第4回 標準クレート導入効果とさらなる普及に向けて
日本スーパーマーケット協会ホームページの「物流クレート(通い箱)標準化」に
㈱北陸シジシー導入概要のニュースが掲載されています。
この記事内容から推察してみると、
報道されている以上の大きな導入効果が見えてきます。
今回は、この事例から学びたいと思います。
さて、発表されたニュースリリースでは、
北陸シジシーグループ9社・92店舗で標準クレートを5000枚導入となっていますが、
実際には、準備された総クレート枚数は4万枚規模と推測されます。
なぜなら、450坪型スーパーマーケットでは、日配・惣菜部門における納入クレートは、1店舗当り1日平均で約43枚であり、
クレート回転日数は4~7日です。
さらに曜日による波動係数を±1.2とし、52週の波動係数±1.2を加味しますと、
92(店舗)×43(枚/日・店)×1.2×1.2×7(日)=39,876枚、
およそ4万枚となります。
したがって、5000枚導入とは、1日当りの店舗納入ベースの枚数と理解できます。
従来、店舗では日々使用されるクレートの2~3倍の空クレート容器を
保管し、在庫します。
当然、貯留スペースが必要になります。
同様に物流センター、ベンダー、メーカーそれぞれも貯留スペースをもたなければなりません。
また各流通段階で、保管クレート容器の整理・整頓、搬送、ハンドリング、洗浄などの付帯作業が行われます。
標準クレート導入前には、小売事業主・ベンダー・メーカー等7~13事業所が
個別に専用クレートを使用していたことを考えると、
導入後は使用クレート総数が1/5~1/10に大幅に削減されると推測されます。
すなわち今回の導入では、地域・エリアが一体となって
以下の取り組みを行うことを目指しているのです。
①使用済み、あるいは普段使用してない空容器の保管スペース、
そして空容器にかかわる整理・整頓、洗浄作業スペースの省スペース化と
作業の手間ひまの軽減
②使用クレートの回転効率の向上、使用資材の大幅削減
③小売事業主・ベンダー・メーカーの保管、整理・整頓、洗浄の
共通プラットホームの形成によるスペースの大幅削減、作業の集約化
④必要なときに必要な量の清潔な容器の供給(かんばん方式)とリターナルの実現
コスト削減、スペース削減はもちろんですが、結果としてCO2削減による
環境配慮型のビジネスモデルが構築されることへの期待が広がります。
この「物流標準クレート」の取り組みは現在 日配・惣菜部門ですが、
日本のスーパーマーケットのコア・コンピタンス商品は、地産地消を基本とした各地域・エリアでの高鮮度商品群、すなわち生鮮3品・日配・惣菜が核商品です。
それも半径100~150km圏内を想定したエリア単位での業界・企業の壁を越えた取り組みが本来の方向性であるとも言えます。
本来、小売流通業は商品提供が基本です。
したがって「物流標準クレート」普及は一般社会的なソフト・運用面でのプラットホーム形成の始まりだと確信しています。
しかし、「物流標準クレート」を普及させる上での最大課題は、
クレートの紛失問題と紛失責任(賠償主)問題だと言っても過言ではありません。
モラールが高いといわれる日本でも、1サイクル当たり通常1%前後のクレート容器の行方不明・紛失が発生しています。
1%を少ないと思われる方には、実際に計算された数値を示せば驚嘆されるはずです。
たとえば、1日5000枚使用された時、紛失する1%の枚数は50枚。
年間では1万8000枚にもなります。
と言うことは4万枚用意しても、すぐに不足してしまうため、
3~4カ月ごとに補給しなければなりません。
この1%を低減化するにはどうしたらよいのでしょうか?
やはり、プラットホームに参加される企業の従業員、作業者のモラール向上と
そのための教育が必須になります。
さらに、空容器回収時の運転手に受払確認(検収)を含めたインセンティブな貢献報酬制も必要かもしれません。
例えば1枚回収で0.5~1円支払いするなど、
成功報酬制の導入が得策に思われます。
すなわち、この「物流標準クレート」持続の鍵は輸配送業者も含めたプラットホーム形成がカギを握るのです。
今回は、日本スーパーマーケット協会の㈱北陸シジシー「物流標準クレート」導入の記事から、今後の普及促進について考察しました。
小売流通企業が中心的な役割を担って推進していただきたいと強く願っています。
最後に、小売流通業界での一般的な容器の流れ、その概要について再整理・体系化しますと、下図のようになります。
参考としていただければと思います。
<by 商人舎標準クレート研究チーム・N>