだが、
現在使われているコーポレートメッセージの「Save Money Live Better」は
新しいロゴ&シンボル登場と同時期ではないかと思われる。
今思えば、WAL-MARTのロゴ及びシンボル変更は、
「我々は時代に合わせ、変わりゆく人々の暮しニーズに合わせ、
より強力な国際企業として、自ら大きく変わるぞ」
いうメッセージであった。
<by 小林清泰>