[第9回] 業績とPOPの関係
いいPOPのお店もたくさんある
結城義晴
最近は常識から外れているPOPがたくさん見受けられますね。
中山政男
内容だけではなく、
取り付け方にも気配りが必要ですよね。
もちろん、ひとつの店でも、
全体のPOPが乱れているわけではないのですが。
結城
業績のいい店はこんなことはないですね。
実際、お持ちいただいた写真の中で、
いいPOPだなと思うのは
サミット、オーケー、ヤオコーなどですから。
スタッフ
ある取材で、
記者がヤオコーの商品本部長に、
「最近『コトPOP』が流行っていますが、
ヤオコーでは販促にどのように
活用していますか?」という質問をしたんですね。そしたら、商品本部長は言下に
「ウチではやりません」と言ったんです。その理由は先生も言われたように、
資材コストやインク代もかかる。
しかもデザインがばらばらになるから
ということでした。本部が一括して制作するんですが、
それでも店舗のほうで、
どうしてもこの1品を売りたいという希望がでれば、
本部が了解してOKをだすと。
結城
仕組みになっているんだね。
スタッフ
そうしないと、売場が混乱しますから。
結城
トレーダージョーは店舗で制作するんです。
今、全米に350店舗ほどありますが、
店ごとにデザイナーがいるんです。
でもどの店に行っても、
トレーダージョーの基本デザインがあって、
それは同じなんです。その中のディテールを、
店ごとのデザイナーがやっている。
トップパネルが特徴的なんですが、
ある種、芸術作品なんですよ。だからと言って、
欧米がなんでもいいというわけではない。
日本でも、いい会社の販促物は良くできています。
中山
成城石井は手描きPOPもありますが、
デザインはもちろん、
書いている内容がいいんです。お客はそれを見て、
あぁこういう商品なんだと気づくし、
もっと知りたければ、
スタッフがきちんと質問に答えてくれる。
コトPOPの解釈
結城
私は「知識商人」をかかげて、
これからは知識や知恵が大事だと言っているんですが、
POPひとつとっても、基本の知識が必要です。これらの「コトPOP」を見ていると、
あまりにも差があり過ぎますね。
スタッフ
価格競争が激しくなると、
勢い、こうした「コトPOP」が
多くなってくるようです。
中山
それはあるでしょうね、きっと。
さきほども言ったように、
売場にたくさん付けたら、
目立って売れたことがあるんでしょうね。もちろん、役立つ内容を
きちんと表示している店もあります。ですから解釈の違いなんだと思います。
私はシズル感やシーンでPOPを作れ、
などと言っていますが。モノを売るんだじゃなくて、コトを売る、
それが「コトPOP」だということ、
その考え方はいいんですね。
とてもいいんです。だけどそれが独り歩きをしてしまって、
「魚屋の独り言」って言うと、
全国の魚屋が独り言をいうような、
今の状況になっているケースがある。
結城
本当ですね(笑)
POPをつける理由
中山
成城石井のPOPは文字数は多いんですが、
内容はすごくいいんです。
たとえば、生キャラメルひとつとっても、
ブームの先駆けとなったキャラメルを
成城石井では置いていない。そのかわり、
「私たちはいろんな
生キャラメルを食べてみました。
話題の商品だけではなく、
この商品が美味しいと思いました。
だから、おすすめします」
というように書いてある。
結城
この「だから」が大事なんですね。
中山
「おすすめ」ってよく書いてありますが、
内容を見ると何が、なぜ、おすすめなのか
わからないPOPがあるんです。価格なのか。
味なのか。
新しいからなのか。何をすすめているのかがわからない。
でも遡ると、本当は、
「こういうことですすめるからおすすめ品にしよう」
とタイトルをつけていたはずですよね。一番安い価格の商品は、
タイムサービスにしよう、
その次はチラシ広告に載せたものを
広告の品にしよう。
次はおすすめ品にしよう、
といった感じで。これらはだいたいの何%の価格差があると、
頭に置きながらタイトルを決めていたんですね。
結城
理屈があるんですね。
中山
そうです。
それをPOPカレンダーに
落とし込んで、すすめてきた。今は、作るごとに内容が変わっても、
良しとしているように見える。一方、過去のやり方や商品情報が
役に立たなくなりつつあるのも分かります。
お客の嗜好の変化や環境の変化、
新商品にも対応しなければならない。人手は足りず、
仕事量は増えている訳ですから。
でも、そんなときでも店側が落ち着いて、
情報を整理した上で、
POPで表示しないとならないと思います。お客はPOPの内容で
店の誠実さが分かるものなんですよね。
だから最低限、
プライスタイトルの仕分けは大事だと思うんです。どの売り場をまわっても、
お客をおどろかせてばかりだと…。
結城
お客さんもうんざりしますね。
中山
こんな話をすると、
「見直すきっかけになった」と喜ばれますが、
「アラばかり探してる」とか、
「古い」とかも言われますね。でも、いい商品があり、いい店なんだから、
もう少しPOPをなんとかすれば、
なんて言いたくなってしまうんですよね(笑)
結城
先生のお役目ですね(笑)
<用紙の大きさに対し、説明文が適度な長さでまとめられている>
つづく