[第4回] 機械化と手書き
機械化の弊害
結城義晴
せっかくコーナーパネルをつけていても、
商品で隠れてしまっている例もありますね。
スタッフ
POPにはいろいろな名称があるのですね?
結城
そう、「コーナーパネル」は各コーナーを明示するもの、
「プライスカード」は価格と商品名を分かりやすく表示するもの、
「ショーカード」は商品の説明をするもの。
それらを総称して「POP」というわけ。
最近、コトPOPが流行ってきたために、
ショーカードに使われる文字数がやたらと多くなってきているけど、
原則は15文字とされてきた。
中山政男
おもに、手書き作成中心の頃はPOPをつくる場合、
各企業もデザインには統一性に細かい基準があったんですよ。
だから担当者も基本をふまえてつくる。
結城
手書き世代の人たちですね。
中山
だから最初のうちは機械化しても、
その人たちが残っていたから、
現場で指示できていたんですよ。ところが、いつの間にか、魔法の機械のようになって、
誰でもつくれるようになってしまった。
もちろん、私たちがPOPマシンを売ってきたのにも
責任があるんですけど。ただ、「きちんとフォントを使ってレイアウトを決めた方が
読みやすく、手間が省けるよ」って教えてきたはずなんです。私のつくった文字が色々なところで使われています。
これはとてもありがたいのですが、
タイトル用につくった文字が説明に使われていて、
結果、かえって読みにくくなってしまっていることがあったりするんです。
結城
タイトル用の書体が、中身の説明に使われてしまったり、
どんどん勝手に使われているわけですね。
中山
そうですね。
誰でも、必要なときに、好きなように使っている。本部からデータで流れてくるような企業のPOPは、
さすがにそんなことはないでしょうが、
現場でつくられるものが多くなってきていると、
確かに、各店で独自に作って、
すぐに訴求すれば売上げにつながるんでしょうが。
下手な手書きがいい?
結城
そこに訓練されていない手書きPOPが入ってくるともう、
売り場はめちゃくちゃですね。
下手な手書きは素人芝居みたいなものです。
客は喜ばない。
中山
ただ中には、下手な方がいいって言っている人もいるんです。
でも下手な方がいいなんてことは絶対に無いと思うんですよね。
自分たちはよくても、それを見て買い物をするお客の方はたまらない。
結城
絶対にないです。
そんなことが言われているんですか。
中山
個性のある表現と下手な文字やデザインとは違います。
下手な方がいいとなると、もうお客の目線ではなくなって、
作り手の自己満足になっていってしまうんです。
結城
アメリカの「トレーダージョー」というスーパーマーケットのPOPがとてもいいんですけどね、
美術学校を出た専門のアーティストが各店舗にひとりいて、
その人が、プロとしてパネルボートやショーカードを書くんです。
やっぱりアマとプロでは、全然違います。
<トレーダージョーのケチャップコーナーのトップパネル>
最低限の決めごとをつくろう
中山
私が言いたいのは、
「キレイにつくれ」ということよりも、
まずは分かりやすく、伝わりやすい文字で書いて欲しいんです。
読めなくてはPOP本来の役割は果たせない。
結城
「こだわりの品」って書いてあるのに、
字がこだわっていなかったりしますよね。
中山
読めないのもそうですし、文字が抜けてしまっていても
平気で貼ってあったり、漢字がまちがっていたり。
変換がちがっていたり。
一生懸命つくっていると、気付かないことは私にもありますが。それにしても長い間、売り場でそのまま取り付けているのは、
やっぱりまずいですね。
品出しのときにもPOPにまで気配りがいかないのか、
そういう売り場は、各コーナーを見てもあまりまとまりが感じられません。
結城
そうですね。
中山
何が言いたいのか分からない、というPOPもありますよね。
結城
POPが原因で分かりにくい売り場になっているということですね。
中山
ちょっと手で書いてみようとしても、
どのように書いたらいいか迷うのは
手本となる基本的なたよりがないからでもあるんです。最低限の決めごとは必要だと思うんですよ。
文字なり、形なりの。それなのに、POPの“コト”で売れているんだと。
でも内容を見ると、対象商品のどの部分を伝えたいのか
分からないというようなことがありましてね。
その辺はぜひ整理しなくてはいけないですね。
<それぞれのPOPが商品をじゃますることなく、役割をはたしている>
つづく