[第5回] 商品に語らせろ
経営戦略とPOPの関連付け
結城義晴
僕はアメリカ視察の中で、
「商品に語らせろ」と主張しています。
商品がまず語って、POPなどは、
その商品の特性とマッチしていないとダメなんです。
POPはあくまで脇役ですからね。
POPが主役というのはちがう。
POPを売っているわけではないですから。
中山政男
その通りです。
結城
お客さんはPOPを買うわけではないですし。
いや、芸術的なPOPで、
「買っていきたい」と思えるくらいのものならいいんですけどね!
素人の、統一の取れていない、
何が言いたいのか分からないようなPOPが
日本の売り場には氾濫しているということになるんですね。
中山
それなりのコンセプトを持った店、
例えば「安売りでワーッと売る」っていう店なら
POPを多用してもいいと思いますが。
ただ、最新の冷凍ケースなど什器にこだわっていても、
POPがめちゃくちゃでは、
全体の雰囲気がぜんぜん合わないのでもったいないですよ。
結城
でもね、ディスカウントの店なんか、
例えばアメリカのアルディだとか、コストコがそうですけど、
そういうところにはお金をかけませんよ。
POPにお金をかけていたらディスカウントできないんです。
そういう店は徹底して、標準化して、
シンプルなPOPをつける。逆に、きちんとしたクオリティのあるものを売る店は、
やっぱりプロが作ったPOPをつける。
アメリカの小売業は経営方針や戦略と、
オペレーションや現場が一貫しています。
<アメリカ・ホールフーズの「商品が語っている」売り場と脇役のPOP>
流行のコトPOP、手書きPOP
中山
こういう内容のPOPがね、今、多くなってしまっているんです。
結城
(悪い例を見ながら)う~~~ん。
スタッフ
黒地に文字をのせるというのは、流行なんですか?
中山
そうですね。
私も黒板POPとして教えているわけですが、
黒地だから悪いのではなく、内容と作り方の問題です。ある店が始めたんですよ。
それで確かに商品が売れたということが伝わり、
これはいいということになり、真似をし、
広まっていったわけです。
たしかにこのように黒だけに限らず、
ベタ塗りに抜き文字は目立つのですが、
どの店でもこの作り方を真似てしまうと、
内容が伴わない場合は、
逆に効果が得られないんですよ。
サービス残業の問題
中山
また、このようなPOPをつくるのに、
仕事が終わった後に時間をたくさん費やして、
作業しているということも聞きます。
結城
サービス残業ですね。
中山
本当にこれでいいんだろうかと思うことがあります。
もちろんPOPにはいろいろな種類があるわけで
時間がかかることも分かりますが、
この内容のPOPにこんなに時間をかける必要があるのかと思う。けっして適当にやれと言っている訳ではありませんが、
もっと効率を考えないといけないのではないでしょうか。
結城
労働基準法違反まで奨励するかのごときPOPづくりは、
意味がありません。
マネジメントの問題がPOP制作現場にも、
出ているということですね。
中山
(赤地に緑の文字のPOPを見せながら)
これをつけていた店の店長と険悪になったことがあるんです。
使われている文字はタイトル文字用で、
しかも色づかいが補色だから、
お客さんは読みづらいですよね。
だから、これは見づらいではないですかと言ったら、
「売れているんだから何が悪い!」と怒るわけです。
結城
色に関する基礎知識の問題ですね。
<ケース、POPとも上品にコーナーづくりをしている>
つづく