第2弾/大久保恒夫の巻[第5回] 豊富な品揃えの誤解
<中略>ユニクロの改革から、話は無印良品のコンサルティング時代のエピソードに及びます。
当時、無印良品は売場を拡大し、商品開発を増やしていましたが、
前年比売上高、既存店前年比売上高ともに90%という厳しい状況にありました。(事務局)
大久保社長
無印良品は当時、300坪だとか400坪だとか大きい店を作っていって、
その売場拡大に合わせて商品開発をものすごくやっていったんですね。
そして、300坪の店に合わせて開発した商品を、100坪の店にも並べていた。
新商品だから売れるんじゃないかと思ったわけです。
そこで、どういうことが起こったかというと、
売れ筋商品のスペースを縮めていって、
そのスペースに開発した商品を並べていったんですね。
結城
なるほど。
大久保社長
それで私が「売上落ちたでしょ」っていったら
「そうなんです」と。
売れ筋商品で大半の売上げを稼いでいたのが、そのスペースを縮めていった。
だから売上げも落ちますし、下手すると品切れしちゃう。
新しく開発した商品はそんなに売れないので、
品揃えの数を増やせば増やすほど、売上げは減るもんなんですね。
売れ筋の売込みが弱くなってしまうから。
結城
それはね、鈴木さんも「絞り込み」とさんざん言われたし、
昭和51年にヨークマートが勝田台というところで第一号店を作ったんですけれども、
イトーヨーカ堂の食品と雑貨の部分だけで新しいフォーマットを作ろうというときに、
イトーヨーカ堂の大きな食料品売場のコンパクト版を450坪に込めて同じ現象が起こったんですね。
★「絞り込み」とは「売れ筋の拡大」
大久保社長
そうですね。「絞り込み」も、当時有名になって、
ヨーカ堂が「絞り込み」やって、うまくいったというので、
「アイテムの削減だ」って他社もやりだしていました。
私はそうした売場を見に行って「全然違うな」って思ったんですね。
ヨーカ堂は「絞り込み」っていうよりも、
「売れ筋の拡大」をやっていたんですね。
売れ筋商品をもっと売り込む必要があるから、
その売り込みたい商品のフェースをもっと広げる。
フェースを広げるとどうしても棚から落っこっちゃう商品が出ますが、
それはそれでしょうがないので、それはカットしましょうと。
だから結果としてアイテム数は減ります。
じゃあ、売場ではどうなっているかというと、
売れ筋商品が、きちんと売り込まれている売場になっているわけです。
ところが他店にいきますと、一列にフェースを拡大して絞り込んでいるだけなんですね。
現場では、「作業効率が上がりました」という。
でも「売れ筋商品の売り込みじゃない売場になってて、
これだったら売上げが落ちるな」と思いました。
そうしたら「全然売上げは上がりません」というような話も聞く。
「同じように見えていても全然違うな」と思いました。
結城
最初の大久保さんが言われた「現場が大事だ」ということと、
「お客様が大事だ」という、このお客様を忘れて、
ただ、絞り込みという形を取ったらダメだということですよね。
★アイテム数が少なくても品揃えが豊富な店
大久保社長
それからヨーカ堂でも、ずっとデータ見ていると、
本当に一部の商品で、大変な売上げを稼いでいる。
だから、それらの商品をいかに売り込むかが、
お客様のニーズへの対応なんです。
アイテム数を増やしていろんな商品を置くことじゃなくて、
より多くのお客様に支持されている、満足されている商品を
よりアピールして売り込んでいくか。
それこそがお客様のニーズへの対応だと私は思います。
結城
その通りですね。
大久保社長
アイテム数と品揃えで、こういう話もありました。
ユニクロがある時期、GAPに比べて品揃えが悪いといわれていた。
その時に、アイテム数を調べてたらユニクロの方が多かったんです。
その後、ユニクロが売れ筋商品を拡大していって、アイテム数が減った。
アイテム数が減ったにもかかわらず、お客様からは品揃えが良くなったという声をいただいた。
「あぁ、お客様は自分がほしい商品が売り込まれていると、
これもほしい、あれもほしいと思い、品揃えが豊富な店、よい店だ」って評価するんだと、
その時、改めて思いましたね。
結城
それはある種、商業小売業の真理ですよね。
アイテム数は少ないんだけれども、品揃えが豊富だとお客様には受け止められると。
これは正しく真理ですね。
大久保社長
私はよく言うんですが、
お客様はカウンターを持ってアイテム数カウントして調べて、
こちらの店の方がアイテム数が多いから品揃えが豊富だということではまったくない。
お客様は、この店、買いたいものがあるかないかで、
品揃えが豊富か、豊富じゃないかって思っていると。
だから結局は、お客様なんだと。
お客様がどんな気持ちになるかがすべてで、
売るほうの立場の考え方とは全然違うんだと。
よく言いましたね。