第1巻 岩崎高治の巻[第5回 チームワークとモチベーション]
結城
ちょっと話が変わるかもしれませんが、
商社のお仕事とやっぱり違うんでしょうか?
岩崎社長
商社もいろんな業務があると思いますけれども、
自分が15年前、20年前にやっていた果汁の仕事というのは、
現地にいって、サプライヤーと交渉して、値段を決めて、
ある程度、自己完結できる仕事だと思います。
もちろん自己完結できない仕事も商社には山ほどありますが。
その点、小売業、スーパーマーケットの仕事というのは、
原則1人でできる仕事っていうのは無いんじゃないかなと思います。
そこが大きな違いだと思いますね。
結城
岩崎さんにとっては先輩に当たるかもしれませんが、
住友商事からサミットストアに行かれて、社長、会長を務められた荒井伸也さんが、
商社の仕事とスーパーマーケットの仕事の違いをスポーツに例えています。
商社の仕事は例えば柔道の団体戦のようなものであって、
5人出てそれぞれが、1人ずつが勝ち抜きで柔道をする、試合をする。
だから一人一人の力量が必要。
けれども食品スーパーマーケットには、野球やサッカーのようなポジションがあって、
それぞれの分業があって、全員で一つのボールを追いかけてゴールしなければならない。
もしくは得点しなければならない。
ポジションや役割、分業というものがあった上で、
全員のチームワークが必要である。
そこが商社と違うんだ。
荒井さんはそういう風におっしゃっているんですね。
岩崎社長
そうですね。
荒井さんの本や講演は、非常に勉強になるので、
読んだり、講演を聴かせていただいたりしていますが、
今の柔道の話というのは初めてお聞きしました。
まさにおっしゃる通りだと思いますね。
スーパーマーケットの仕事というのは、非常にチームワークが大事です。
いかにその働いている人間、働いている従業員のベクトルを一つに統一するかということ、
これが会社の経営というか、会社の業績を上げる上で非常に重要な点だし、
それに非常に注力しているところですね。
結城
15の改革の次のステップに入ったということですが、
具体的には、どのようなことなんでしょうか?
岩崎社長
この2008年の3月から、第3次の中期3カ年計画に入りました。
当面の目標にしておりました売上高4000億、
売上高対比の経常利益の2%はほぼ達成。
そして先月の目標の200店舗の出店はも達成できたところです。
結城
おめでとうございます。
★働きがいのある会社づくり
岩崎社長
ありがとうございます。
第3次中期三カ年計画で掲げている具体的な目標は、
一つは経常利益の100億円、これを安定的に達成していこうと考えています。
それからもう一つ。
創業50周年が、第3次中期三カ年計画が終わる翌年、2011年度になります。
創業50周年のときには、250店舗5000億を達成しようと考えています。
数値的な目標としてはその2つになるわけですが、
もうひとつ、この3年間では「働きがいのある会社」づくり、
これを全社を上げて取り組んでいこうと考えています。
人材の確保に始まり育成、評価、活用とこういったそれぞれテーマに対して、
一つ一つアクションを起こしていこうと。
結城
私はいつも『FORTUN』Eの働きたい企業ランキングをあげますが、
ウェグマンズだとかホールフーズマーケットという食品スーパーマーケットが
アメリカの名だたる企業を後ろにして、「働きたい企業のランキング」の上位にくる。
ライフがそういう方向を目指してらっしゃる、
そのように理解してよろしいんでしょうか?
岩崎社長
ウェグマンズまでいけるかどうかわかりませんけれど、
目指す方向としてはそのように考えています。
それは何故かと言うと、第2次中期計画のときは15の改革で取り組んできましたが、
総括すると、8つのテーマについては、一応成し遂げたかなと。(中略)
残された課題の中で一番大きいのが、やはり人事関連。
教育もそうですし、評価制度もそうですし、マネジメントもそうですが、
課題としては残ってしまったなと、いう風に思っております。
従ってこれをこの三年間では、徹底的に問題を解決していこうと思っております。
実は第2次中期計画では15の改革と言っていたが、
第3次中期計画では12にまとめ直して、「12の課題」という言い方にしています。
その中で、人事関連で残ったテーマをまとめて「人事の改革」として
この3年間で取り組んでいきたいと考えています。
結城
先程のチームワークで仕事をしなければならないというスーパーマーケットの事業の特性と、
人事の改革は、非常に繋がってくるということになるわけですね。
(中略)ライフコーポレーションが日本で最大の店数を持つ会社で、
そして人事の改革をするというその改革には、
日本のさまざまなスーパーマーケットにとって、共通するそういう課題が、
やはり含まれているだろうと思うんですね。
この人事の改革となると、どういったところから入るということになるんでしょうか。
岩崎社長
幾つか切り口はあるんですけれども、
一つ芯が通った考え方という意味では、
やはり従業員のモチベーションをいかに高めるかということだと思います。
ここ数年お陰さまで、業績はある程度上向いています。
大きな要因は、やはり従業員が一生懸命頑張ってくれている、
モチベーションを高く持って日々努力してくれているということです。
社内でも言っていますが、競合対策にはいろんなやりかたがあると思います。
品揃えを変える、接客をよくする、
あるいは価格を下げる、チラシを打つ、ポイント何倍セールをやるというようにです。
もちろんそれはそれで短期的な成果は上がると思いますが、
本当の意味で競合店対策をやるのであれば、
やはり従業員のモチベーションをいかに高めるていくかだろうと。
これが中期的には一番効果が上がることではないのかなと思っています。
それと、もう一点お話しすれば、
第2次中期計画は幹部、本社の幹部、それから一部店長も入り、
自ら集まって自ら議論をして方向性を決めて、
自分たちが参画意識を持って作った。
だからこそ、やらなければいけないという意識で、
それぞれの部署が動いていった。
これが何よりも大事だったなと思います。
4000億の売上高の企業規模になればトップダウンで決めること、
それからボトムアップで決めていくこと、
両方あるというふうに思います。
特に本社の人間、それからお店の人間がいかに参画意識を持って、
自分の会社だと、自分の会社をよくしようという思いを持ってもらって働く事ができるか、
そういう風土を作ることが非常に大事だと思いますので、
だからこそ、この3年間は人事の改革をやっていきたいと思っています。 (了)
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この後、対談は佳境に入ります。
スーパーマーケットという組織の意思決定のあり方、値上げ問題、PB開発、
そして海外と国内のスーパーマーケットの差異性などなど、話はどんどん盛り上がりました。
そして、若きリーダー・岩崎高治社長はライフコーポレーションへの熱いビジョン、
スーパーマーケットへのロマンを1時間30分にわたり語ってくださいました。
残念ながら、[第1巻 岩崎高治の巻]シリーズはここまで。
詳細はぜひ、本編「CDオーディオセミナー/知識商人シリーズ」をご聴講ください。