第3回 標準化クレート原型の誕生
1988年、某スーパーマーケットでは、日配品・惣菜工場で使用していたA社製とB社製の在来プラスチック・コンテナ(プラコンと略す)を併用していました。
しかし、静電気によって生じる容器汚染の解消と、空容器回収と保管スペースの効率向上(ネステイング化)以上に工場を大幅FA化(ファクトリー・オートメーション)する目的から、専用容器として新たなプラコンに変えるという取り組みを、A社と開始することになりました。
これが、標準化クレート開発の原型だろうと思います。
プラコンの開発、製作には諸課題がありました。
例えば軽量化、洗浄性と清潔感、強度、対候性(屋外で使用された場合に、変形、変色、劣化等の変質を起こしにくい性質)、経年変形の有無などです。
当然、プラコンは、原材料として再利用することを要件に加味しました。
これらの課題を解決するために、価格・ロットを含めた性能要求仕様書を策定したうえで、各メーカーに見積照会書を出し、その結果、A社に発注が決まったのです。
このときのプラコン形状は、わずか2種類(深箱・浅箱)でした。
しかし、プラコン製作のための金型作り、プラコンの生産ライン、その能力、さらには生産工程などでさまざまな問題が発生し、導入当初は1日1万枚納入が間に合わないばかりか、納入車両の工面もつかずで、プラコン製造工場まで引き取りに行ったりしました。
温かい、出来たばかりのプラコンをトラックに積み込み、ロープ掛けして日配・惣菜食品工場に持ち帰り、いざ、ロープを解くと変形したままのプラコンになっていたなど、笑うに笑えない出来事もありました。
このプラコンの洗浄ライン・システム(プラコン保管システム含む)の開発でもいろいろな問題が発生しました。このシステムは、ゴミ・塵埃除去から洗浄、乾燥、スタッキング、保管までを1時間あたり6000個処理しようというものでした。
この時に発生した問題は、プラコンに貼付したラベルが剥離できずに、ヘラで手作業で剥がしたりしました。数カ月もすると、プラコンが黒ずみ、洗浄不足?洗浄能力不足?洗剤不良?と、大騒ぎ。
静電気に起因していることがわかり、この問題解決にも時間が掛かりました。
店舗側からはプラコンに触ると手が汚れる、商品にも汚れが付着するなど、クレームが殺到し大変でした。
一方で、小売・流通系の低温物流センターにおける食品メーカー(とりわけ日配・惣菜商品)からの納入荷姿は、納入業者専用の段ボール、形状や色が多種多様なプラコンなどでした。
これらのバラバラな形態の梱包容器から、商品を取り出して検品を行い、店舗別に商品をピッキングし、エリア配送店舗別に仕分け(アソート)をし、さらに店舗別の最終検品と、出荷のための仮置きを行うとなると、各工程で多種多様な容器の整理・整頓のために、商品本来のスペースの3~5倍の空スペースを設ける必要がありました。
それだけ作業動線が長くなり、ユニット・コントロール本来の物流効率化に逆行している現象が多々ありました。
こうした多種多様な容器・プラコンの輻輳(ふくそう=物が一カ所に集中して混雑していること)問題を解決するために、商品部門・カテゴリー単位の集約化を行うとともに、PC(プロセス・センター)、TC(トラフィック・センター)の再配置によって、少なくとも店舗への納入荷姿の標準化に取り組まなければなりませんでした。
さて、冒頭のA社との取り組みの話に戻ります。
某スーパーマーケットでは、2000年頃から店舗数が増え、出荷数量が拡大するにつれ、センター内のプラコン容器置場が手狭となってきました。棒積プラコンのスペースが限界となり、空容器回収もままならなくなりました。また年末繁忙期にプラコンを継続使用することも限界に至りました。
実際には、2002年夏から、在来プラコンの諸課題、具体的にはネステイング化と静電気汚損解消、ラベル貼付剥離性などの解決策を具体的に整理し、各メーカーに性能要求書を再提出させ、その結果、B社との具体的なプラコン(標準クレート誕生)開発が始まりました。
その際の主な内容は以下の通りです。
①ネステイング可能容器の開発=ネステイング効率50%目標(深箱時)
基本色の濃淡で同一色重ね時スタッキング、異色重ね時ネステイングの採用
②静電気帯電防止策
特殊シリコン系粉末微少添加、万が一、付着しても目立たない色として緑系を採用
③ラベル貼付時の貼付性の保持と剥離性の確保
ラベル貼付可能箇所に線絞・絞表面成型(梨状・イボ)加工
④環境問題(資源再利用)
古容器資源再利用率50%以上とする。また成型年月日の表示など、先ず上記性能を維持保証する金型開発から始め、約4カ月の試行錯誤を重ね、ライン生産に約3カ月掛け作り貯めました。
新プラコン導入の運用は、年末繁忙期を避け、2003年1月に一斉にスタートしました。
こうして振り返ると、容器の寿命は10~15年周期といわれますが、開発技術、時代環境とともに、その機能や形態が進化してくることが分かってきます。
<by 商人舎標準クレート研究チーム・中林>