第2回 農産物標準クレート「イフコ」の導入
農産物の標準クレートとして「イフコ」が有名ですが、イフコの初期導入にたずさわった者として、当時を振り返り、取り組んだことを説明しましょう。
イフコのリターナル・システムを日本のスーパーマーケットに導入する際には、さまざまな課題がありました。
ドイツと日本では農産物の生産方法や商品化が異なり、消費面でも食文化、環境に対する考え方の相違があったためです。
日本の一般的なスーパーマーケットの農産品の品揃えは、アイテム数にして200~250、SKU数は250~350。
日本の農産品のカテゴリー分類は以下の通りです。
①一般果実:みかん・いちご・メロン・すいか・ぶどう・りんご
②季節果実:中晩かん・さくらんぼ・プラム・桃・梨・柿・栗
③輸入果実:グレープフルーツ・オレンジ・バナナ・レモン・その他
④加工果実・カットフルーツ
⑤サラダ・葉物:洋野菜・果菜(トマト・きゅうり他)・葉物・重量野菜・つま物・小物
⑥季節野菜:きのこ・なす・ピーマン・豆・山菜
⑦一般加工品:加工野菜・水煮・加工品・季節加工品・漬物材料
⑧土物:玉ねぎ・じゃがいも・にんじん・ごぼう・かぼちゃ・さといも・れんこん
⑨生花・その他
これらの商品はさらに、産直品、市場品、メーカー工場品、卸問屋業者品、PC(プロセスセンター)品のように、流通経路別に分かれています。
農産品は、季節や旬を打ち出しやすいためスーパーマーケットにとっては主力商品です。
その一方で、農産品の流通形態は多岐に分かれ、配送容器も段ボール、網カゴ、ネット袋、裸バラなど多種多様でした。
配送容器の廃棄処理作業には、皆がタダ働き同然で作業をしたといわれます。
そうした日本的な商環境の中で、イフコのリターナル・システム導入実験がスタートしました。
まず、第一に、産地~店内陳列~容器回収~洗浄~産地補給の流れが、波動なく一貫して連続的に行われること。第二に10トン車単位の物量で、採算性がとれること。この2つの視点で実験はスタートしました。
小売業は生協とイオンが参画し、商品は長野・群馬のJAなどの単品大量販売、高鮮度商品の「高原野菜」で始まりました。
産地での摘み取り、収穫、選果、包装、出荷検品、そして配送。物流センターでは入荷検品、店舗別仕分けと店舗への配送。店舗では入荷検収、バックヤード保管、店内陳列などの作業。
各工程における商品単位数、容量、品質、そして受け払いに関わる手順と要領のルール化、またリターナル・システムに関わる取り決め、用語の統一など、細部にわたる検討がなされました。
また、店内オペレーション面では、平台での陳列法、商品の見栄えと取りやすさ、POPなどの販促方法、イフコ容器の色づかい(当初は茶系)、新聞紙を敷いて使うか否かなどいろいろなことが課題にのぼりました。
果ては冬期の積雪状況や道路事情まで検討されたのです。
なぜなら関係者が皆喜ぶシステム構築でなければ永続性は保てません。最終顧客に、品質を維持しながら安定的に供給するシステムを、低価格で実現するという使命感をもった取り組みでした。
始まりは、レタスなどの洋野菜・葉物野菜でした。
具体的に、イフコ容器の試作、折り畳みネステイング要領、現場・産地教育、実容器数量(パレット単位)、受払い(汚破損含む)と容器洗浄のための容器物流センターの設置(尼崎)などが順次決まっていきました。
また空容器の搬送やフォークリフト運搬では、転倒危険のためフィルム巻策が必須であること、返却時には汚紙・ラベル・残屑除去など洗浄前工程での前処理が重要であることなど、多くの課題解決が必要とされました。
イフコ容器そのものをテスト導入のためにどれくらい用意するのか。
テストから順次拡大・展開していくためにイフコ容器の生産ロット数、貯蔵・保管場所などの準備を検討しなければなりませんでした。
また小売・流通では、運搬・マテハン上のドーリーやカートの準備を必要としました。
当初は、ターゲットを絞り、平均使用日量2000箱に想定し、全体で2万箱を用意してスタートしたのです。
開発準備から実証実験に取り組んだ成果はすぐにあらわれました。
小売・流通側からは、店内作業の負荷が軽減されたとの大きな反響を呼びました。
そして多くのスーパーマーケットで、イフコは農産品陳列什器の標準容器として広く使われるようになったのです。
<by 商人舎標準クレート研究チーム・中林>