ジャパンショップの衰退を憂う
2011年3月8日から4日間、東京ビッグサイトで
「JAPAN SHOP 2011」が開催される。
晴海会場から会場を移転した当初は、
ビッグサイト東館の1~6ホールをフルに使い、
ショップ什器から照明にいたるまで、
バラエティに富んだ見本市であった。
それが年々、規模縮小の傾向で、
今年は、とうとう東館の4分の1しか使われなくなってしまった。
ヨーロッパでは、ショップ業界向けの国際トレードショー
「EuroShop 2011(ユーロショップ)」がもうすぐ開催される。
2月26日~3月2日までの5日間、ドイツ北東の工業地域、
ドュッセルドルフのメッセ会場で大々的に開催される。
ユーロショップの歴史はかなり古い。
「ジャパンショップ」というネーミングはもちろん、
それにならってつけられたはずだ。
ヨーロッパ各地にあるメッセ会場へ行ったことのある方は、
ご存知だと思うが、
会場施設の規模が桁違いである。
驚いた方も多くいるのではないだろうか。
ハノーバーでも、ケルンでも、フランクフルトでも、
ミュンヘンでも、そしてドュッセルドルフでも、
どこの会場であっても、
その規模は、最低でも東京ビッグサイトの10倍以上。
最大のハノーバーメッセ会場にいたっては
敷地面積は30倍はくだらないであろう。
ユーロショップの開催は3年に1回だ。
前回は2008年2月23日からの開催であった。
私がデザインしている店舗は、ほぼ全てがチェーンストアである。
全国展開のコンビニエンスストア、ホームセンター、
そしてスーパーセンターなどで、
それらの店はローコスト設計が大半である。
スーパーマーケットもデザインしているが、
施主の要望もあり、どちらかといえば、
「シンプル・イズ・ベスト」なスタイルの店舗である。
そのため、最近まで情報収集源としての
「ユーロショップ」の存在が、意識から欠如していた。
しかし私のもう1つの仕事である
システム家具開発のために、
この20年間、
ヨーロッパのインテリア系・家具系の展示会へは通いに通った。
その中の1つで、システム収納関連の素材や部品のみを展示する、
業界人しか入場できない
「ZOW」というトレードフェアがある。
専門分野をディープに特化したトレードフェアである。
この年(2008年)は、「ZOW」と「ユーロショップ」の日程が
相前後していたため、思い切って「ユーロショップ」の視察を
スケジュールに組み込んだ。
実はもう1つ「ユーロショップ」を予定に組み込んだ
大きな理由があるのだが、長くなるので次回以降に譲りたい。
ヨーロッパの展示会場、MEESE(メッセ)は
どの都市でも交通アクセスが非常によい。
写真のように市内の地下鉄が、ダイレクトにメッセ会場に入ってくる。
エスカレーターを上れば、そこが入場登録ホールだ。
今年の「ユーロショップ」は、
通路を含まない純粋出展者ブースの面積だけで、
10万7,000㎡だそうだ。
通路はだいたいだが、専有面積と同等とみることができるので、
約21万4,000㎡となる。
面積と会場案内図だけではスケールがわかりにくいが、
図中の一つの建物が、
東京ビッグサイトの東館ぐらいと思っていただれば、
その規模の大きさが少しは想像できるのではないだろうか。
訪問した2008年は、
なんと90カ国、10万4,000人のトレーダーが来場したと、
ニュースで報じられた。
今年のテーマは大きく分けて4分野である。
各会場の出展者と面積は以下の通り。
1.EuroCIS-IT(ビジネスソリューション)
29カ国から334社の出店、1万1,830㎡
チェックアウトソリューション、マーチャンダイジング管理システム、
小売業のセキュリティシステムと在庫管理、
モバイルソリューション等。
2.EuroConcept
42カ国から769社、6万1,121㎡
店舗設計、店舗設備・備品、建築&ショップ・デザイン、
照明、清掃冷凍装置(空調を含む)等。
デザイナーズビレッジ2011という、
店舗デザイナーのプレゼンテーションの場がもうけられている。
(日本ではこれがない)
3.EuroExpo
30カ国から255社、1万1,811㎡
エキスポマーケティングとして
トレードショーブース用のスペースフレームを中心に、
コミュニケーションデザイン、
イベント技術、ライブ通信、機器スタンド等。
4.EuroSales
38カ国から537社、2万2,109㎡
ビジュアルマーチャンダイジング(最新のマネキン等)、
屋外広告と照明、 POSメディア等の販売促進系。
以上に加えて、リテールデザイン会議やユーロショップPOP会議など、
さまざまなカンファレンスが企画されている。
各展示会場で行われるパフォーマンスやディスプレイはすばらしい。
全身イヴ・クライン・ブルーの二人は本物の人である。
ジャパンショップでも、ユーロショップのように、
セキュリティーショーやリテールテックJAPANが同時開催されている。
しかし、私の問題意識は、ここからだ。
私は、店舗イメージを総合的にデザインすることに携わっている。
その視点からの問題提起かもしれない。
ユーロショップは、
店舗を構成する全ての要素を「ユーロショップ」で括り、
来場者に対し、
店舗業界を1つの産業としてプレゼンテーションしている。
ここへ行けば、ほぼ全てを一度で把握することができるし、
業界の推移もトレンドもしっかり感じとれる。
なぜ日本の展示会はジャパンショップのように、
業界ごとの細切れでのゾーン出展なのだろう。
出展する各業界とも、
“リテール”という共通の業界で
生きさせてもらっているはずではないのか。
なぜ、関連業界が横断的になって、
リテール業界活性化のためにひとつにならないのだろうか。
監督官庁による縦割り行政からなのか、
出展企業が、
店舗設備導入を検討する担当者の利便性を重視したためなのか、
主催者の企画の方向性なのか。
ジャパンショップは顧客目線からの企画とは感じられない。
外部からではあるが、リテール業界の一部を担うものとして
トレードショーのあり方を見つめ直さなければならないと、強く思う。
<By 小林清泰>