第1巻 岩崎高治の巻[第4回 オペレーション改革」
結城
この作業、オペレーションと言いますけど、
これが、他の追随を許さないレベルに達すると、
後から競争相手がそう簡単に真似できるものではないですからね。
日本でも優れた企業、優れたスーパーマーケット、
アメリカやヨーロッパでも、優れた企業、優れたスーパーマーケットというのは、
このオペレーション面の充実が、やっぱり、図られている。
そしてそのオペレーションが崩れてくると、
例えばアルバーソンのように、一挙にだめになってくる。
そう見ているわけですけれども、
私の自宅の近くにライフコーポレーションのお店ありますので、
現場を時々拝見させていただいています。
オペレーションの部分、作業の面では、
着実に定着してきているという感触を受けているんです。
岩崎社長
ありがとうございます。
結城
まだまだという風に、社長としてはお思いでしょうけれども(笑)。
今おっしゃったように、
「やらなければならない」という使命感、これは非常に重要なことですよね。
岩崎社長
まだまだというのは、決してお店の従業員や本社の人間が、
不十分な働き方だと言うことではなくて、
目指すべきゴールが、非常に高く設定してあるからです。
その意味からすると
もっともっと改善できる点はあるのではないかなということです。
結城
今の小売業界などを見ていると、
下り坂のエスカレーターに乗っているような印象がありますので
常に前向きに上り続けないと。
特にオペレーションというのは黙っていると
レベルが下がってきてしまいますからね。
★分業で成り立つ小売業はおもしろい
岩崎社長
今の結城さんのお話、下りのエスカレーターというお話でこちらが思ったのは
人の入れ替わりですね。
小売業の場合非常に人の入れ替わりが激しい。
パートタイマーさんで運営している店舗比率が、当社の割合7割程度あります。
パートタイマーさんの場合、やはりご家庭の事情などで退職される方も多い。
ようやく、教育をしてオペレーションが固まったと思っても、
その方が辞められると、やはり、売り場のレベルなり、オペレーションが落ちてしまう。
それを下支えするというか、そういったことがあっても、
安定的な売り場を維持するためには、
作業の標準化なり、業務改革ということをやっていく必要があるなと思っています。
結城
いわゆるレイバースケジューリングというようなことを導入されていると?
岩崎社長
将来的には入れていきたいと思いますが、
今は、その基礎となる一つ一つの作業をきっちりとやっていこうと思っています。
大前提となる環境整備、整理整頓しっかりしましょう。
品出しの作業をきっちりとした方法でやりましょう、
あるいは、平日と週末に分けて、
この曜日のこの時間帯にはこの作業をしっかりとやりましょう。
そうしたことを、会社としてしっかりと決めて、
各部門の責任者が、それに基づいてマネージメントができ、
また、その上にいる店舗管理職、店長、店長代理がしっかりと管理できる。
それができるように、見える化をして、
管理ができる体制を、今つくっている最中です。
結城
すばらしいですね。
こんな言い方をしては失礼かもしれないんですけれども、
商社ご出身の方とは思えないような、
店頭現場でのお話がここまで出てくるということは、本当にすばらしいですね。
もともと食品スーパーマーケットというのは、物量をさばくお仕事なんですね。
バックヤードに毎日、朝、生鮮食料品が届いて、
それから毎日じゃないけれども、ドライグロサリーや雑貨が届いて、
それが店頭に出ていって、最後にはレジを通って、
チェッカーさんの手に、一つ一つ全品が渡って、
もう、何トンという商品がお客様のバスケットに入って食卓に並ぶ。
商品をバックヤードから、店頭から、お客様のところまで運ぶと言う、
その仕事がスーパーマーケットの日々の基本なんですね。
それがきちんといかない限りは、
いかに販促をして、安く提供をして、売れ売れといっても、だめです。
きちんとお客様に商品を提供する、このプロセスが完成されていなければ
社会的機能を果たせないと、思います。
この考え方が、根幹が、そこにあるという認識が、
ライフという会社の中に定着する。
これはもう素晴らしいことだと思いますね。
岩崎社長
小売業の仕事というのは、当たり前ですけれども
決して1人では自己完結しない仕事だという風に思いますね。
店舗を出すのに相応しい場所を見つけて来る人間から始まって、
契約をして店を建てて、そのお店で働く人々を採用する人事部があって
それを教育する人間がいて、商品を仕入れる人間がいる。
いざ、店がオープンした後は、
日々、商品を仕入れたものを運ぶ人間、いわゆる物流部があって、
その商品を加工して、商品を並べて、販売する人間がいて、
金銭をお客様からいただくレジの人間がいる。
それをまた本社に集めて、金銭の扱いをする部局もある。
いずれも各部門部門が、それぞれの役割を果たして、
初めて成果が上がる。
その一つ一つが有機的に結びついていてこそ、初めて会社はうまく回り、
業績は上がる。
それぞれが有機的に結びついていない、あるいはみんなが違うことを考えていると、
業績はちょっと厳しくなるということだと思います。
そこが小売業のおもしろさであり、難しさであるという風に思います。
結城
分業ということですね。
続きます